■素材・部品の技術力で武装した強小企業
ドイツや日本には、しっかりとした技術力で武装した素材・部品関連の強小企業が多数存在する。ドイツのフランクフルトにあるボリン・アルマトレン・パブリックもその一つだ。オートメーション機器や発電機などに使用されるバルブを専門に生産する、従業員30人の小企業だ。2009年の経済危機でバルブ業界が不況に陥った際も、同社の受注は減らなかった。オーナー兼CEO(最高経営責任者)のボリン・フラッド氏は「1923年に会社を創設して以来、どんなに経済状況が悪くても10%以上、売り上げが低下したことはない。品質が優れているため、欧州だけではなく米国や中国をはじめ、うちのバルブを使っている企業は2000社に上っている」と話す。
ドイツは34万社の中小企業が輸出を行っており、全輸出企業の実に98%を占めている。世界市場シェアで1、2位を争う「強小企業」は1990年代半ばには500社にすぎなかったが、現在では1500社以上に増えた。このうち3分の2はその分野で1位を占めている。
こうした状況は、日本も同じだ。産業・研究用の微細顕微鏡分野で市場シェア70%を誇るオミクロン・ナノテクノロジーは、従業員100人のうち40%が研究開発人材だ。従業員75人の日プラは、世界中の大型水族館で使用される透明パネルの70%を供給している。ソウルの水族館「COEXアクアリウム」の水槽にも、同社製のパネルが使用されている。従業員70人のハーモニック・ドライブ・システムズは、ロボットの動作速度の制御分野で市場シェア40%を誇る。
■不景気でも核心部品・素材メーカーは健在
完成品の製造では海外にイニシアチブを渡したとしても、核心部品の掌握力だけは維持していくことが大切だ。日本は米国ボーイングの最新旅客機「B787」を「準国産機」と呼ぶ。全部品の35%、特に核心素材のかなりの部分を住友精密、東レ、川崎重工業、富士重工業など日本のメーカーが担当しているためだ。B787は胴体外部が炭素複合材で作られており、軽いながらも強度が高いことで有名だが、日本の素材メーカーがなければ絶対に作り上げることができなかった。
米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」に使用されている部品でも、日本製の占める割合は伸びている。日本の業界によると、最新機種である「iPhone5」に使用されている約1000個の部品のうち40%を日本が占めている。ドイツのアーヘン工科大学で博士号を取得した国民大学のホ・スンジン教授(自動車工学)は「ドイツや日本の素材・部品メーカーの技術力は、他の国が容易に入り込める領域ではない。一部の完成品メーカーが低迷するのとは異なり、産業全体での競争力は相変わらず健在だ」と話した。