ラーメン女子大生 本谷亜紀インタビュー
これは戦国時代の名将、福島正則の残した名言で、戦いでいつも先鋒に立った、彼らしさを如実に表す言葉であるように思う。
“先頭に立つ”ことは得られる成功は大きいものの、払う犠牲、苦労も大きい。福島正則も関ヶ原の戦いの勝利で大きな功を得たが、一方で多くの名だたる部下が戦死した。“先鋒者”は、それだけ逆風と敵にさらされる。それで挫けずに生き残った者が、“先鋒者”として名が残る。
数年前、らーめんは女性色が薄く、女性だけで、頻繁にらーめん屋に入ることがあまり考えられなかった。そんな周囲の目を気にせず、おいしい一杯を求めて続けている“女性”がいる。名前は本谷亜紀、皆さんお馴染みの“ラーメン女子大生”だ。一ヶ月で50杯以上もたいらげることもあるという。そんな彼女の活躍が、らーめんが好きな女子に光をあてたといっても過言ではない。女性・らーめんという二つの軸で、まさにらーめん女子の先駆者となった彼女。“ラーメン女子大生”になるまでの苦労や良かったこと、その経緯や、彼女自身のことなど、色々と深く聞いてみた。
※これは2012年5月23日(火)に、虎キチ、エンドリでインタビュー致しました。
※編集者が大阪人の虎キチであるため、本稿で、本谷亜紀さんが関西弁で話しているようなニュアンスがあるかもしれませんが、御了承下さい。
亜…本谷亜紀さん
虎…虎キチ
~らーめんへのきっかけ~
虎「なぜ、いつから、らーめんが好きになったんですか?」
亜「もともと家族が『麺』食だったんです。らーめん、パスタ、うどんといった麺類をよく食べていました。私は“白いご飯”が苦手なので、自然と『麺』に走っていったということもあるかもしれません。」
「らーめんが大好きになったきっかけは、予備校時代だと思います。池袋で、(土曜日の)お昼休みで、気軽にランチを楽しめたのが『らーめん』でした。もともと(何に対しても)コレクターの性格があり、一店一店違う顔を楽しめるらーめんに自然に魅かれていったのです。次第に、池袋だけじゃなく、新宿、有楽町、渋谷…と次々においしい一杯を求めるようになりましたね。」
虎「池袋はらーめんの激戦区ですもんね。でも、それだけ毎週、しかも女の子がらーめんを食べに行くってなかなか、考えにくいと思うのですが、どういう方と行っていたのですか?」
亜「最初は女の子の友達とも行っていたのですが、食べた後に『やっぱり恥ずかしかったね』とか、『男ばっかやったね』と言うのを聞いて、(一緒に行くのが)嫌になったんです。だって、せっかくおいしいものを食べたのに、嫌な気持ちになるのなんていやじゃないですかー(笑)。だから次第に一人で行くようになりましたね。最初は抵抗ありましたが、“らーめんが食べたい!”という思いが先行し、足は流れていきました。一人で行くと、行きたいお店にも行けるし、自分の好きなペースで食べれるし…制服着ても行ってましたよ(笑)。」
虎「らーめんが大好きと周囲に漏らして、何か抵抗はなかったのですか?」
亜「私はなかったです!私は何事をやるにしても、周囲を気にして、恥ずかしいからいやだとか、辞めるとか思うことがなく、好きなことを素直にする人なんです。ただ、やっぱり、周りの友達からは『気持ち悪い』とか、マイナスな事を言われた経験はありますね。」
虎「その当時(2004年頃)は、女の子がらーめんを食べるイメージが定着していませんでしたもんね…。でも今は、“らーめん女子”という言葉が流布されるほど、そのイメージが湧いて来たように思えます。なぜだと思いますか?」
亜「らーめんに限らず、“食”全体への意識が変わって来たからだと思います。食べ物を、“性別”で分けることがなくなってきたんじゃないですか。食べログ、ツイッター、ブログ…そういったソーシャル・ネットワークが出てきて、『この食べ物は男で、あれは女』という“性別”が薄まってきたんじゃないでしょうか。だってほら、スイーツだってそうじゃないですか。(私はあまり食べませんが)今の男の子はいっぱい食べるでしょう?らーめんに関しては、私の影響が大きいかもしれませんが(笑)!」
虎「なるほどー!確かに、ブログを見て、『男もこんなにスイーツ食べるんやぁ』と共感したことありますわ。それを見て『俺もスイーツ食べてもええんやぁ』みたいなね。」
「らーめんに話を移したいんですけど、亜紀さんはどんなタイプが好きなんですか?」
亜「さっぱり系です。基本的に毎日らーめんは食べたいので、さっぱり系です。コッテリも好きですが、週一でいいかなーという感じです。」
虎「僕は“塩”が好きなんですが、“塩”はどうですか?」
亜「一番好きな“タイプ”です!ちょっと前までは、ここらへんに“塩”があまりなかったので、『食べたいな』という憧れを持っていました。おすすめは函館の「函館麺屋 ゆうみん」というお店です。水みたいに薄いんですが、仄かに魚介を感じる一杯。うーん、大好きです。」
虎「醤油はいかがでしょう?」
亜「醤油は、九州は甘い、旭川は辛いと言ったような、醤油の地域差があるのが面白いです。好みは…キリッと醤油感のでる喜多方系ですね!」
虎「これまで、めっちゃくちゃたくさんのらーめんを食べてこられたと思いますが、一杯一杯の“食べ方”に拘り(食べるルーティン)はありますか?順序というか…」
