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鳥インフル感染確認1か月 対策は

4月30日 21時25分

稲垣雄也記者,山田真里記者

中国でH7N9型の鳥インフルエンザのヒトへの感染が初めて確認されてから30日で1か月。これまでに128人の感染が確認され、24人が死亡しました。
中国政府の対応や分かってきたウイルスの特徴などについて、科学文化部の稲垣雄也記者と上海支局の山田真里記者が解説します。

感染はどこまで広がっているか

中国でH7N9型の鳥インフルエンザのヒトへの感染が確認された地域は、日本時間の30日正午までに、上海と北京の2つの市と8つの省に広がっています。最初に感染が確認された上海や、隣接する浙江省などで感染の確認が相次ぎましたが、先週以降、沿海部の福建省や内陸部の湖南省など、新たに確認される地域が増えています。
中国では127人の感染が確認されこのうち24人が死亡しています。また、台湾でも1人の感染が確認されています。亡くなった24人の半数が65歳以上と高齢者で重症の患者が多くなっています。

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家きん類から広がったか

中国の衛生当局が感染した人を調査したところ、鳥などの生きた動物との接触歴が確認できた77人のうち、59人はニワトリなどとの接触があったということです。
また中国の研究機関が感染した人と市場の家きん類、それぞれから採取したウイルスを比較したところ、遺伝子の配列が99%以上同じだったということで、中国当局は感染源は家きん類の可能性が高いとの見方を強めています。

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ヒトに感染しやすいウイルス

今回のウイルスには、感染を広げやすい特徴があります。これまで見つかっている、毒性の強い鳥インフルエンザは、感染した鳥がすぐに死んでしまうため感染が分かりやすく、周りの鳥を処分をすることで、結果的にヒトへの感染を抑えることができました。
しかし今回のH7N9型のウイルスは、鳥に対する毒性は弱いことが分かっています。このため、感染していない鳥との見分けが付きにくく、対応を難しくしています。
また遺伝子の分析から、ウイルスはヒトの鼻やのどなどに感染して増えやすくなっているとみられています。
インフルエンザに詳しい東北大学の押谷仁教授はこの1か月の感染の広がりについて、「鳥からヒトへの感染という観点からみると、かなりヒトへの感染がしやすいウイルスと言える」として、これまでの鳥インフルエンザに比べ、注意が必要だと指摘します。

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ワクチンは効くのか

H7N9型の鳥インフルエンザのワクチンはまだありませんが、国立感染症研究所は、タミフルやリレンザなど現在国内で処方されている4種類の抗ウイルス薬はいずれも効果がありそうだとしています。

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大型連休で、海外との人の行き来が多いこの時期、国際線のある全国34の空港では入国する人たちの体温をチェックし、水際でウイルスの侵入を食い止めようとしています。今回の鳥インフルエンザの日本への影響について押谷教授は、「かなりの人が日本から中国に出かけていくので、日本でも感染者が見つかる可能性は十分考えないといけない。中国では、生きた鳥に接触しないよう注意してほしい。現時点ではヒトからヒトに感染するウイルスではないので、過度に恐れず冷静に行動することが必要だ」と話しています。
一方、厚生労働省は、中国から帰国した人などに、10日以内に38度以上の熱が出た場合は、保健所に連絡したうえで、医療機関を受診するよう求めています。

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警戒強める中国

中国政府は、H7N9型のウイルスがヒトからヒトに感染していることを示す明確な証拠は依然ないとしていますが、李克強首相は28日、鳥インフルエンザについて関係部門を集めた会議で「われわれは全く新しいウイルスに対抗しており、起こりうる新たな状況への対応策を持つべきだ」と話すなど、感染の急拡大やヒトからヒトへの感染に警戒を強めています。