
さっちゃんは今日、幼稚園のままごと遊びで、とってもお母さんになりたかったのです。 さっちゃんのお母さんのおなかには、じきに生まれてくる赤ちゃんがいます。 お母さんのおなかをそっとなでながら、さっちゃんもお母さんになる、と心に決めたのです。 でも幼稚園のままごと遊びでお母さんの役をやるのは、いつも背の高い子。さっちゃんがお母さんの役をやりたいと言ったことで、大騒動になりました。 「さっちゃんはおかあさんにはなれないよ! だって手のないおかあさんなんて変だもん。」 さっちゃんの右手には指がないのです。さっちゃんは幼稚園を飛び出して家に戻り、なぜ自分の右手には指がないのか、お母さんに迫ります。さっちゃんはお母さんのおなかのなかで怪我をしてしまって、指だけどうしてもできなかったのです。それがなぜなのか、誰にもわからないのです・・・。
この作品は、童話作家である田畑精一さんと「先天性四肢障害児父母の会」、野辺明子さん、志沢小夜子さんの共同制作となっています。現実として先天性四肢障害に関わっている方々が作ったおはなしにはえもいわれぬ迫力があります。
指のない手を、「不思議な力をくれるまほうの手」と言ったさっちゃんのお父さん。その言葉でさっちゃんは辛い現実を乗り越えるきっかけを得ます。 言葉は不思議な力を持っていて、「まほうの手」と捉えてその言葉を常に口にすることで、自分と周囲の認識がポジティブに変わっていくのでしょう。 さっちゃんの元気で力強いキャラクターは、私たちにも元気を与えてくれます。
読んだ後、思いのほかすがすがしい気持ちになれる作品です。 子どもに関わる大人の方みんなに読んで欲しい傑作です。 (金柿秀幸 絵本ナビ事務局長)

先天性四肢欠損という障害を負って生まれたさっちゃんは、傷つきながらも現実をうけいれ、力強く歩き始める。
 

少しずつ、世界が広がり始め、人と違う事に対して敏感になってきた娘に、障害を持った方の事を知ってもらいたくて、この本を読んで聞かせました。
当時、娘は「手に指がない」という事を想像することができなかったようです。ただ、指がないのは、お母さんのお腹の中で怪我をしたからなんだ…という、その理由は素直に受け入れられたようでした。
読み聞かせは大変でした。読み手の私が、涙なしでは読めないからです。今でも駄目です。さっちゃんが涙ながらに「さっちゃんの手には、どうして指がないの。さっちゃんの手、小学生になったら普通の手になるの?」と聞き、お母さんも胸がいっぱいになりながら、正直に、さっちゃんの手は、小学生になってもそのままだと伝える場面は、何度読んでも胸が痛くなり、涙になってしまいます。
でも、決して、同情や哀れみだけを誘う本ではありません。友達の言葉や現実に傷ついたさっちゃんが立ち直る姿、ありのままを受け入れ、それを乗り越え、生きていって欲しいと願う両親の愛と支え、さっちゃんを取り巻く子供達の心の変化など、読み終わった時に、読者に元気と希望を与えてくれる、素晴らしい本です。
是非、子供達に読んであげて欲しいです。そして、大人も読んで欲しいです。この一冊を読んであげる事で、子供は障害という個性を素直に受け入れることができると思います。そして、この一冊を読む事で、大人は障害を持った子供とどう向き合うのか、そして大人は何ができるのか、何をすべきなのかを、深く考えられると思います。 (メロコトンさん 40代・ママ 女の子7歳)
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