ペルソナ4~真実を追う者~ (ナースィサス)
<< 前の話
影と目覚め
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
「・・・どういう、意味だ。」
「だから、協力して欲しいんだ!
お前の力があればーーー」
「落ち着け。・・・悪いが、状況が読めない。
・・・理由を、説明してくれないか。」
「あっと・・・、そうだよな・・・。」
大分興奮状態になっている花村を落ち着かせ、説明を促す。
花村は2回ほど深呼吸して、再び俺に向き合う。
「・・・鳴上、昨日あのテレビを見たか?」
・・・マヨナカテレビの事か?
そう思い当たり、首を横に振る。
もしここに里中がいて聞いていたら、不謹慎だと反発するだろう。
いや、里中に限らず人によっては同じかもしれない。
だが、それに口を挟まずそのまま聞く事にした。
花村の顔つきと瞳が、ただの野次馬ではなく本気だと感じたから。
「この前も、今回も映っていたの、小西先輩だと思ったんだ。」
「・・・はっきり、見えたのか?」
「いや。・・・でも、この間のを見て小西先輩じゃないかって思ったんだ。
昨日のを見て確信した。あれは間違いなく、小西先輩だって。
先輩・・・苦しそうにもがいてるように見えて、そのまま画面から消えちまった。」
「・・・ああ。」
「先輩・・・最初に死んだ山野アナと似たような状態だったって言ってただろ?
それに、噂で『山野アナが運命の相手だ』って最近聞いたんだ。
それも、山野アナが死ぬ前に。」
それを聞いた時、何かが繋がったような気がした。
マヨナカテレビは、見た者の運命の人を映す、謎の現象。
山野アナが運命の相手だと言う噂が本当なら、山野アナはマヨナカテレビに映っていたという事になる。
つまり、マヨナカテレビに映る人間は、運命の相手なんかではなくーーー
「2人は、あのテレビに映ったから死んだ・・・・と言う事か?」
「・・・はっきりとは言い切れない。
・・・だけど、偶然だって思うか?」
花村が話を切って俺の様子を見る。
意見を言え、と言う事なのだろうか。
「強いて言うなら」と前置きして、向かい合う。
「・・・まず、マヨナカテレビが近い未来死ぬ人間を映すモノだと?」
「・・・ああ。きっとそうだ。」
悠の「死ぬ人間」と言う単語に花村が苦虫を潰した表情を見せたが、続ける。
「その仮説は、恐らく合ってると思う。現に、2人ともあのテレビに映って死んでいる。
偶然にしては、タイミングが良すぎる。」
ここまで言って話を区切り、一つ息を吐く。
そして、ずっと引っかかってた事を話す。
「・・・だが、それと事件とどう関係がある?
話を聞く限り、マヨナカテレビはこれから死ぬ人間を映していただけ、と思うが。」
そう、事件との関係性がよく見えない。
マヨナカテレビの事が本当の事だとしても、ただの怪奇現象にしか思えない。
自分の協力を必要とする理由が、分からない。
花村は一度顔を下に向いたが、間もなく花村が顔を上げる。
それも、何か確信を持ったような目で。
「・・・俺ら、あのテレビの中に入ったろ?
そんで、あの気持ちワリー部屋に、柊 みすずのポスターが貼られてただろ?」
「・・・ああ。」
確かに、顔が切り抜かれてる状態でポスターが貼られていた。
「それに、あの『クマ』が言ってた。最近誰かが来てるって。
あれって・・・山野アナも小西先輩の事なんじゃないか?」
「・・・何?」
あの2人が、向こうへ・・・?
