【島脇健史】宇宙空間でたこのように帆を広げる宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「イカロス」で用いた素材を使って、兵庫県加古川市の看板制作会社長、松下哲雄さん(63)が実際のたこを試作した。アイデアを凝らすたこ作りが趣味の「たこマニア」。小型の試作品は30メートルほど揚がり、今度は100メートルを目指して大型を制作中だ。
松下さんは20年前から畳6〜16枚分のたこを毎年作ってきた。宇宙で14メートル四方の帆に太陽光を受けて進むイカロスを知り、実際のたこを作ろうと思い立った。イカロスの帆は、髪の毛の太さの10分の1ほどの薄い樹脂製フィルムに、太陽光を受けるアルミを付着させている。技術開発は「東レKPフィルム」(加古川市)で、昨年12月、松下さんは同社の岡村右治社長を訪ねて共同制作することに。
試作品は1辺60センチのひし形状で、強風に耐えるよう、イカロスよりフィルムの厚さを3倍にし、竹ひごで骨組みした。香川県のたこ作り手法「ごんぼいか」をヒントにし、「ゴンボイカロス」と名付けた。3月に河川敷で試し、30メートルまで揚がったという。今度は11月の地元のたこ揚げ大会を目指し、1辺を2メートルに拡大したたこを制作中だ。強度を上げるため、本物同様に帆にアルミを付ける。100万円を超える制作費は同社が負担するといい、松下さんは「さらに改良を重ねたい」と意気込む。
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朝日新聞社会部