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大阪・日雇い労働者の街 (下)暗躍 裏で求人 被災地へ/「地下水脈」通じ供給

西成労働福祉センターが入る建物内に、日雇い労働者らの姿が見える。水面下では被災地への誘いがある

 東日本大震災の被災地への労働者供給の実態に迫るため、2月中旬、国内最大規模の日雇い労働者市場がある大阪市西成区を訪れた。スポーツ紙を手に取り、求人欄の見出しに目が留まった。
 「震災復興に力を!!」「東北中心の仕事です」。震災関連の求人が目立った。
 スポーツ紙で同様の求人を見つけ、応募した50代男性がいた。昨年9月下旬、大阪市の建設業者に雇われ、仙台市の営業所へ。被災地で3日間、土木作業をした。
 男性は「仙台で震災復興を手助けし、金を稼ごうと思った。業者からは住民票などの証明書は要らず、健康であれば働けると言われた」と語る。
 複数の労働者によると、この業者は就労を支援する財団法人「西成労働福祉センター」を通さず、震災関連の仕事を紹介している。地元では「非公式ルート」(建設業界関係者)とされる。
 業者は震災後、進出拠点として仙台営業所を設けた。仙台市内の労働者向け寮には200人近くがいるとみられる。

 「震災から半年ぐらいたって、西成にもセンターを介さない震災関連の求人が出てきた」。日雇いを30年以上続けるベテラン労働者(68)は振り返る。
 センターでは震災関連の求人は少ない。非公式のあっせん業者が暗躍するのはなぜか。ベテラン労働者は読み解く。
 「センターを通すと雇用条件を守っているか厳しくチェックされる。賃金不払いがあれば告発されるリスクもある。業者のうまみは少ない」
 地元の日雇い労働市場に詳しい60代男性と出会った。西成区で40年近く暮らし、建設や港湾などの仕事に就いたという。
 センターに近いJR新今宮駅で男性と落ち合い、街を歩くと、すぐに足を止めた。ここで手配師らが震災関連の仕事を紹介する様子をたびたび目撃したという。
 「行き先は仙台市や石巻市。車窓に雇用条件を書いた画用紙を張り、承諾した労働者が車に乗り込み、被災地へ向かった」と証言する。
 復興関連で求人が多いのは大工など一定の技能を持つ人。被災地で受け取る賃金は地元の相場より2000〜3000円高い。高く設定できるのは、センターの厳格なチェックを受けない分、労災保険料を浮かせるなどして賃金に上乗せするからだという。
 センターの担当者は「手配師は裏社会とつながりがあり、動きが見えづらい」と困惑する。

 西成から被災地に通じていた労働の「地下水脈」。男性は震災が街に与えた影響として、年の瀬の異変を挙げた。
 昨年末からことし1月初めにかけ、街の簡易宿泊所は空室が目立ち、飲み屋は閑古鳥が鳴いた。例年なら年末年始は満室で、多くの労働者が飲み歩くという。
 「西成の労働者や業者は次々と被災地の現場へ行っている。水面下の動きはこれからも続く」。男性はそう断言した。


2013年05月05日日曜日


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