亜「あります!(着麺したら)写真をさっと撮って、香りをかぐ。らーめんの世界に自分が『スーッ』と引き込まれていきます。そこからレンゲをとりますが、一口目はスープの層を、次に層をのけて中層をzzzといただきます。(当たり前ですが)スープの表面は油分が多いのでね。そこから麺にとりかかります。そのルーティンは、毎回、必ずです。」
虎「亜紀さんが目指す“目標”はありますか?」
亜「まずは、できるだけ多くの方が『らーめんといえば、本谷亜紀』というイメージを持ってもらえるよう、頑張りたいですね。後は、“本”を書きたいと思っています。美味しい文章を書いて、それを見た人がお店に行ってもらえたら、自分にとってすごく幸せじゃないですか!」
虎「具体的にどういった本を書きたいですか?今でも、いっぱいらーめん本はありますが…」
亜「女の子が求める本を書きたいと思っています。具体的にはシチュエーションで、らーめんをカテゴライズした本を書きたいですね!例えば平日のデートにおすすめのお店、女子会後におすすめのお店、女性向けのメニューが豊富なお店…など、場所ではなく、シチュエーションに合ったお店選びが出来るような本を書きたいなと思っています。」
「また、女性の生の声にもっと耳を傾けたいですね。もしかすると女性は“さっぱり系”を求めているというのは私の偏見かもしれませんし、もしかすると、案外“コッテリ系”が好きだという女の子は多いかもしれませんしね。」
虎「“美味しい”を言語化することは、自分でも感じていますが、非常に難しいことだと思います。(文章を磨く)工夫を何かされていますか?」
亜「らーめん以外のレビューを参考にしたりはしています。私はワインが好きなので、ワインの本はよく見ていますね。」
虎「らーめんを楽しむ中で、亜紀さんはどこを良く見られていますか?お店の雰囲気や、接客、もちろん、らーめんの中でも構いません。」
亜「スープです。スープというのは絶対お店がつくるもので、一番個性が出るものだからですね。別に…美味しい基準はないです。あまり難しく考えず、直感的に美味いと感じる一杯が好きですね。」
虎「らーめんに“入門”しようとする女の子に、一言お願いします。」
亜「『皆が思っているより、らーめんは女の子が食べる食べ物だよ』と言いたいですね(笑)。お店側も内装を綺麗にしたり、メニューの引き出しを多くしたりと…以前より遥かにらーめん店が(女の子にとって)近くなっているので、躊躇せずに足を運んでほしいと思いますね。」
~話はラーメン女子大生に~
虎「どういう経緯で“ラーメン女子大生”になったのですか?」
亜「お願いランキングという番組ありますよね。あの番組の、ラーメンレポーターの募集が行われているので、『らーめんを食べさせてくれるなら…』と思って応募してみたんです。筆記試験、面接を経て、300名くらいの中から私が選ばれたんです。」
虎「筆記試験というと…?」
亜「横浜家系らーめんのトッピングでのっているものは?とか、自分のトップテンを挙げよとか、簡単な問題ですよ(笑)」
「でも、本当は単発企画だったんです。それが思ったより反響がありまして、続くことになったんです。自分でも大変なことになったなーと今でも思っております。」
虎「らーめん女子大生になって良かったことは?」
亜「憧れの大崎さんに会えたことや、らーめんは嫌いな人がいないので色々な人と(らーめんを通じて)仲良くなれたことですね。テレビに出る前は、『らーめんばかり食べて気持ち悪い』と思われて嫌な気持ちになったこともありましたが、今ではファンレターやブログのコメント、ツイッターのリプなども頂いて…本当に好きになって良かったと改めて思います。」
~最後に~
虎「亜紀さんの思う、理想の“らーめん男子像”はありますか?」
亜「自分の好きならーめんを、好きな目線で、緩く食べてる人がいいなー。自分で見つけて、そこに何回も行っているお店の方が、聞いて行きたくなりますし、そういう方からお店を教えてもらいたいですね。」
虎「では…あの質問を(笑)」
「亜紀さんにとってらーめんとは何ですか。」
亜「コミュニケーションツールです。らーめんで繋がった人は数知れないですし、何せ、以前は『気持ち悪い』と言われていたのが、今では『かっこいい』と言われることもありますしね!ほんと、その意味では人生が変わりました!」
虎「色々とお話しいただいて、ありがとうございます…最後に、我々IRCに一言お願いしてもよろしいですか?」
亜「生涯の“麺”サークルにしてほしいですね!食べ物は生きている限り、ずっとついて回るものだし、永遠に、好きなものについて語り合う仲間をつくってほしいと思います。あとは、もっとらーめん好きの大学女子を集めて下さい(笑)私ももっと、らーめん大好きな女仲間が欲しいので(笑)」
虎「それは我々のサークルの喫緊の課題であります(笑)女の子にも魅力的なサークルづくりを頑張ります!」
お忙しい中、ありがとうございました。
今後とも、彼女の活躍にそうご期待ですね!
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました!
来月は…誰になるでしょうか…お楽しみに♪
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本谷 亜紀(Honya Aki)
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