ペルソナ4~真実を追う者~ (ナースィサス)
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出会いと別れ、そして決意
前回のあらすじ。
テレビの画面に手を突っ込んでみたら、陽介と里中と一緒に見知らぬ世界に落ちた。
「・・・・。」
「鳴上?どうした?」
「・・・・いや。」
花村に聞かれてすぐこう返事を返して先に進む。
悠一人は、2人の様子よりもある事が気になっていた。それは、
(・・・つけられてる、な。)
後ろから視線を感じるのだ。調べる事になってからずっと。
2人に知らせるべきか、と考えたが、やめた。
恐らく自分達に何もしてこない理由があるとすれは、考えられるのは2つ。
襲うことができないのか、最初からその気がないか、と言う事だ。
もちろん他にも理由があるのだろうが、視線を感じるだけで殺気などは全く感じない。
もしこの2つの推測を基準に考えたら、恐らく後者だろう。
それに、もし不用意にこの事を伝えて2人がまたパニックになったら、振り出しに戻るのは目に見えてる。
今の所危険性もなさそうだから、と理由に2人には黙って先を進んだ。
程なくして、霧に包まれたマンションのような建物が見つかり、試しにと進む事になった。
階段をいくつか登って、通路の突き当たりに奇妙な入口に戸惑いながらも、入って見る事にした。
が、悠達はその先の光景に息を飲んだ。
「え・・・、なに、ここ・・・。」
部屋の壁には何枚ものポスターが貼られており、どれも顔の部分が破り取られていた。
天井には輪っかに吊るされた赤いスカーフと椅子。
よく見ると所々に赤い染みーーー血がついていた。
誰の血なのかは・・・・考えないようにした。
はっきりいって、気味が悪い。
ーーーーー我は汝・・・汝は、我・・・。
(ーーーー!また、か・・・!)
頭に響いてくる、あの時と同じ声。
昨日と同じように、頭がくらくらする・・・。
「これ・・・ポスター・・・?
顔んトコ切り取られてるって・・・どんだけ恨まれてんの・・・?」
「この椅子とロープ・・・明らかにマズイ位置だよな・・・。」
2人はこの部屋の異質さに声を震わせながらも、感想を漏らしている。
(2人には、聞こえてない・・・?なんで俺だけ・・・!)
ーーーーー汝の目覚め、未だ時が満ちず。目覚めよ、我が主よ・・・。
目覚め・・・?我が、主・・・?
(誰なんだ・・・、お前は・・・!)
「のわあああああああああ!!」
「!?」
「何!?何~!?」
花村がいきなり悲鳴を上げた。
突然の事で、思わず意識が浮上する。
「ダ・・・ダメだ・・・。
・・・俺のボーコーは限界だ!!」
「・・・え、」
「ちょ・・・!?ここでやんの!?勘弁してよ!!」
あろうも事が、花村は部屋の隅の方の壁に向かい合って立って、ズボンのチャックを下げ始めた。
女子がいるにも関わらず。
「ああああ~出ねええぇぇ!見られてっと出ねーだろ!?
ボーコー炎になったらお前らのせいだかんな!!」
「ちょっ、あたしらが悪いのこれ!?」
・・・花村、いくら自然現象だからってせめて違う所でやってくれ・・・。
というより、もっと恥じらいを持て、花村。
「ちょっとマジで勘弁してよ花村!言われなくたって出てーーー、
・・・うわああぁぁ~~~~~!!」
ーーードカァッ!!
「グエーーーーーーーーッ!!」
「!?」
「な、何だぁ!?」
部屋を出ようとした里中の悲鳴と同時に、鈍い音と別の悲鳴が聞こえた。
悠と花村は里中の方へ駆け寄る。
右足を少し上げて構えている里中、その少し先には・・・
(・・・着ぐるみ・・・?)
サルとパンダとクマを合わせたような樽型の着ぐるみが倒れていた。
・・・よく見ると、顔の所に靴跡がついている。
里中に蹴られたのは明白だった。
「・・・何するクマァーーーー!」
一瞬の沈黙。そして、
「しゃ・・・、喋った!?」
「思いっきしグェとか言ってたような気がするけどな・・・。」
着ぐるみが喋れるという事実にそれぞれ反応する。
当の着ぐるみは妙な奇声を上げて手足をバタバタと振っている。
・・・もしかして、起きれないのか?
未だに転がっている着ぐるみに近づいてみる。
「お、おい、鳴上!?寄せって!」
「そ、そうだよ!何かしてきたらどうすんの!?」
「・・・いや、多分大丈夫。」
止める2人を余所に、手を差し伸べてみる。
「ふぇ~~、ありがとクマ~。」
着ぐるみは悠の行動の意味に気づいたのか、素直に助けを借りて起き上がった。
「・・・顔、大丈夫か?」
「大丈夫じゃないクマ!」
着ぐるみは悠の問いに哀れっぽい声で反論した。
「キミ達を助けようと思って来たのに、いきなり蹴られるなんて・・・・あんまりクマァー!
