内山Ｖ７！具志堅を超えるぞ／ボクシング

＜プロボクシング：ＷＢＡ世界スーパーフェザー級タイトルマッチ１２回戦＞◇６日◇東京・大田区総合体育館

　ＷＢＡスーパーフェザー級王者の内山高志（３３＝ワタナベ）が、インパクト十分のＫＯ劇で７度目の防衛に成功した。無敗挑戦者となる同級１０位ハイデル・パーラ（３０＝ベネズエラ）と激突。５回に左ボディーアッパー一撃でダウンを奪い、そのまま同回２分１５秒、ＫＯ勝ちを飾った。日本人の現役王者では最多、歴代で５位となるＶ７防衛で日本ボクシング界のエースとして存在感を示した。防衛に成功した内山は区切りの２０勝（１７ＫＯ）１分けとした。

　豪快な右フックでわなを仕掛けた。５回。内山は、驚いてガードを顔付近に上げたパーラの動きを読み切った。がらりと空いた右脇腹に左ボディーアッパー一閃（いっせん）－。パーラはもん絶してキャンバスに倒れた。レフェリーの１０カウントが終わると、大歓声が地鳴りのように響いた。無敗挑戦者に、５回ＫＯ勝ち。現役の日本人王者では最多となる７度目の防衛成功に笑顔を浮かべた。

　内山　あのフィニッシュは、スパーリングで当たれば９５％は倒せる。無敗挑戦者だけあってうまかったですが、当たれば必ず倒せると思っていました。

　アマ時代から得意の左ボディーだったが、意外にも世界戦のフィニッシュでは初めて。ロンドン五輪ボクシング男子ミドル級金メダルのプロボクサー村田諒太も参考にしたとされる必殺パンチだった。４回までにはジャブと同じ軌道で繰り出す左フック「消える左」を見舞って戸惑わせた。圧倒的なＫＯ勝利だったが、相手の左ジャブで右目付近を少し腫らしたことに不満顔。「今日は４０点ですね」と冗談交じりに悔しがった。

　今年３月、内山の故郷・春日部市で高校職員の市民ランナー川内優輝とラジオ番組で対談した。同市にゆかりのある選手として意識していた２人。父が他界している似た境遇もあり、初対面で距離は縮まった。ＷＢＡベルトを、父がアマボクサーだった川内に披露すると「生で見られてうれしい」と言われ、「今度は川内選手の金メダルをみせて」とエールを送った。８月の陸上世界選手権後はカラオケに行く約束も交わし、内山が先にベルトを守った。これで世界舞台での川内の活躍を楽しみに待てることも大きな喜びだ。

　ターゲットに絞っていたアテネ五輪金メダルの同級暫定王者ガンボア（キューバ）が、ライト級に上げる意向だという。その一方で、２年前の防衛戦で倒した三浦隆司（帝拳）がＷＢＣ同級王者となった。テレビ解説席にいた三浦に「今後、チャンスがあればよろしくお願いします」。２団体王座統一戦も希望した。

　内山　強くなれば、おのずと道は開けてくる。

　所属ジムの渡辺均会長は「強くなって日本記録のＶ１３を目指してほしい」と期待を寄せた。元ＷＢＡ世界ライトフライ級王者・具志堅用高氏の持つ１３度防衛まで折り返し地点を過ぎた。「勝って気がついたらこんな記録か－ということになれば」。日本のエースとして、内山は豪快に勝ち続ける。【藤中栄二】

　◆内山高志（うちやま・たかし）１９７９年（昭５４）１１月１０日、埼玉・春日部市生まれ。アマ戦績は９１勝（５９ＫＯ・ＲＳＣ）２２敗。０５年７月にプロデビュー。１７２・５センチの右ボクサーファイター。

　［2013年5月7日9時11分　紙面から］