確かに、あのクマと言う生物は誰かが来てると言っていた。
もし花村が言ってる事が、本当だとするとーーー
「・・・2人は、事件に遭う前に向こうに行った・・・?」
「ああ。なあ、これって事件と関係ないって思うか?」
花村が追い詰めるように悠に聞く。
確かに・・・関係ない、とは言えなくなってきた。
あの訳が分からない空間に、自分から来る人間はまずいないだろう。
そう考えた時、ある事が頭に浮かんだ。
何故花村が、悠にこの話を持ち出したのか。
何故、悠に協力を求めたのかーーー。
「ーーー花村、まさかーーーー」
「そのまさかだ。」
次の瞬間、花村から爆弾発言が出た。
「・・・頼む!俺をあの変な所に連れてってくれ!」
「・・・何を、言って・・・?」
「どうしても繋がってるようにしか思えないんだよ!
もしかしたら・・・向こうに、先輩が関係してる所もあるかもしれない・・・。
俺、どうしてもあっちの世界に行って確かめたいんだ!
なんで・・・先輩が殺されなきゃなんなかったのか・・・!」
花村の声が、辺りを響いて溶け込んでいく。
一度真っ白になった頭を働かせて、整理する。
そして、即座に浮かんだ答え。
それを伝えるため、悠は花村に正面と向きあう。
花村の必死な顔に向かって、
「・・・・ダメだ。
連れて行くことはできない。」
否定の答えを出した。
花村に反論する隙を与えず、続ける。
「理由は一つ。
・・・危なすぎる。
・・・もし向こうに2人が来て死んだとするなら、そこで死ぬ事になった原因があるという事だ。
ヘタをすれば、お前も2人と同様、死ぬかもしれない。」
「っでもよ、俺らあの時帰ってこれたじゃん!だったらーーー」
「・・・絶対に、また出られると?
確かに俺達は一度帰ってこれたが、それはクマがいてくれたからこそだ。
また向こうに行けば、必ずまた会えるという保証は?
・・・花村、お前の本当の目的は復讐なんじゃないのか?だから向こうへ行って仇を討とうとした。
向こうに行った人間が、2人以外に殺人者がまだいたとしたら?
その殺人者相手に逃げられると言い切れるのか?」
「・・・・っ!!」
息を飲んだ花村が、段々顔色を変える。図星のようだ。
これで考え直してくれるなら、それでいい。
そう思って、冷酷な言葉を、吐く。
「・・・復讐が目的なら、協力はできない。
相手は2人も人を殺した殺人者だ。
・・・復讐する前に、二の舞になるだけだ。」
その言葉を聞いた花村は、怒りと憎しみに染まった顔で俯いた。
正直、自分でもヒドい事を言ったと思う。
だけど、向こうには人が死ぬような危険な事があると言う事。
花村が向こうへ行ったら、2人と同様死ぬかもしれない。
どうか、考え直して欲しいーーー。
悠は柄にもなく、強くそう願った。
沈黙と雨音が、2人を包む。
先に口を開いたのは、花村だった。
「鳴上。
・・・確かに、向こうに行けば死ぬかもしれない。
だけど、それでも行きたいって思う。」
「復讐するために、命を懸けると?」
悠の無機質な問いに花村は肩を震えるも、視線は悠から逸らさない。
「・・・向こうには先輩を殺した奴がいるのかもしれない。
だけど・・・もしいてもいなくても、復讐するのかどうかは・・・実の所、分からねぇんだ。」
驚いた。
てっきり、復讐に燃えているとばかり思ってたから。
「もちろん、先輩を殺した奴がいるんだったら、絶対にそいつを許せねぇ。
殺したい位に憎いって思ってる。
・・・でも、俺は先輩が死んだ原因を知らないんだ。」
あの変死体として見つかった遺体は、死因はまだはっきりしていない。
今でも、不明とされていた。
「例え、先輩を殺した奴がいなくて、別の何かが原因だとしても・・・、
・・・・俺は知りたいんだ!なんで先輩が死んだのか!なんで・・・っ、先輩が死ななきゃいけなかったのか…!」
途中で、花村の目から涙が零れ落ちた。
その瞳には、さっきのような憎しみや怒りではなく、・・・・・悲しみ。
屋上で見た、悲しみと絶望の目ーーーー。
「せめて、それだけでも知りたいんだ・・・。
今のままじゃ・・・・っ、何にも、納得できねぇよっ・・・・・。」
涙を袖で拭きながらも、続ける。
それでも、花村の目元には涙が残っていて。
「・・・俺・・・お前の事、待ってる。
・・・誰がなんと言おうと、ジュネスから絶対動かねぇから。」
その言葉を残して、花村は階段を下りて去った。
悠一人、その場に残る。
(・・・あいつ・・・・本気か・・・・?)
