特集ワイド:憲法96条改正すれば民意は反映されるか 得票率と獲得議席数の関係を試算
毎日新聞 2013年05月07日 東京夕刊
「そうでしょうか」と上脇さん。「近年のように選挙ごとに1党が過半数を占め、しかも民意とかけ離れてオセロゲームのように政権交代することを考えれば、政権が代わるたびに改憲発議が乱発される可能性すらある。その結果、改憲案そのものが重みを失って関心の低下を招き、国民投票で多数の棄権者が出かねないのです」。10年に施行された国民投票法に最低投票率の規定はない。「民意を反映しない改憲」のリスクはここにも潜んでいるのだ。
◇「根本の議論」が欠落
東大名誉教授で憲法学が専門の樋口陽一さん(78)は、「改憲の必要性」ばかりを強調するかのような議論のあり方に疑問を抱く。「そもそもなぜ改憲しなければいけないのか。根本の議論が欠けているように思えてならない。改憲派の人たちは『時代にそぐわない』と言いますが、実際は立法や法改正でカバーできる部分がほとんどでしょう」。そして続けるのだ。「憲法は未来の世代に与える影響が大きい。例えば改憲して1院制や首相公選制にすれば正しい政治が実現できるのか。9条を改正して専守防衛の理念を守れるのか。9条がなかったら日本はどうなっていたか。こうした問いに明確な答えを出せていないのに、改憲だけを容易にしようとするのは国民への責任を果たすというより、むしろ無責任な行為ではないでしょうか」
毎日新聞の最新の世論調査では、96条改正反対が46%と、賛成の42%を上回った。安倍政権は「改憲のための改憲」などに手をつけるより、最高裁が「違憲」とまで断じた選挙制度の抜本改革に取り組むことが先ではないのか。
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■昨年衆院選の小選挙区・比例代表の総得票数
総得票数合計 得票率(%) 獲得議席数
<96条改正賛成>
自民党 4226万7766 35.28 294(169)
日本維新の会 1920万4581 16.03 54( 77)
みんなの党 805万2830 6.72 18( 32)
合計 6952万5178 58.03 366(278)
<改正反対・未表明>
民主党 2322万7426 19.39 57( 93)
公明党 800万2355 6.68 31( 32)
日本未来の党 641万6280 5.36 9( 26)
日本共産党 838万9448 7.00 8( 34)
社民党 187万2552 1.56 2( 7)
新党大地 66万2452 0.55 1( 3)
国民新党 18万8032 0.16 1( 1)