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Chikirinの日記

2013-05-07 マンションの地震保険とか意味不明

この前、分譲マンション住まいなのに地震保険に加入してる人がいて、ちょっと驚きました。

マンションの地震保険って、管理組合で入る共用部分向けの地震保険と、個別の家庭が入る占有部分のための保険があるんですが、どっちにしろ個人的には、「なんでそんなもんに入ってんの?」って感じです。


家財保険&火災保険には、もちろん私も入っています。でも火災保険と地震保険は、「同じような保険だけれど、備える災害が違うだけ」ではありません。


きちんと理解したほうがいいのは、次の3点です。

1)エリア災害は、個別災害とは全く性格が違う

2)分譲マンションの管理組合には、一定レベルを超える意思決定能力はない

3)地震保険でまともな額が支払われるのは、全壊・半壊の時だけ(=甚大な被害のでる大地震の時だけってこと)


これらの理由により、分譲マンションで地震保険に入るというのは、ほとんど意味がないんです。


★★★


まず、火事は個別災害ですが、地震はエリア災害です。

火事で自分の部屋が丸焼けになっても、修理すればまた住むことができます。修理も、業者に依頼すればすぐに始まります。

ですが、地震で鉄筋コンクリ建てのマンションが半壊や全壊になる時は、地域全体が甚大な被害を受けてるはず。平時のように、建設業者に電話したらすぐに見積もりに来て、来月から工事が始められる、なんてことにはなりません。

そういう状況になった時、たとえそのマンションを立て直しても、そのエリアにもう一度住めるのか(住みたいと思うのか?)誰にも事前にはわからないでしょう。


それに、普通それだけの大地震があれば、最初の数か月は社会インフラの復旧が最優先され、個別の家やマンションの修理なんて始められません。下手すると区画再設定や道路拡張のため、一般の家の建築には一定期間の制限がかかるかもしれないんです。


地震保険は、細かい修理に備えるための保険ではありません。ある程度の保険金が支払われるのは、半壊か全壊の時だけです。つまり、事実上「住めない」状態になった時だけです。

それ、再び住めるようになるのに、何年かかるんでしょう?


マンションの管理組合って、10万円ほどの予算で入り口ドアを交換・修理するだけでも、総会を開いて、住民からアンケートとって、複数業者から見積もりとって、また理事会で話し合ってと、やたらめったら時間がかかります。

ましてや鉄筋コンクリの建物が全壊だの半壊だのするほどの地震が起こったときに、「その翌月に管理組合の臨時総会が開かれて、過半数の住民が出席して総会が成立し、超高額な修理を進めるための詳細プランに多くの住民が賛成してすんなり採択される!」なんて夢物語です。


地震保険がおりるような事態になれば、多くの住民が避難所や仮設住宅に移り、なかには関西やら九州やらと遠方の親戚宅に避難してしまう家庭もでてきます。

エリアの惨状によっては数か月単位で戻ってこない人もいるだろうし、管理組合長自身がどっか行っちゃって(もしくは地震で被害を受けて)連絡がつかなくなるかもしれません。

地震から数か月の間に組合総会を開くということ自体、ものすごく難易度が高いんです。みんなもうそこに住んでないんだから、総会の成立に必要な出席数(や委任状)が確保できないでしょう。


それに鉄筋コンクリマンションが全壊・半壊になったら、たとえ地震保険に入っていても、保険金だけで修繕や立て直しが全額カバーできるとは思えません。

結局のところ、住民が追加のお金を出し合わないかぎり再建は不可能なんです。そのお金を、どの家もみんな合意して、すぐに出せたりするんでしょうか? 


それだけ大きな地震に見舞われれば、「もうここには住まない」人もでてきます。子供の学校のために引っ越す人、これを機に施設に入るという高齢者、住宅ローンがまだ残ってるのに追加でお金出すなんて不可能!など、事情は様々です。

別の場所に新しい家を買いたいので、ここは更地にして売って、そのお金を分配してほしいという人も、当然でてきます。

もちろん、永久に住めないわけではありません。でも、「3年住めない」となれば、そのエリアから引っ越して、別の場所に住もうと思う住民はたくさんいるはずです。


そもそも私はマンションの管理組合に、日常的なメンテを粛々とやる以上の意思決定能力があるとは考えていません。

ましてや、地震保険が下りるような状況、すなわち、半壊か全壊なんていう状況になったら、分譲マンションは基本は「終わり」だと思ったほうがいいです。

住民同士がものすごく協力的で、ほぼ全員が引っ越さずにその場所に住み続けたいと考え、かつ、みんな追加出資をする経済的な余裕があり、しかも住民をまとめて修繕プランを企画してガンガンみんなのために働いてくれる!

ような人がいれば・・・地震後、3年以内くらいには新しく建て直せるでしょうけど。


あと、個人の保険なら「とりあえず受け取って当面の生活費に使う」もありえますが、管理組合がマンションの地震保険を「とりあえず受け取って、住民で分けて使おう」なんて話にはなりません。

前述したように組合が機能しなくなるので、そんな合意に至ること自体が困難です。なので保険金も当面塩付けでしょ(てか、組合として保険金請求手続きをするだけでも大変そう)


もちろん個人に関しても、そんな面倒な保険に入る必要は全然ないです。大災害に遭うと、住む場所を探すところから始め、日々の生活がぐちゃぐちゃになります。ましてや家族の誰かが被害に遭ったりしたら、それどころではありません。

そんなときにわざわざ手続して、現状確認してもらって・・みたいな、受け取りに時間のかかる保険に入っておく意味ってあるんでしょうか。


保険って、保険料は払ってても「受け取ったことがある」人は多くありません。あの手続きを何回か経験すると、貯金で備えられる範囲なら、ぜったいに貯金のほうがいいとわかるはず。

反対にいえば、ものすごい高レバレッジ(死亡保障の定期保険)など、「少々手続きが面倒でも、ものすごい倍率で保障が受けられる」というもの以外は、保険なんて意味ないんです。だからレバレッジの低い地震保険について、入ったほうがいい理由は極めて見つけにくい。


「せっかく買った新築マンションだから、たとえ大地震が来ても、地震保険をかけておけば安心!」とか思ってるとしたら・・それはちょっと想像力なさすぎです。

分譲マンションを買って、「地震保険に入るべきか?」とお悩みの方は、まずは早めに管理組合の役員に立候補し、大災害が起こった時に組合としていったい何ができそうか、身をもって理解したほうがよいと思います。


そんじゃーね




暑くなる気配が見え始めてますねー。梅雨の前にどうぞー

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