もしそうなら、花村に憎まれようとも止めなくてはいけない。
その想いとは別に、悠の心に別の感情が引っかかっていた。
雨の中、一人で泣いていた花村。
小西先輩の死を、本気で悲しんでいた花村の涙。
自分がどれだけヒドい事を言おうとも、決意を揺るがなかった意志。
花村の瞳に宿していた、絶望の色ーーーーー。
(・・・・、花村ーーーーー。)
花村の涙が頭から離れず、悠は急いで階段を下りてその場から離れた。
ーーージュネス・家電コーナー
「・・・鳴上!来てくれたのか!」
あの後、花村の様子が気になり不安半分のままジュネスに向かった。
家電コーナーに着いた時、周りを見回したら案の定、花村があのテレビの前にいた。
命綱だろうと思われるロープが付けられてるのを見て、諦める気は全くないらしい。
・・・予想していたとはいえ、軽く頭痛がしたような気がした。
内心溜息を一つ吐きながら、花村に近づく。
「いくつか聞いてもいいか。・・・何故ココを選んだ?」
「あん時、俺らはココからあの世界へ来れただろ。
あん時と同じ場所・・・、ここから入ればあのクマに会えるかもしれない。だからだ。」
(・・・一応、筋は通るな。)
最も、あのクマがあの世界への通り道を塞いでなければの話だが。
「・・・一応確認したい。
もしあの世界へ行く気なら、目的はあくまでも復讐ではなく、小西先輩がいたという痕跡を探るため・・・・と、考えていいのか?」
その言葉に花村は少しの間を開けて、「・・・あぁ。」とハッキリ呟いた。
その回答を聞き、悠はしばらくの間考えて、
「・・・花村の本心はわかった。
・・・・今から、向こうへ行く。」
その言葉に花村は表情を輝かせて、
「・・・ああ!助かったぜ、鳴ーー「ただし、行くのは俺だけで。」・・・・・は?」
悠が花村の言葉に割り込むように付け足した言葉の意味に、花村は一転して困惑したような表情になる。
「え、ちょーーーー何言ってんだ、俺もーーーー」
「花村。屋上で言った通り、連れて行くことはできない。
あそこは世界は危険だ。断言してもいい。」
「今さらだろ?それを承知の上で、行く事にしたんじゃないのか?」
「・・・・・花村。こうなった以上話すがーーーー」
悠は花村に、マヨナカテレビを試した時の事を話した。
あの時、最後に鉄仮面の巨人が映った事。
その鉄仮面の巨人が、テレビから悠を引きずり込もうとした事。
そして多分、自分はあの巨人に狙われている可能性があると言う事ーーーー。
すべて話した時、花村は口を半開きにして硬直していた。
「ちょ・・・ちょっと待てよ、もしそれが本当なら、そいつが犯人じゃーーー」
「・・・いや、可能性は低いと思う。
もしそうだったらとしたら、俺は目撃者だ。犯人にとっても、邪魔なハズ。
昨日俺がテレビの世界にいた時、口封じに俺を殺しにいくのはチャンスだったはずだ。
一緒だった花村や里中も巻き込んで。」
「おま・・・、結構物騒な事サラッと言うよな・・・。」
悠の推理に花村は顔を青ざめて突っ込む。
「・・・犯人じゃなかったとしても、俺が狙われる可能性が0になったとは言えない。
よって、俺だけで行く。」
