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【芸能・社会】

ジャズピアニスト 小曽根真 デビュー30周年アルバム「タイム・スレッド」完成

2013年5月8日 紙面から

師・ゲイリーとの30年にわたる思い出を語る小曽根真(本庄雅之撮影)

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 世界的ジャズピアニスト、小曽根真(52)が、デビュー30周年を記念したアルバム「タイム・スレッド」(29日発売)を完成させた。バークリー音楽大学留学時に知り合った師で、グラミー賞を6回受賞しているビブラホン奏者ゲイリー・バートン(70)とのデュオ作品。毎日が修業だった彼とのバンド時代のエピソードをつづった12曲は、ロードムービーのような楽しさと、一流同士が紡ぎ合う繊細かつ端正な音に満ちた快作だ。

 「彼なくして今のボクは絶対ない」。小曽根にとって、ゲイリーはジャズの奥深さ、面白さに目覚めさせてくれた運命の人だ。

 1983年、バークリーの卒業を前に、コンサートで超絶技巧を披露して得意満面だった小曽根に、当時教員だったゲイリーが漏らした感想は「サウンズ・グッド」のひと言だけ。全くの社交辞令だった。が、その後に開かれた学長宅でのパーティーでBGMを弾く小曽根に「なんだ、ちゃんと弾けるじゃないか」と個人レッスンをもちかける。3カ月後には、ゲイリーのバンドに誘われ、応じた。

 相前後して小曽根に、米CBSから、日本人ミュージシャンとして初めて直接契約というビッグチャンスが舞い込む。それから、小曽根のバンド修業が約6年続いた。

 「ステージが終わって休憩時間になると、とにかく音楽の話ばかりしていた」と小曽根。「伴奏のばの字も知らない。もっとよく聴いて謙虚になれ」といったことから始まって、ありとあらゆる心構えが伝授された。ただし、「こう弾け」とは一度も言われなかったという。

 そんなバンドツアー時代の体験を全曲オリジナルでつづったのが、今回のアルバム。ドイツのさびれた町のホテルで、トランプをやって思いっきりカモにされた思い出をモチーフにした「ハーツ・イン・ランゲンハーゲン」、ブエノスアイレスの遊園地を思い浮かべた「イタルパーク」などが、ファンキーなメロディー、タンゴ調などバラエティー豊かに並ぶ。

 ゲイリーとは3度目のデュオアルバムになるが、今回は小曽根の作品にゲイリーが参加する初めてのスタイル。師への何よりの恩返しにもなった。「30年ということは忘れてた。今はゲイリーが持っていないボキャブラリーをボクも持っているけど、自分たちの歴史を振り返って、いろんな音楽をやってきたんだなぁ、僕らの音楽というくくりになってきたんだな、と思う。先日、ゲイリーから、こんな面白いコンセプトでいいアルバムになって幸せだ、ありがとうっていうメールが来て。百戦錬磨のゲイリーから言われるのは、すごくうれしい」と声を弾ませた。

 アルバムタイトルを直訳すると、「時間の糸」。それは、2人のことでもあるが、「過去からつながる時間の糸の今が通過点だということ」。そして、「東北の人たちも、その時間の糸が未来の見えないとこまでつながっているんだよっていうことを感じてくれれば、何か大きな力になる気がする」。ゲイリーとの記念ツアーは、6月1日、秋田市のアトリオン音楽ホールからスタートする。 (本庄雅之)

 ▼ツアーの主な日程 6月1日秋田市・アトリオン音楽ホール、8日名古屋・しらかわホール、9日千葉・青葉の森公園芸術文化ホール、18日博多・福岡シンフォニーホール、22日東京・サントリーホール、23日横浜みなとみらいホール

 ◆小曽根真(おぞね・まこと) 1961年3月25日神戸生まれ。ピアニスト・ハモンドオルガン奏者の父の影響で5歳からクラシックピアノを習う。12歳でO・ピーターソンを聴いてジャズピアノの道へ。15歳でプロデビュー。米バークリー音楽大学ジャズ作編曲科を主席で卒業。1983年米CBSから世界デビュー。以来トップミュージシャンとして第一線で活躍。J−WAVE「OZ MEETS JAZZ」(土曜午後9時)を担当。

 

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