原子力学会アンケ:7割が「原発安全」…市民と隔たり
毎日新聞 2013年05月08日 15時00分(最終更新 05月08日 15時07分)
東京電力福島第1原発事故で大きく揺らいだ原発への信頼性について、原子力の専門家が自信を取り戻しつつあることが、日本原子力学会の会員アンケート調査で分かった。併せて実施した市民対象の調査では、「安心」という回答は減ったまま。専門家と市民の間で、意識の隔たりが広がっている。
会員調査は2006年度から、市民調査は07年度から同学会が毎年、実施している。今回の12年度調査(今年1〜2月実施)には、無作為で選ばれた大学や企業の会員559人と首都圏の市民500人が回答した。
「原発は安心か」との質問に、「安心」「どちらかといえば安心」と答えた割合は、会員は事故前の10年度が86.5%だったが、事故直後の11年度は62%にダウン。それが12年度は69.2%に回復した。一方、市民は10年度の18.6%が5.2%(11年度)に下がり、12年度も6%と低下したままだ。
「今後も原子力を利用すべきか」との質問では、「利用すべきだ」「どちらかといえば利用すべきだ」と答えた市民は11年度とほぼ同じ4分の1程度と、事故前より半減した状態。会員は昨年度より6.6ポイント増えて92%に達し、95%前後あった事故前に近づいた。
結果を分析した土田昭司・関西大教授(社会心理学)は「昨年12月の衆院選で、原発利用継続を公約した自民党が圧勝したことで、専門家は自信を回復したのかもしれない。しかし、選挙結果をもって市民のお墨付きを得たと考えるのは誤りだ」と指摘する。【西川拓】