オヨヨヨヨヨ・・・・・・。」
一気に喋って着ぐるみは悠に抱きついてきた。少し苦しい。
ああ、やはり痛かったんだな。スゴい音出てたし。
とにかく、この着ぐるみを落ち着かせるのが先だ。
「・・・里中。」
状況を先に把握したらしい花村が目で里中を責める。
「うっ・・・。ご・・・ごめん、いきなり蹴って・・・。」
「・・・分かってくれたんなら、もういいクマ。」
着ぐるみは少し目を潤ませながらも、顔を上げる。
どうやら里中の謝罪と悠の撫でられた手に安心したようだ。
「・・・キミ達は、誰クマ?」
着ぐるみが首を傾げて悠達を見上げてくる。
「・・・俺は、鳴上悠。
ヘッドホンの方が花村陽介で、緑の方が里中千枝。」
「ちょっ、俺ヘッドホン!?」
「緑って・・・!あたし、色扱い!?」
悠の雑な紹介に2人はそれはないだろうと意見をあげる。
しかし、着ぐるみの方はそれで納得したのか、3人の名前を復唱する。
「・・・キミの名前は?」
「・・・・クマ。」
「まんまじゃん・・・。」
「まんまだな、オイ・・・。」
着ぐるみ、「クマ」のひねりのない名前に花村と里中は同時に呟いた。
「それよりもキミ達、一体どうやってココに来たクマ!?」
「・・・テレビから。」
我ながらバカバカしい答えだと思いながらも、返す。
だがクマはそんな様子に気にすることなく、
「・・・もしかして、帰り道がわからないクマ?」
「・・・え?」
クマの問いに花村が声を出し、里中も固まる。
「・・・どうして、そう思う?」
悠はできるだけ優しく聞く。
「キミ達さっきからあっち行ったりこっち行ったりしてるから、そう思ったクマ。」
「・・・ああ、後ろの視線はお前か。」
「へ!?ちょっ、視線つった!?俺初耳なんですけど!?」
「あたしらをつけてたって事!?」
悠ののんびりとした呟きに2人はぎょっとする。
「・・・どうして、出てこなかったの?」
「・・・こないだ人が来た時、声を掛けてみたら逃げてっちゃったんだクマ。
だから、キミ達も逃げちゃうかもって思ったんだクマ。」
クマが寂しげな声色でポツリ、と答える。
・・・納得。
確かに見知らぬ空間で知らない着ぐるみが話かけてきたら、普通逃げるだろう。
・・・ん?
「ちょっと待て。俺ら以外にも、誰か来たのか?」
悠の疑問に現れるかのように花村がクマに聞いた。
「最近人が来るようになったクマ。団体さんはキミ達が初めてだクマ。」
(・・・人が、来る?・・・こんな所に?)
「それよりも、キミ達は早くアッチに帰るクマ!」
突然クマが声を荒げた。
「帰るって・・・、その帰り方が分かんねーんだよ!」
「そうよ!いきなり出てきて勝手な事言わないでよ!何がどーなってんのよ!?」
「そ・・・そんなに怒鳴らないでよぅ・・・。」
クマが再び悠に抱きついてきた。切れた2人に怖くなったらしい。
どうやらクマは精神年齢が幼いようだ。
フゥ、と一息吐いて、クマの頭を撫でる。
「2人とも、落ち着け。
・・・クマ、お前が出してくれるのか?」
「おほー!