「で、でもよ、お前が危ねぇじゃなぇか、だったらなおさらーーー」
「痕跡を探るだけなら、あのクマに話を聞けば済む。調べるとしても、時間はそうかからない。
2人もいらない。第一、」
ここまで言い切り、花村に顔を見合わせ、
「俺にもしもの事があった場合、花村はもうココには戻れない。
・・・狙われている以上、お前の命に責任は持てない。」
悠は声を低くなるように意識して、ゆっくりかつハッキリと言う。
その効果があったのか、花村は体をビクついた。
顔色も、困惑のいろに変わっている。
「・・・すぐ戻る。朗報を待ってくれ。」
脅しが聞いたと思った悠は、花村を放置してテレビに体を半分潜り込ませた。
見た限り、昨日と同じ場所だ。花村の推測は正しかった、とぼんやり悠は思った。
「・・・クマ。クマー、いないのか?」
「・・・ユー!?なんでまた来たクマか!?」
悠の呼びかけに気づいたクマが驚いた顔で駆け寄ってきた。
「来ちゃダメって言ったクマ!ここは危ない所なんだから、早く帰んなさい!」
ピコピコと可愛らしい音を立ててクマは地団駄を踏んだ。
気のせいか、クマの声色に少しばかりの喜びがあった気がする。悠は確信もなくそう思った。
(・・・とりあえず、今言うべき事はーーー)
「・・・こんにちは。」
「あ・・・、どーもです。」
どこかズレた第一声でクマもつられて体ごとお辞儀をした。
さて、ここからが本題。
「・・・入っていいか?」
「ダーメ!クマ!」
「話がしたい。」
「・・・へ?クマと?お話?」
(食いついてきた・・・。もう一押し。)
「ココに来たのは、クマに聞きたいことがあるから。
・・・ダメか?」
クマは「んー・・・」と声を出しながらクルクル回っていたが、程なくして、「分かったクマ。入っていークマよ。」と嬉しそうに近寄ってきた。
思ったより早く折れてくれて、安心する。
「待ってろ。すぐにーーーーー、
ぐっっ!??」
完全に体を入らせようとした直後、後ろから衝撃が走り、同時に体が崩れる。
ドシャア!!、という音と同時に完全に体が倒れ、背中に重みを感じる。
「・・・いってて・・・。」
「だ・・・大丈夫クマ・・・?」
「あっと・・・、鳴上?平気?」
後ろから聞こえてくる声・・・・花村陽介。
彼は鳴上を巻き込む形で、こちらに来たのだ。
こうなるのはわかっていたのに・・・・!!
悠は自分の考えの甘さに自分を殴りたくなるような衝動に駆られた。
「悠ー?・・・怒ってる?」
(・・・とりあえず、今やるべき事は・・・・)
「悠ー?悠君?悠ちゃーーーー、
うおっっ!?」
悠は起き上がると同時に花村の胸ぐらを掴み、出入り口であろうテレビに押し込む。
「ぬおぁ!?
ちょっ、待て、待って!」
対する花村はそうはさせんとばかりに、必死で抵抗する。
「ふ、2人とも・・・、ケンカはダメクマよ。あのぅ・・・。」
クマの控えめな仲裁も虚しく、2人は揉み合いを続ける。
「な、鳴上!やめろって!無表情な分こえーよお前!」
「何故来た。あれほど忠告したはずだが。」
「それは分かってる!だけど、この目でちゃんと確かめなくちゃ!」
「その代償に、命と未来を賭けると?
