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主人公の姿は俺達に翼の京の男版。chaosTCGの生存確認というカードを見て決めました。
プロローグ



 ニートになって早4年。働くため面接を受けるも失敗し続ける俺。それもそのはずだ。今や人間の仕事なんてほとんど無いのだ。危険な仕事や面倒な仕事はヒューマノイドが全てしてくれるのだ。全ては世紀の大天才と言われ、数々の病を駆逐し、たった一人で医療や環境問題、エネルギー問題まで解決し、科学技術を数世紀先に進化させた男のせいだ。まぁ、その男が開発したミッドナイト・ガンスリンガーというVRMMORPGにのめり込んで就職活動しなかった俺が一番悪いんだが。おかげで電子戦やヒューマノイドの知識だけはある。遊ぶだけで生活できたらいいのにな。

「何か良い事無いかな…………」

そんな時、一枚のチラシが空から降ってきた。

『仕事の無い貴方。貴方の力で世界を救ってみませんか?』

「なんだこれ?」

『前金60万円を準備金として支給。その後は能力給次第。仕事内容は一定期間、こちらで用意する場所で過ごして貰うのみ。その間は好きな事をして貰っても構いません』

「なにこれ? なんて好条件…………はっ、有り得ないって」

俺はカバンの中にチラシを入れて今日の面接を受けに行った。




 数日後、9件受けた会社からの返答はこれだ。

『今回、ご縁がなかったとの…………』

そう、不合格という奴だ。

「ああっ、くそ…………今月の家賃だってやばいぞ…………なんか売るものねえかな…………」

売れる物を探す俺は自分で作っているオリジナルヒューマノイドを見る。これは両親が残してくれた遺産のほとんどを使って作っている俺だけの作品だ。残念ながら資金が足りずに放置していた物だ。ゲームやってたら欲しくなったんだが、後悔はしていない。メンテナンスベットだけでも100万はするし。

「売るのか…………無いな。でも、未完成だし…………あと50万程度なんだが…………いや、待てよ?」

カバンに入っていたチラシを見る。前金60万…………もう、完成以外はどうでもいいや。やっちまうか。
俺はチラシにあるホームページのアドレスをパソコンのネットに打ち込んで、そのサイトを開く。そして、入力画面に来たので必要事項を打ち込んでいく。そして、送信。

「はやっ!」

直ぐに返信と前金を振り込んだとの事と一週間後に迎えを送ると書かれていた。幸い、家賃は4万なので問題無い。

「早速買いに行くか…………いや、外に出るの嫌だな。ネットでいいや」

俺は必要なパーツを即日配達で注文して、ヒューマノイドにゲーム内で作ったモジュールをハードに入れて行く。

「各部に異常は無いし、問題無い…………」

8時間も作業していると、即日配達なだけあって品物が届いた。俺は口座引き落としにしてあるので早速受け取って作業を再開する。それから、ひたすら一週間。作業し続けた。



 そして、完成した。システムを全てチェックしてヒューマノイドを起こす。

「…………オペレーティングシステム起動…………各部チェック開始…………完了。個体識別名称及びマスター登録をお願い致します」

「個体識別名称ユーリ。マスターは…………」

マスター登録しようとした瞬間、チャイムがなった。

「誰だよ…………」

俺は徹夜でだるい身体を押して、扉へと向い、開け放った。

「初めまして。約束の一週間が立ちましたのでお迎えに上がりました。準備はよろしいですか?」

そこには黒いワンピースを着た赤い髪の少女が居た。

「ちょっと待ってくれ。どこまで持ってけるんだ?」

「この部屋にある物全てなら可能です」

「なら、パソコンとかヒューマノイド関連全部持ってく」

「はい、畏まりました。それでは、こちらにサインをお願いします」

「ああ」

俺は眠いので特に考えずにサインする。

「はい、確かに確認しました。それでは能天使カマエルが責任を持って、次の世界へとご案内致します」

「え?」

少女は漆黒の翼を広げ、西洋によくありそうな大剣をいつの間にか手に持って、上段に構えて振り下ろした。そして、俺は左右に分断されて意識を失った。





 次に意識を取り戻した時、俺は転生していた。どうやら、俺の新しい名前はアンリ・エーベルヴァインという6歳の男の子だ。黒い髪に黒目の童顔、肌の色は部屋にこもっているので白い。髪の毛は無造作に伸ばしていて、右目を覆っている。髪の毛自体は肩のあたりまで有る。