そうクマ!ユーは分かってくれるクマね!!」
「・・・え?マジで?」
花村を始め、里中も再び落ち着く。
ここじゃ危ないから、と悠達はさっきのスタジオに戻る事になった。
「とーちゃく、クマ。」
クマがスタジオに着くなり、短い脚をトントン、と床を数回叩く。
すると、ポン、と可愛らしい音と共に時代を感じさせるレトロなテレビが縦に3つ積まれた状態で現れた。
「うぉ!?テ、テレビ!?」
「え!?どーなってんの!?」
・・・もう驚きの声も出ない。
「さー行って行ってクマ!」
「うぉ!?ちょっ、」
クマに強引に押し込まれ、花村の悲鳴を最後に視界が白くなった。
「・・・・、戻ってきた?」
「「え!!?」」
気が付くと、ジュネスの家電コーナーに倒れていた。
「・・・・助かったぁ~~~!!」
「生きててよかった~~!」
2人は帰ってこれた感動に抱きしめあう。
が、少しして正気に返った里中が花村を蹴り飛ばし、距離を取った。
途中、ジュネスに貼られていた柊 みすずのポスターを見て、あの部屋と同じ物だと気付いたが、2人の精神の限界を訴えた事で、中断された。
そしてそのまま、悠達はそれぞれ帰宅した。
その日の夜、叔父から小西 早紀の事を聞かれ、何故と聞いた所、最近姿を消したらしい。
それを聞いて何故だが分からなかったが、柄にもなく妙な胸騒ぎがした。
そして・・・・・その不安は、現実となる。
翌日、小西 早紀は・・・山野アナ同様、変死体となって発見された。
4月14日。
全校集会で小西 早紀の事が発表された後、このまま下校する事になった。
雨の中、帰ろうとする途中、生徒達の小西 早紀の話題が聞こえる。。
「何よ、あの人達・・・。先輩と同じクラスだってのに・・・。」
里中が気分を害して、先に廊下を出る。
周りのほとんどの人達は、今回の事を面白おかしく話してる。
あまりに無神経な会話に悠も帰る気になれず、屋上へ向かう。
最上階につき、ドアを開ける。
「く・・・っ、うっ・・・・。」
先客がいた。
花村だ。
いつも明るい表情を持つ花村が、泣いてる。
雨の中、傘も差さずに涙を流す花村に戸惑いを隠せない。
ふと、花村がこちらを向いた。
「・・・っ、」
「お前・・・、」
花村は一瞬驚いた顔をしたが、すぐにイラつくような顔になる。
「・・・何だよ・・・、言いたい事でもあんのか?
可哀そうな奴って・・・。」
「・・・・。」
悠は黙っている。
「・・・どうせ俺の事、可哀そうとでも思ってんだろ!?
結局想いを伝えられないまま、女々しく泣いてる奴だって!!
そう思ってんだろ!?」
黙ったままの悠に花村はそのままぶつける。
「・・・同情なんていらねぇよ!!余計なお世話だ!!
もう放っておいてーーー「放って置けない。」
悠が途中で口を挟んでくる。
初めて悠が喋った事に、花村の勢いが止まる。
「・・・放って、置けない。
・・・本気で悲しんでいるのに、放って置くなんて・・・・・、できない。」
つたないながらも、声に出す。
小西 早紀とは1度あっただけだ。
だけど、花村の小西 早紀への想いは、本物だとすぐ分かった。
愛していた人が、死ぬ。
こんな事、悲しすぎる。
本気で愛していたからこそ、悲しくて・・・悲しくて、堪らない。
そんな悲劇が起こって泣いている花村を放って置くなんて・・・・できる訳が、ない。
悠の想いが伝わったのか、花村は耐えきれなくなるように、再び涙を流した。
「・・・・ゴメン、鳴、上・・・・。
・・・ゴメン・・・・・・っ!!」
俯いたまま謝り続ける花村に、悠は傘に入れた。
そうするしか・・・・・できなかった。
俺が、もっとちゃんと励ますような事が言えたら。
もっと、この涙を止めるような事ができたら。
・・・そう思わずには、いられなかった。
「・・・・ありがとな、鳴上・・・。」
しばらく経って、落ち着いてきたらしい花村が、顔を上げた。
まだその瞳には、涙が浮かんでいる。
「・・・中に、戻ろう。
風邪を引く。」
「・・・、ん。」
なんとか花村を言い聞かせて、中へと戻る。
バックからタオルを出して、花村に渡す。
花村はサンキュ、とタオルを受け取って、ぎこちなく拭く。
気まずい沈黙が流れる。
なんて、声を掛けたらいい。
頭の中で色んな言葉が浮かぶが、どれも花村を追い詰めるように思えて、何も言えない。
「・・・なあ、鳴上。」
沈黙を破ったのは、花村だった。
悠は俯いたままの花村を見つめる。
「・・・頼む。力を貸してくれ。
・・・・どうしても、知りたいんだ。」
花村の悲痛な言葉は、雨の音にまぎれて、儚く響いた。
『次回予告』
「俺、どうしてもあっちの世界に行って確かめたいんだ!
なんで・・・先輩が殺されなきゃなんなかったのか・・・!」
愛していた人の死の真相を、確かめたいと言う陽介。
「・・・相手は2人も人を殺した殺人者だ。
・・・復讐する前に、二の舞になるだけだ。」
花村の懇願に、戸惑いながらも止める悠。
そして何の運命のいたずらか、悠と陽介は再びテレビの向こうの世界へと降りる。
そして、陽介の前に立ちふさがったのは・・・・
『俺には全部お見通しなんだよ!
だって俺は・・・お前なんだからな!』
「違う!
お前なんて・・・・、俺じゃない!!!」
ーーーーー汝、今こそ目覚めの時・・・・。
次回、『影と目覚め』、お楽しみに!