景気減速と輸出企業の悲劇 円高放置で財政支援も限界

2012.11.16

 内閣府が12日に発表した7〜9月期の実質国内総生産(GDP)は前期比マイナス0・9%、年率換算マイナス3・5%と、景気後退が鮮明になっている。

 9月の鉱工業生産は前月比4・1%低下し、リーマン・ショックと東日本大震災以外では最大の落ち込みだ。9月の景気動向指数も、景気の現状を示す一致指数は91・2となり、前月比2・3ポイント低下し、6カ月連続の下降に。景気はすでに3月から後退局面に入った可能性が高い。

 この景気減速は、自動車と関連業界の落ち込みによるところが大きい。世界経済の減速によって自動車輸出が低迷し、エコカー補助金の終了によって国内販売も減少したことが原因だといわれている。

 これをさらに細かく見てみよう。自動車業界の売上高は輸出依存が高いので、為替レートに連動しているように思える。たしかに、リーマン・ショックの2008年10〜12月期まではそのとおりで、自動車業界の売上高と為替レートの相関係数は7割と高い。

 ところが、09年1〜3月期以降はその関係が崩れて、ほとんど相関がなくなる。これはエコカー減税やエコカー補助金が導入されたからである。エコカー減税・エコカー補助金の威力は大きく、自動車業界の売り上げを下支えする役割を果たした。これらの政策的なテコ入れで20兆円以上の売り上げの下支えをしたことになるだろう。

 つまり、円高を放置した代わりに財政支出で自動車産業を支えていたわけだが、ここに来て、財政支援ができなくなり、円高の影響をもろに受けて、失速気味になっているわけだ。

 もとはといえば、円高放置が悪かったのだ。円高さえなければ、エコカー減税やエコカー補助金も必要最小限ですんだだろうし、ここまでの売り上げ減にはならなかったはずだ。

 これは、家電業界をみてもわかる。エコポイントの財政支援はあったが、家電業界の売上高と為替の相関は8割もある。いってみれば為替相場次第で業界業績が左右される。円高が放置され続けて、ついに刀折れ矢尽きた状態だ。

 円高を放置し続ければ輸出産業はどんどん疲弊する。逆に円高から円安に転換できれば景気はすぐに回復する。もちろん為替は介入ではなく、金融政策で変化させられるのは、本コラムの読者ならご存じのはずだ。

 なお、特例公債法案は、2015年度までの4年間は赤字国債の自動発行を認める方向で民自公が合意するらしい。

 特例公債法は、それを通す代わりに予算を修正するという国会の予算審議のために使うべきもの。海外では国会での予算修正は当たり前だ。

 ところが、民自公の特例公債法の4年間の白紙委任は、「予算は財務省原案に指一本触れさせない。だから、国会で予算を修正させない」という財務省の思惑にまんまと乗せられているといわざるを得ない。国会は予算について仕事をしていない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)