市民公開講演会を開催 ひろしま医療人・九条の会
香山リカ氏が講演
「だれもが心豊かに暮らすために−精神科医が憲法を考える」

 7月15日(日)、広島県保険医協会とひろしま医療人・九条の会が共催で公開講演会を開催し、約160名の市民の方々にご参加いただきました。今夏広島会場は、改憲をめぐる政局の活発化を受けて、「『九条の会』アピールを支持する医師・医学者の会(全国)」呼びかけ人・「『九条の会』アピールに賛同する兵庫県医師・歯科医師・医学者の会」世話人で精神科医の香山リカさんをお招きし、「だれもが心豊かに暮らすために−精神科医が憲法を考える」をテーマにご講演いただきました。
 香山さんは、「精神科医には自分の主義・主張や思想を明らかにしないという暗黙のルールがあり、改憲反対の意志を表に出すことをためらった。しかし、私はこのことについてだけはどうしても言わなければいけないという思いでいる」と、医療者としての立場とメディアに出て九条について発言することへの葛藤を語られました。

 香山さんは「社会問題に関心があったわけでもなく、部屋の中で漫画を読んだりゲームをしたりすることが好きな曖昧な人間」だと自分について前置きされた後、「九条は変えてはいけないが環境問題や個人情報問題で権利を高める改正はいいと言う意見にも反対」と言われました。「今の日本は病んでいる。心が弱っている時、正常ではないときに正しい判断はできない。日本の心の状態が何年か後に良くなっていたとしたら、その時には改憲を求めないとも思う」という精神科医の視点に多くの参加者が納得されました。
 現代の日本は、スピリチュアルなものが人気を得るなど極めて感覚的。それに加えて、「良い」「悪い」などの両極端な判断のみという二分割思考が政治を動かしていると分析されます。香山さんは、「改憲派の政治家と話をすると軍備などをとても幼児的な感覚で考えている。戦争ができる憲法にしてしまった時にとても抑制できるとは思えない」と危惧されます。そしてこの病は、地下鉄サリン事件や9.11テロなどを目の当たりにして、他人事のような意識から「明日は我が身」という意識へ変革してきたことや市場主義経済が世界的に広がり、「手段は問わず結果がすべて」となってきたという、内と外からの変化によって生まれてきたと明確に結びつけられました。
 軽快なトークで「改憲を阻止できるのであれば、憲法の良さを伝える一方で、奇策を講じたり、感覚的な部分をくすぐる方法で国民の興味を引くような方法もとればよい」「私は奇策を講じる方に」と香山さんが話されると、憲法を守る新しい視点に会場が大きく湧きました。戦後生まれでテレビでも人気の香山さんが明るく楽しく語られる熱い思いに、参加者の共感が広がり元気の出る講演会となりました。
 講演会に先立って広島県保険医協会は、参加者へ医療情報のパンフレットを配布し、医療制度改革の内容などを紹介しました。長谷 憲理事長は「来年4月から後期高齢者医療制度がはじまる。75歳以上の人は別立ての保険料を天引きされることになり、負担が増え医療を受ける権利が奪われていく」と話し、参加者アンケートには「これからも保険で安心して医療にかかれるよう政府にはたらきかけて」「国民のための保険医療のためにがんばってください。共にがんばります」とのメッセージが寄せられました。
 ひろしま医療人・九条の会の呼びかけ人である広島大学大学院の清水一教授(保健学研究科)からは、「国際的な紛争を解決する手段として武力を使用しないという世界に先駆けた日本の憲法を維持したいという思いで活動を続けている」とご挨拶をいただきました。