社説
自衛隊の陸送 武器使用の懸念消えぬ(5月6日)
政府は、緊急時に在外邦人を救出するため、自衛隊による陸上輸送を可能とする自衛隊法改正案を閣議決定した。今国会中の成立を目指す。
飛行機と船舶に限っていた輸送手段に車両を追加する。
1月のアルジェリア人質事件を受けて、与党が法改正を安倍晋三首相に求めていた。
だが、いかにも拙速ではないか。
空港や港を離れて日本に帰国する状況と違い、治安の不安定な外国の領土に自衛隊車両を走らせるとなれば、不測の事態による武器使用につながる恐れがあるからだ。
相手国政府が自衛隊車両を受け入れるかどうかという問題もあり、実効性にも疑問が出ている。
国会で慎重に審議すべきだ。
国民の生命、財産を守ることは政府に課せられた責務だ。海外で危険に巻き込まれたり、情勢が不安定となった国に残されたりした邦人の退避に全力を挙げることは当然だ。
ただ、自衛隊派遣は憲法9条が禁じる海外での武力行使につながりかねないため、慎重な法改正を重ねてきた。1994年に航空機を認めて当初は政府専用機を活用し、その後輸送機や艦船に広げた。
自民党は以前から自衛隊が陸上輸送もできるようにすべきだと主張していた。だが政府は、戦闘行為に発展する可能性が高いとして見送ってきた。
アルジェリアの事件があり、政府・与党は今なら世論の反対も少ないと判断して法改正に乗り出したのだろうが、憲法に関わる問題だけに冷静な議論が必要だ。
情勢不安定な外国領では邦人や自衛隊員の安全を図る必要がある。陸上輸送は飛行機や船の場合と異なり武器を使う可能性が格段に高まる。
自民党は武器使用基準の緩和もセットで法改正する考えだったが、公明党が難色を示し見送られた。
改正案は輸送条件について「安全に輸送できると認めるとき」などと与党案より厳格化した。そのような状況であれば関係国に委ねられると考えられ、自衛隊車両は必要ない。
派遣したとしても、自衛隊が陸上活動した実績づくりにとどまろう。やはり危険だから武器使用も認めようと、なし崩しの基準緩和につながりかねない。
事実、防衛省内には「武器使用基準を緩和しないで任務を拡大しても対応は難しい」との声がある。
平和憲法を持つ日本として、海外では相手国の協力や友好国との連携を基本とすべきだ。自衛隊の海外派遣に対するアジア各国の視線はなお厳しい。安易な活動拡大は戒めなくてはならない。
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