2話
リタは自身が初めて召喚したクトゥグアを見つめ、徐に抱きしめた。
「クゥちゃん。クゥちゃんに決めた」
「クトゥグアが随分と可愛くなったな」
「姫、次に進みますので、クトゥグアをカードに戻して、私かマスターに預けけてください」
「うん。ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるふ るるいえ うが=なぐる ふたぐん」
リタはカードに書かれた送還の呪文を詠唱し、クトゥグアをカードに戻した。その後、神官のジャンクに預けた。
「では、もう一度御神籤を引いてください」
「うん」
リタがもう一度御神籤を引くと今度は大凶だった。
「大凶?」
「大凶がでましたか…………では、ちょっとこの扉を潜ってください」
ジャンクが玉座にある扉を開けると。どうやら、転移門と同じもののようだ。
「はい」
ジャンクの言葉に従い、リタは扉を潜った。次の瞬間、リタが眼にしたのは黒い翼の生えた鎧を着た女性が自分の身体に生えた槍を引き抜く姿だった。
「……なん……で……」
熱さと共にシステムにより軽減された痛みが襲い掛かった。そして、リタは気を失った。
リタが次に目覚めたのは、玉座の間だった。そして、リタをいやらしい眼で見る男達。それもそのはずで、リタは裸だった。
「なっ、なんで?」
「この御神籤は大吉と大凶しか入っていないんスッよ。大吉ならさっき見たいにアイテム運など様々な運が上がるッス。でも、大凶は転移した瞬間のローディング中に偶然、そこにいたボスに襲われて全アイテム、全所持金が失われたうえに、Lvダウンまで起きるッスよっ!!」
補足すると、経験値は0%になり、Lvダウンが起きる。これらは、殺された時に低確率で起きるが、その確率は10万低分の1などだ。しかし、大凶はこの超低確率を確実に発動させる。もちろん、アイテムの中にはモンスターカードや装備も含まれている。唯一の例外は召喚中のモンスターのみが助かる。逆に大吉はレアアイテム入手確率やクリティカルなど、大凶の逆に位置する。大凶の解除方法は死亡か一週間立つこと。ただし、一週間をたたずに死亡するのが殆どだ。大吉は一度発動すれば効果が消える。
「じゃあ、まさか…………」
「Lvが1で経験値も無い。アイテムは別プレイヤーが預かればいい。だから、リタにはこの箱が無くなるまでやってもらうからな」
山のように置かれた箱。それを指差すブラック。
「うぅ……わかりました……」
それから、リタは何度も死を繰り返し、ひたすらカード帳やランダムで入っているアイテムを開けて、レアアイテムを手に入れて行く。ちなみに、ランダムで入手出来るアイテムは金、銀、銅があり、その内、金だけがParallelRare以上のカードが出る。だからか、金の値段は一個600M(600,000,000)以上もする高価な品だ。これに御神籤を使い、確実に貴重品を手に入れる方法が裏技として使われている。
四日間でリタが入手したUltimateRareカードは以下の通りだ。
《No.UR526生ける炎―クトゥグア
No.UR856鏡反の神獣―結晶狐
No.UR912嘲笑する虐殺者―ニーズヘッグ
No.UR1576西方の守護神獣―白虎
No.UR5001ソロモン王のネックレス
No.UR5254無限の聖杯
No.UR5721再生の腕輪
No.UR5722復元の指輪》
生ける炎―クトゥグアはクトゥルフ神話の炎の化身。(前話参照)
鏡反の神獣―結晶狐は狐の額に真紅の結晶が埋め込まれている。結晶狐は妖狐とカーバンクルの力を合わせた生物であり、その反射の力はカーバンクルを超え、下級神ごときの攻撃なら軽く倍化させて跳ね返す程だ。さらに、カウンター先を自由に設定も出来るユースティアオリジナルモンスターで、カード帳の金からしか出ない特殊なモンスターだ。
