特集ワイド:憲法96条改正すれば民意は反映されるか 得票率と獲得議席数の関係を試算

毎日新聞 2013年05月07日 東京夕刊

 安倍晋三首相が改憲要件を定めた憲法96条改正を参院選の公約にすると正式に表明した。「改憲すべきだ」という民意の大きさと、条文が規定する改憲要件の厳しさとが「乖離(かいり)しているから」というのが改正派の言い分だ。ならば、改正すれば民意を正しく反映させられるのか。立ち止まって考えてみた。【吉井理記】

 ◇28・92%で「過半数」 国民投票は棄権多数の恐れ

 96条改正の論点をおさらいしよう。現行の条文では、改憲は衆参両院の総議員のそれぞれ3分の2以上の賛成で国民に提案(発議)し、国民投票の過半数の賛成を得ることが条件だ。自民党は「『3分の2以上』は厳し過ぎて現実的ではない。過半数に緩めるべきだ」と主張し、昨年公表した改憲草案に盛り込んだ。安倍首相も「3分の1をちょっと超える議員が反対すれば国民が憲法に手を付けられないのはおかしい」と繰り返し、先月23日の参院予算委では「参院選で堂々と掲げて戦う」と初めて明言した。

 言うまでもなく「過半数」に変えるには、現行の96条が定めるハードルを越える必要がある。今のところ改正を訴えているのは自民党と日本維新の会、みんなの党の3党で、衆院(定数480)は計366議席と、既に3分の2のハードルをクリアしている。一方、参院(同242)の3党の議席数は計100。3分の2の162どころか過半数の122にも足りない。夏の参院選で改正派が102議席を得れば、3党の非改選議席60を加えて発議の条件は整う。

 要するに96条が改正される日は刻々と近付きつつあるわけだが、問題の核心は、むしろ「その後」にある。ハードルが下がったのを受けて政権与党が憲法改正の発議を次々にしたとしよう。それらは果たして国民の多数意思を反映していると言えるのか。

 「今の選挙制度は民意とかけ離れた結果を生んでいる。それなのに国会の意思決定のルールまで緩めてしまえば、ゆがみをさらに増幅することになりかねません」。そう危惧するのは神戸学院大教授で憲法学が専門の上脇博之(かみわきひろし)さん(54)だ。

 「過半数」というハードルが、いかに低いかを浮き彫りにするシミュレーション方法を上脇さんが教えてくれた。使ったのは昨年の衆院選のデータ。小選挙区と比例代表とでは制度が全く異なるが、ここでは単純化して、双方の得票数の合計を民意の大きさと置き換える。

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