「ん~~」

周りには高性能なパソコンにメンテナンスベット。そのベットには俺が作ったユーリが置かれている。

「あの女に頼んだ奴は全部有るのか…………」

「ユーリ坊ちゃん、お食事です」

「そこに置いといて」

「畏まりました」

締め切って薄暗い部屋の外から女の人の声がした。どうやらメイドがご飯を運んで来たようだ。そう、メイド。俺はどうやらこの国の貴族の産まれたらしい。というか、エーベルヴァイン家は侯爵家のようだ。そして、俺は6男なので全然期待されていない。一応、許嫁がいるらしいが、引きこもってユーリを作ってたみたいだ。流石俺。

「さて、マスター登録はアンリでして有るのか…………なんだこれ」

改めてモジュールなどのデータを見たら無茶苦茶だった。いや、知らない知識も有るが、流石に6歳では無理だったらしい。というか、この世界はネットワークとかあるくせに魔法とかもある。いや、全てが魔法で片付けられているという方が正しいか。科学は錬金術として扱われているみたいで、魔法を撃ちだす物だが銃はもちろん有るし、戦車やバイク、車なども有る。どれも高級品だが。

「文化レベルはそのくせ中世とかふざけているな…………いや、一度滅んだのか」

錬金術は古代技術として扱われているらしい。なので、バイクなども非常に高価だ。ここにある物は父親や母親のお古をチューニングした奴になっている。

『元気にしていますか?』

パソコンのデータを調べていると、突如として画面にデフォルメされたあの女が出てきた。

『どうやら、記憶の復元は出来たみたいですね。ここは貴方のいうところの異世界アイディールです。この世界は何もしなければ10年後に大量の機械生命体などのエネミーがダンジョンから湧き出て滅びてしまいます。世界を救いに外に出ようが、引きこもって世界崩壊まで無為に過ごすのでも構いません。何故なら、あなた以外にも7人の選ばれし勇者ニートが存在するからです。そちらの方々はハーレム目指すだの言って、張り切っておられますので、問題無いと思います』

「なら、思う存分引き込もれる…………」

誰が好き好んで死にに行くんだよ。絶対やだね。

『ですが、念の為にチュートリアルをさせていただきます。まずはステータスと言って下さい』

「ステータス」

NAME:アンリ・エーベルヴァイン
職業:なんちゃって錬金術師
称号:引きこもり勇者、人形使い
レベル:1
体力:1.00 精神:3.00
筋力:0.05 知力:4.90
器用:6.00 敏捷:0.02
幸運:2.03 魅力:3.00
能力
無し

「おい」

『ちなみに一般人の子供の平均が1で合計が6です。他の勇者は子供でも平均9だったのですが…………貴方の平均値は3.3ですね。これは大人と同じくらいですが…………勇者としてはゴミですね。ご愁傷様です』

「五月蝿い」

『まあ、一応産まれた地位は一番高いので良いんじゃないですか?』

「まぁ、それは助かる」

農村だったりするとやってられない。ユーリをこの世界の技術とあわせて作れないし、引き込もれないだろうから。

『では、初期サービスとして能力を三つ進呈します。選んでください』

パソコンに表示される大量のスキル。それを見て選んだのは空間魔法と電脳化、高速演算の三つ。

『戦う気が一切有りませんね』

空間魔法はマイルームという魔法を選択したし、高速演算はその名の通りだ。電脳化は脳に直接、膨大な数のマイクロマシンを注入し、神経細胞とマイクロマシンを結合させ、電気信号をやりとりすることで、マイクロマシン経由で脳と外部世界を直接接続する技術だ。これによって、ロボットなどのメカニックを直接操作したり、電脳ネットなどのネットワークと直接接続したりできる。その結果、あらゆる情報がリアルタイムで検索・共有可能になり、完璧なユビキタスネットワークを構築する。可視化されたネットワーク上にあたかも自分が入り込んだかのように様々なネットワークを自由に行き来できるようになるらしい。素晴らしいスキルだ。

