動2013:「96条」駆け引き
毎日新聞 2013年05月08日 東京朝刊
◇民主・長島氏「改憲の王道とは言えない」
憲法改正をめぐって積極派と慎重派の混在する民主党が96条の先行改正反対でまとまった。安倍晋三首相は96条改正を参院選の争点とする構えだが、自民、日本維新の会、みんなの党などが賛成▽民主、公明、生活の党、共産、社民などが慎重・反対−−という与野党入り乱れての対立構図が固まった。
7日午後、国会内で開かれた民主党憲法調査会の役員会には、新たに副会長に就任した長島昭久前副防衛相も出席した。長島氏は超党派の「96条改正議連」に参加している党内改憲派の急先鋒(せんぽう)だが、役員会に先立って同日配信したメールマガジンで「中身の議論を棚上げして改正手続きから手を付けるやり方は改憲の王道とは言えない。堂々と正面から改正の中身を議論すべきだ」と表明した。
96条改正の是非に踏み込めば党内対立が露呈する。長島氏はメルマガで「人権と天皇に関わる条文改正の発議には引き続き3分の2の厳しい要件を課し、その他の統治機構に関わる条文の改正は過半数か5分の3に要件緩和する」と提案したが、役員会ではこうした議論を先送りすることで結束を演出した。終了後、前川清成事務局長は記者団に「96条先行改正論に賛成の方は長島さんも含めて一人もいなかった」と強調した。
◇首相「議論不十分」 公明・山口氏「妥当」
96条の先行改正には公明党も慎重だ。長島氏が唱えたような対象条文ごとの部分緩和論には、受け入れ可能な「落としどころ」として公明党幹部も言及している。それだけに、民主党の対応には自公連携にくさびを打ち込む狙いもちらつく。
「首相の認識は妥当だ。憲法という大きな課題は国民の理解が一番で、そこに至っていないという点では我々の認識とも符合する」
公明党の山口那津男代表は7日昼の政府与党連絡会議後、首相官邸で記者団にこう語った。「まだ十分に国民的議論が深まっているとは言えない。公明党とも丁寧に議論していきたい」という5日の首相発言を受けたもので、与党側も参院選への影響を最小限に抑えようと懸命だ。
公明党が参院選の最重点区に位置づけるのが埼玉選挙区。自民党の石破茂、公明党の井上義久両幹事長は7日午後、そろってさいたま市に入り、同市長選(19日投開票)の推薦候補の応援演説で結束をアピールした。