嘲笑する虐殺者―ニーズヘッグはニヴルヘイムのフヴェルゲルミルの泉に多くの蛇と共に棲み、世界樹ユグドラシルの三つめの根を齧っている。その傍ら、栗鼠のラタトスクを介して樹上の大鷲フレースヴェルグと罵り合っている。さらに、ニーズヘッグがナーストレンドで死者の血をすすることがあるとも言われている。なお、この蛇はラグナロクを生き延びるとされている。
西方の守護神獣―百虎は中国の伝説上の神獣である四神の1つで、西方を守護する。西方白虎。細長い体をした白い虎の形をしている。また、四神の中では最も高齢の存在であるとも言われている。(逆に、最も若いという説もある)
ソロモン王のネックレスは様々な強大な魔力を持つ宝玉が嵌められている。このペンダントの効果は召喚呪文の詠唱破棄に加え、ソロモン72柱の悪魔を召喚出来る。ただし、召喚した悪魔は実力を示すなどして、契約を交わしてカードにしなければいけない。例外として、一時的に力を借りるだけなら召喚した直後に代価を支払えば契約せずに協力してくれる。ただし、当然、召喚された悪魔が襲い掛かって来る事もある。
無限の聖杯は、魔力を無尽蔵に生み出し続けるアイテムだ。この魔力を飲む事により、魔力を回復出来る。
再生の腕輪は、ライフポイントを一定時間で10%回復させる効果がある。
復元の指輪は、手に持ったカードを完全な状態に修復する事が出来る。
このどれもがUltimateRareに相応しい力を持っている。この他にも、ParallelやSecretなどのレアなカードも多数所持している。
「流石に御神籤使ってもUltimateはなかなか出ないか」
「マスター、チートカードをこれだけだした姫の運が凄いだけッスよ。開けた金は6800個ッスよ。普通なら、5000から10000で1個出たら良い方ッスよ」
6800個。つまり、黒曜騎士団は金だけで4,080,000,000,000(4兆80億)も使っている。
「ですね」
「わたしは凄い?」
「「「「姫は最高っ!!」」」」
彼等が喜ぶのも無理は無い。このユースティアはコレクター図鑑も存在する。その中には当然、桁違いに手に入り難いカードも沢山ある。しかし、リタはそれを大量に出した。こうなると、クランメンバー同士で交換し、一周させるとかなりのページが埋まったのだ。コレクター図鑑を一定量埋めた人にはリアルマネーかゲーム内のお金かゲーム内の特別なカードが贈られる。これはEXカードと良い、基本的にはアニメや別ゲームとのコラボ品になる。例えば、実際にその人物並の力を手に入れられるコスプレ衣装や武器などが景品となる。
「姫っ、先ずはこちらに御着替えくださいっ!」
顔を真っ赤にしながら、リタに東方にあると言われる幻の神社の巫女服が渡された。
「これは、巫女が就いてから妖怪に占拠されたと言われるあの幻の神社の巫女服ですね」
「ナイスチョイスっス。姫、ぜひ着てくだせえ」
「わかりました」
リタがデバイスから渡された巫女服をドラッグして、装備欄で手を離すと、リタの手足から魔法少女の変身シーンよろしく、ゆっくりと端から服が出現し、男達を楽しませた後、巫女服に変身し終えたリタが現れた。。
「「「「素晴らしいっ!!!」」」」
「あれ、カードが変わりました?」
男達が歓声を上げる中、リタはいつの間にかカードがお札に変化していたのを不思議がっている。
「ああ、それはコスプレ衣装は元の人物により色々変化するぞ」
「それは楽しみです。それにしても、どちらかと言えば、東方の魔王ですね」
「確かにな。おい、お前達! これから交代でリタのLv上げを行う。ほうけてないで準備しろっ!」
「「「「「イエッサーっ!!」」」」」
それから、リタは数百回は殺されたエクストラダンジョンで黒曜騎士団のメンバーが駆りをしているのを眺めながら、召喚した小さな召喚獣達を撫で回していた。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。