・・・帰れ、今すぐ。」
「イーーヤーーだーーー!!」
「2人もいらないと言ったはずだ。
・・・お前がココに来る必要はない。」
「絶対戻らない!もう決めたんだ!!」
「・・・なんなら、力ずくでもお前を戻すが?」
「へっ、だったらこっちも力ずくで抵抗してやる。
覚悟しろよ?お前が諦めるまで、付きあうぜ?」
「・・・・・っ、」
揉み合いの結果、悠の腕の力が緩み、離れた。
ハアッ、と分かりやすく溜息を吐いた。
「・・・意外と、強情だな。
ここまでくると、逆に感心する。」
「お?そう思うか?俺、結構ブレない方なんだぜ?」
「褒めてない。」
もう一つ、溜息を吐く。
「花村。」
「ん?」
「・・・絶対無理をしない事。単独行動はしない。危なくなったら、逃げる事。」
花村はポカンとした顔になるが、やがて笑顔に変わる。
「・・・守れるな?」
「ああ!ありがとな!」
「・・・話しても、いいクマか?」
話がまとまった所で、放置されていたクマが話をしたいとばかりに悠の傍に近寄ってきた。
「仲直り、したクマ?」
「一応。」
「そっか。
・・・ところで、クマに聞きたい事って何クマ?」
「ん?ああ・・・、そうだった。」
花村の事で目的を忘れかけていた。悠は本題に入る。
「クマ、この間俺達以外にも人が来たって言ってたよな?
・・・それは間違いないのか?」
「そう言ってるクマ。」
「なるほど。・・・花村、データはあるか?」
「え?・・・あ、そうか!」
花村は話を振られ戸惑っていたが、すぐに察して自分のケータイを操作する。
そして、ケータイの画面に映っている小西早紀の写真を見せた。
「あ!この娘クマ!」
「・・・!」
「何!?」
(これでハッキリした。
小西早紀はココに来ていた。なら、山野アナも同様に・・・?)
「ホントか!?ココに来た後どうしてたんだ!?」
「ええと・・・、クマにもよく分からんクマ。
ただ・・・あの娘の気配、途中で消えちゃったクマ。」
「気配?」
「・・・クマ、最後に気配が消えたという所に案内してくれないか?」
「何でクマ?・・・ユーとヨースケは、あの娘と知り合いクマ?」
「・・・ああ。俺らは知りたくてココに来たんだ。」
花村は苦い顔でクマに答えた。
悠はその顔を見て、苦しい、という単語が頭に浮かんだ。
クマも花村の様子に何かを察したのか、悠達を案内した。
「何だココ・・・、町の商店街にソックリじゃねーか・・・。」
クマに連れられて来た先は、町の商店街と酷使していた。
最初は霧でよく見えなかったが、クマに渡されたメガネでクッキリと見えていた。
クマによるとこの場所は最近出現したらしく、この世界は『ココにいる者』にとっての現実らしい。
よく分からなかったが、先へ進もうとした時。
『ーーージュネスなんて、潰れればいいのに・・・。』
「ーーーーーーなっ!!」
急に振ってきた声に、花村が反応した。
『ーーージュネスのせいで・・・。』
『そういえば小西さんちの早紀ちゃん、ジュネスでバイトしてるんですってよ。』
『まあ・・・、お家が大変だって時に・・・ねぇ?』
声からして、恐らく女性。それも1人や2人ではない。
辺りを見回しても、悠達以外誰もいない。
こうしてる間にも、声はジュネスと小西早紀を批評していく。
「な、んだよ・・・コレ・・・。
ーーーーー!おいクマ!ココは・・・ココにいる者にとっての現実だとか言ってたよな!?
