社会・生活 文藝春秋 掲載記事

情報公開でわかった「公」と「私」
天皇家と東宮家「それぞれの家計簿」

使い道で見えてきたご公務への覚悟、考え方の違い

奥野修司(ノンフィクションライター)と本誌取材班

事前調査に二度行った

 まず、愛子さまの山中湖「校外学習」(2泊3日)について検証してみたい。

 皇太子や皇太子妃が外出することを「行啓」というが、ご公務ではなく、愛子さまの付き添いでもやはり「山梨県行啓」となる。そのための「事前調査」、つまり下見が二度行われた。一度目は夏休み中の8月25日から2日間。このとき職員3人が派遣された。二度目は9月4日から2日間で、職員4人が向かった。動員された人員は延べ7名。計上された費用は「日当」が1万6200円で「宿泊料」が9万750円。「日当」とは、宮内庁によれば弁当代、交通費の手当に相当するそうで、金額は『国家公務員等の旅費に関する法律』で二級職以下の1700円から〈内閣総理大臣及び最高裁長官〉の3800円まで職別に決まっている。

 愛子さまの「校外学習」は9月14日から2泊3日だったが、その前日には雅子妃を迎えるために東宮職1人が山中湖に電車で向っている。そして9月14日から16日まで、東宮侍医1名、女官1名、女嬬(にょじゅ/下級女官)1名、東宮職5名、車馬課職員5名の合計13名が同行した。

 このうち、雅子妃とともに高級リゾートホテル「ホテルマウント富士」に宿泊した職員は10名、3人は日帰りである。ホテルマウント富士は「ホテル棟」と「ハーヴェスト棟」に分かれていて、「ハーヴェスト棟」は学習院初等科が使用していたが、「ホテル棟」は宮内庁が「借り上げ」、つまり借り切り、雅子妃や東宮職はここに宿泊された。ホテル棟は53室、約100名を収容できるが、ここに雅子妃をのぞいて10名が宿泊したから、42室が空室だったことになる。ホテルの「借り上げ」費は1人2万円で1日20万円、2日間では40万円。いずれも公費である。

 雅子妃が宿泊された1泊12万円の「インペリアルスイート」(5階)は内廷費で払われたらしく、非公開であった。しかし、この宿泊料も東宮職の宿泊料も同じ税である。公開することに不都合でもあるのだろうか。

 この山梨県行啓で計上された費用は、「事前調査」で10万6950円。13日から2泊3日の「行啓供奉」が前日入りを含めて47万5480円で、合計58万2430円。

 職員1人当たりの「宿泊料」は、同じホテルでも「事前調査」では1万5000円で、「皇太子妃殿下、愛子内親王ご同伴行啓供奉」では2万円になっている。しかし、ホテル棟は2万円以上する部屋ばかりだ。宮内庁に尋ねると、「職員の宿泊費は上限があり、ケースバイケースで宿泊場所のご協力を得たかたちで泊まることもあります」と回答。天皇家や東宮家に同行する職員の宿泊料は2万円という規定がある。おまけしてもらったということだろう。

 2泊3日で13名の職員が動いて約58万円なら安いと思われるかもしれないが、ここには内廷費で払った分や人件費、ガソリン代などが計上されておらず、あくまで宮内庁が公表を認めた経費のみである。たとえば、ご滞在中は、「ホテルへ続く道では検問が行われ、立ち入り禁止のロープも張られて仰々しい警備でした」(地元関係者)と言われたが、妃殿下警護のために動員された山梨県警など多数の職員の分は含まれていない。またホテル側にすれば、ホテル棟を1日20万円で提供し、雅子妃が泊まられた部屋の壁紙も新調したというから、代表取締役が学習院初等科OBとはいえ、少なからぬ出費だったに違いない。


この続きは「文藝春秋」2013年4月号でご覧ください。

※この記事の公開期間は、2013年06月08日までです。

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2013年4月号
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