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特別取材

反社会的勢力の餌食になったトランスデジタルの株券乱発事件(下)
特別取材
2008年9月18日 15:04

「ソープの帝王」が参戦
        
 今回の発行株膨張の仕掛人であるTD投資事業組合が登場するのは、2008年3月3日の第三者割当による新株予約権発行。約20億円の資金を調達するというものだ。割当先に、TD投資事業組合のほかに、驚くような社名と個人名があった。社名は有限会社久留米興産、個人名は瀬川重雄氏である。
 01年9月1日、東京・新宿歌舞伎町の雑居ビルで、44人の死者を出す大火災が起きたが、その雑居ビル「明星56ビル」を所有するのが久留米興産で、オーナーが瀬川氏。「防火管理義務を怠った」として業務過失致死罪に問われた瀬川氏は、今年7月2日、東京地裁で禁固3年、執行猶予5年の有罪判決を受けた。

 瀬川氏は広島県出身。歌舞伎町だけではなく、全国の歓楽街に20店のソープ店チェーンを展開、「ソープの帝王」と呼ばれる。バブル期には不動産業に進出。住専の大口融資先リストに出た明星興産グループがそうだ。全国に関連会社名義でビルを持ち、その一つが大火災事件を起した久留米興産である。

 証券市場にも進出。グループ会社を通して、東証1部上場の刺繍レースの名門、エコナック(旧・日本レース、京都市)を買収。今年の株主総会では、ジャスダック上場のプラスチック加工機メーカーのプラコー(さいたま市)の乗っ取りを仕掛けたが、不発に終わった。「ソープの帝王」は、トランス社株のマネーゲームに参戦していたのだ。

魑魅魍魎が暗躍

 筆頭株主に躍り出たTD投資事業組合は、取締役と執行役員を派遣して経営権を掌握。小切手を乱発し、その乱発した小切手の決済のために、MSワラントを発行。調達した31億円は、高利資金の返済に消えた。一般投資家から資金を巻き上げて荒稼ぎする。そのシナリオを描いたのがトランス社の「実質オーナー経営者とその関係者」である。

 「実質オーナー経営者」とされるKは、いわくつきの人物だ。人材派遣大手のグッドウィル・グループがクリスタル(現グッドウィル・ブレミア)を買収したとき、二つの投資ファンドを介する複雑な手法をとった。グッドウィルは買収資金883億円を出したが、クリスタルのオーナーが手にした売却代は500億円。差額383億円は、投資ファンドの出資者のものになった。その投資ファンドの代表取締役がKだった。

 TD戦略投資事業組合はMSワラントを14人、8企業に譲渡したが、譲渡先もこれまた、事件師たちばかりだ。MSワラント1億5,000万株を引き受けた神商(東京・世田谷区)なる会社は、最近では、インデックスホールディングス所有の学習研究社(株)や(株)サハダイヤモンド所有の田崎真珠(株)の流出事件で、その名が浮上した。

 こうした魑魅魍魎が群がり、食い潰された結果が、トランス社の倒産劇であった。「反社会的勢力との関係遮断」が声高に唱えられているが、彼らはびくともしない。経営不振企業にもぐり込み、生き血を吸っていたのである。

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