それって・・・、ココに迷いこんだ先輩にとっても現実って事なのか・・・!?」
花村が声にうろたえるも、すぐにクマに聞き出す。
「クマは・・・こっちの事しか分からない。
けど、ココはそういう世界クマ。偽りなんてないクマ。」
「じゃあ・・・、先輩もこの声を・・・。」
「・・・花村。あれ・・・。」
悠が指差した先は・・・小さな店。その店には『コニシ酒店』と書かれている。
「・・・先輩・・・・。」
店の中に入れば、最低限の明かりしかない薄暗い空間。
ざっと見てみるが、人の気配はまるでなく、酒類が積まれているだけだった。
『何度言ったら分かるんだ!早紀っ!!』
「これ・・・、親父さんの声か・・・!?」
今度は男の怒鳴り声が聞こえる。
恐らく、小西早紀の父親だろうか。
父親は、娘がジュネスでバイトをしてた事に反対していた。
父親の怒鳴り声は、次々に娘とジュネスを批判していく。
その様子に事情を知らなかったのか、花村は戸惑っていく。
「これ・・・。」
はと花村は足元に残っていた1枚の写真を拾った。
写真には、小西早紀と花村が映っている。
『・・・ずっと・・・・、ずっと言えなかった・・・・・。』
「この声・・・・、先輩!?」
突如聞こえてきた小西早紀の声。
こればかりはそれまで静観していた悠も辺りを見回した。
当然、既に死んでいる彼女の姿は見えない。
『私・・・、ずっと花ちゃんの事・・・。』
「え・・・・・?」
『ウザいと思ってた・・・・。』
「・・・・・・、え?」
小西早紀の、拒絶。
悠は思わず息を飲んだ。
目の前のクラスメートが、想い人だった女性にハッキリと拒絶されたのだ。
花村も、信じたくないという顔をしていた。
『ジュネスの息子だから仲良くしてやっただけなのに・・・。
勝手に勘違いして、勝手に盛り上がって・・・・・ホントウザい。』
小西早紀の声に、呆れの感情が混じってきた。
花村は次第に体を震わせてきた。
『ジュネスだって・・・どうたっていい・・・・。
あんなののせいで潰れそうなウチの店も、怒鳴る親も、好き勝手言うしかできない近所の人も・・・・・。』
写真の端に切れ目が浮かんできた。
切れ目は次第に写真全体に広がっていく。
『全部・・・全部、なくなってしまえばいい・・・・!!』
その一言を最後に、写真は切れ目に沿うように切り離されていった。
花村の手には、もう写真はない。
「ウ・・・・ソだろ・・・?こんなのさ・・・・っ!」
花村の、震えた声。写真を持っていた手も、震えていく。
「先輩は・・・・、・・・・そんな人じゃないだろ!!!」
室内に、花村の悲痛な叫び声が響く。
あまりの様子に悠は何も言えず、クマも悲しそうに俯いていた。
『・・・悲しいなあ・・・、可哀そうだなあ・・・・。』
「え・・・!?」
突如聞こえてきた、声。
3人共聞こえてきた方へ振り向く。
暗闇の先に気配を感じる。誰かいるようだ。
「ーーーー!?」
「なっ・・・!?」
「ク、クマ・・・・!?」
目の前の人物に、花村とクマは信じられないような目で驚く。
無表情だった悠も、目を見開きその人物を凝視した。
『好きだった人に振られて、ここまで来た結果がコレか・・・。
・・・惨めだよなあ、「俺」・・・!!』
目の前の人物は・・・
他でもない、『花村陽介』だったのだから。
『影と目覚め』、ようやく完成しました。
散々待たせた挙句、予告通りに書けてません。スイマセン。
今後、できるだけ予告通りに更新していけたらいいです(←断言しろよ)。
『次回予告』
突如現れたもう一人の花村陽介。
もう一人の花村陽介の言葉に、花村は・・・。
「お前なんか・・・俺じゃない!!」
「ああそうさ!俺は俺じゃない!お前なんかじゃない!!」
もう一人の花村陽介は、異形へと姿を変え、暴走する。
絶体絶命の悠。そんな時、己を呼ぶ声が・・・・。
『汝、今こそ双眸見開きて・・・・。今こそ・・・発せよ・・・!』
「・・・ペ、ル、ソ、ナ・・・!」
次回、『ペルソナ、覚醒』。お楽しみに!