「それで頼む」

『分かりました。それでは、お休みなさい』

俺はまた意識を失った。そして、次に起きたらネットワークにダイブできるようになっていた。

「ヒャッホォーっ!!!」

俺は早速作業に入って行く。しかし、邪魔が入った。

「アンリ様、ご飯は食べてください」

「ちっ、わかった」

それから、俺はご飯を食べる。その後、電脳化による力をフルに使って情報…………技術を収集して行く。そう、ユーリをハイスペック版で完成させる為だ。



 3年の歳月がたち、俺は9歳になった。相変わらず外に出ていない。

「ん…………依頼か。面倒だな」

しかし、ネットワーク内で外出はしている。そう、情報の海にだ。膨大な量の情報も高速演算で対応して片っ端から判別して処理している。今も、情報の海の中に居る。

「マスター、預金残高がかなり減っているわ」

俺にそんな事を言ってきたのは、10センチくらいの小さな女の子だ。彼女はユーリの人工知能だ。ちなみに、髪の毛は紫で肩の上辺りまで髪の毛が有り、両サイドから胸の辺りまで長い髪の毛も有る。瞳の色は赤で服装は黒いチャイナドレスの上半身部分に黒い斑模様の白いスカート。手の部分には和服のような黒い袖に黒い斑模様がつけられたフリルが備わったのが取り付けられている。もちろん、頭の両サイドにも黒いリボンが着いている。

「ユーリの本体制作に無茶苦茶お金がいるし…………依頼を受けるか」

「了解よ。防御レベルを6に設定。障壁を多重展開…………完了。他国へのバイバスを形成…………完了。マスター、3ヵ国ぐらいでいいわよね?」

「充分」

「じゃあ、何時もの通りにするわ」

大量の画面が展開されては消えて行き、やがて青い光の柱が乱立する光景が映し出された。

「マスター、攻性スクリプト準備完了」

「うん。アタック開始」

「行きなさい」

発射された攻性スクリプトは多段展開を得て、目標のサーバーに着弾する。

「第一波到達。サポートアタック開始――――ガードシステムの起動を確認。攻性スクリプトの消滅を確認。マスター」

「はいはい、お任せあれ」

敵が展開したガードシステムを拘束で解析して、第二波の攻性スクリプトにそれを無効化するプログラムを入れる。

「OK」

「第二波、発射――――第二波着弾を確認。それと同時に対象のガードシステムの沈黙も確認したわ」

無効化するプログラムが効いた御蔭で楽が出来た。

「ほい、これで問題無し。それじゃ、不正データを探すよ」

そして、偽のガードシステムを配置して何も無かったように報告させる。

「ええ」

請けた依頼は対象貴族の不正洗い出しの為の証拠集めだ。高速で流れる情報を読んで行き、いらないデータは手でどけていく。電脳化をして3年で大分慣れて来た。

「マスター、見つけたわ」

「うわぁ…………横領に領民の拷問…………暗殺とえぐいな」

「暗殺者ギルドのデータも有りそうね」

「そっちも殺っとくか」

「了解。面倒だから嘲笑する虐殺者を使うわ」

嘲笑する虐殺者はニーズベックを元にして作り上げたアクティブスクリプトエンジンだ。正確には世紀の大天才様が作り上げたゲームプログラムだが、このコンピュータの中に入っていた。御蔭で切り札というか、使い勝手の良いプログラムになっている。利点は対象のガードシステムを問答無用で破壊して情報を根こそぎ奪って破壊していく事だ。問題点は奪ってきたデータが壊れているので復元に時間がかかることだな。

「任せる」

「嘲笑する虐殺者を起動。目標座標の入力完了。展開開始」

飛んで行く電子のドラゴンは暗殺者ギルドを狙って行く。

「ユーリ」

「ええ。こっちは任せて」

俺は俺でせっかく侵入したので色々と楽しませて貰う。

「クスクス、結構溜め込んでるね…………」

貴族の口座データから架空口座へと全額入金して、更に別の架空口座へと入金を繰り返し、ぐるぐると回らせつつ、途中で痕跡を破壊してお金の流れをわかりにくくする。それを2、3回繰り返して自分の口座へと入金する。その後は適当に各国の孤児院へで寄付する。

「報われない子供に愛の手をってね」

「マネーロンダリングまでして、何言ってるのかしら?」

「そっちはどう?」

「壊れてるから復元には時間がかかるわ。依頼のデータは纏めて依頼主に送っておくわ」

「お願い」

さて、俺は俺で新しいユーリのパーツを買おうかな。この世界って無茶苦茶物騒だしな。









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