ホッとニュース 【3月21日02時39分更新】

ハチ大量失踪、原因は農薬 金大グループ実験
 世界各地で報告されているミツバチが大量失踪する問題で、金大理工研究域自然システ ム学系の山田敏郎教授らの研究グループは20日までに、1990年代に登場した新種の 農薬によって、ハチが大量失踪することを世界で初めて実証した。研究グループは、この 農薬の毒性がハチの帰巣本能を失わせたとみている。実証結果は、養蜂業だけではなく生 態系にも影響を及ぼすとみられる大量失踪の解明・対策につながると期待される。

 大量失踪は「蜂群(ほうぐん)崩壊症候群(CCD)」と呼ばれる。女王バチや幼虫、 ハチミツを残したまま巣箱から働きバチが突然いなくなり、巣箱周辺では、その死骸が見 当たらないのが特徴である。1990年代初めから欧米などで発生し、北半球から4分の 1のハチが消えたとされ、その数は300億匹に上るという。国内でも2000年代後半 から問題化している。

 農薬や寄生ダニ、ハチ自体の病気、電磁波などが原因として挙げられているが、特定に は至っていない。

 金大の研究グループは、この謎を解明するため、原因の一つに指摘されているネオニコ チノイド系農薬に着目した。ネオニコチノイドはニコチンと似た成分を持つ。有機リン系 農薬に代わり90年代から登場し、現在、100カ国以上で販売されている。

 研究グループは、1万匹のセイヨウミツバチの群れ8群に、濃度を変えるなどしてこの 農薬を投与。カメムシ駆除に使われる濃度の10倍に薄めたものを高濃度、50倍を中濃 度、100倍を低濃度とした。

 その結果、高濃度では急性毒性によって、ほとんどの働きバチが即死。中濃度では7〜 9週間、低濃度では12週間後には働きバチが巣箱からほとんどいなくなった。大量失踪 の事例と同様、いずれも巣箱周辺に死骸は見られなかった。

 このことから、研究グループは、散布後に拡散されて濃度の低くなったネオニコチノイ ド系農薬が花粉などにつき、それを働きバチが長期にわたり摂取。帰巣本能に障害が生じ 、巣に戻れなくなって大量失踪が起きている可能性があるとしている。

 実証実験をまとめた論文は日本臨床環境医学会の学会誌に発表された。山田教授は「ミ ツバチがいなくなれば、養蜂業だけでなく生態系にも大きな影響がある。ネオニコチノイ ド系農薬の使用を規制するなどの早急な対策が必要だろう」としている。

●ネオニコチノイド系農薬 成分がタバコのニコチンに似ていることから名付けられた。 農薬として果樹や野菜、米などの栽培に多用されている。ほかの農薬と比べて使用量が少 なくて済む利点があるが、フランスなどでは使用が禁止されている。


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