富山（左）と増田が激突

　Ｊ１大宮―広島戦（６日）で選手２人が試合中に激突し、緊急搬送されるアクシデントが発生した。現場ではサポーターから怒号が飛び交い、広島の森保一監督（４４）が大激怒するなど、一刻を争う舞台裏では大騒動が起こっていた。

　１―１で迎えた後半３９分、途中出場の大宮ＦＷ富山貴光（２２）がゴール前中央に落ちてきたこぼれ球に反応し、ヘディングシュートを決めた。この際に同じく飛び出してきた広島のＧＫ増田卓也（２３）と激突。２人はピッチに倒れ込み、そのまま動かなくなった。

　２人は頭を強打。増田は首も痛めたため、その場から動かせなくなった。見守る両チームのイレブンからも「×」のサインが出され、試合は中断。すぐに救急車が到着したが、なぜかスタジアム前で停車した。

　グラウンドに入って２人を搬送する気配がないため、サポーターはイラ立ち「早く救急車をピッチに入れろよ。何やってんだ！」とスタッフに罵声を浴びせた。広島の森保監督もピッチ脇から審判や運営スタッフに「ピッチに救急車を入れればいいじゃないか！」と大激怒。スタジアムは異様なムードに包まれた。

　実は、２人が負傷する前にサポーターが体調不良で救急車を要請。いわば“別件”で呼ばれた救急車だったのだ。これを森保監督やサポーターが運営サイドの不手際と勘違いし、怒り狂ったというわけだ。

　アクシデントから約１５分後、２人はそれぞれ別の救急車で搬送された。大事には至らず、富山は病院から自宅へ戻り、入院した増田も７日の再検査で異常がなければ広島に戻る予定だ。試合は２―１で大宮が勝利し、Ｊ１の連続不敗記録を２１試合に更新。大宮の鈴木茂社長は「ベストの対応だった」と話したが、勘違いは大惨事を引き起こしかねなかった。