名古屋でも脱原発・関電絡みで弾圧の気配? 当事者に聞く

全国各地で、脱原発関連の行動が行われています。

各地で、いろいろなアクションが行われていますが、
大飯原発を再稼動した関西電力前で毎週金曜日に行われる
「金曜行動」は全国(の関電支社)で行われており、
名古屋でも行われるようになっています。

名古屋での「弾圧騒動」の舞台となった関西電力名古屋支社の入ったビル(東海関電ビルディング)。株主として会社を見にきたら被害届けを出されたというひどい話が発生した。

名古屋での「弾圧騒動」の舞台となった関西電力名古屋支社の入ったビル(東海関電ビルディング)。株主として会社を見にきたら被害届けを出されたというひどい話が発生した。

一方、脱原発関連のアクションにたいして、警察が過剰に警備したり、
微罪、あるいはデッチ上げに近い罪状で関係者を逮捕をするという、
「弾圧」とよばれる事件も見られるようになって来ました。

街頭アクションにたいして過剰な「弾圧」をする警察は、
一般的な刑事犯を取り扱う部署とは違う警察(公安警察…公安委員会とはまったく違うもの)
が行っていることがほとんどです。
また公安警察は、普通の警察と違い、運動を監視する目的で、かかわっている人の情報を集めたりすることを仕事にしているスパイのような部分があります。

典型的な「公安による弾圧」の例:
「麻生さんのおうちを見にいこう」のどかな企画に警察暴力2008/10/27
 http://janjan.voicejapan.org/living/0810/0810270277/1.php
http://blog.livedoor.jp/esaman/archives/51471487.html

名古屋では、まだ脱原発関連での逮捕者は出ていないようですが、
現在「公安警察による弾圧」の可能性が濃厚な事件が進行しています。

その「事件」は、おおまかに言うと…

まだ名古屋では関電前行動が本格化していなかった当時(5月)、
関電の株を所有している人が、名古屋の関電支社も入っているビル(誰でも入れるビル)に、
関電が名古屋でどんな仕事をしているのかを見学したいという理由で入ってみて、時間外で閉まっていたのでトイレを借りて帰ってきた。
そのことで半年近くたった10月の終わりになって警察が呼び出しが何度もかかり、関係のない知人まで聞き込みをされ、不当な取調べを受けている、というものです

この事件の概要は12月7日発刊の週間金曜日923号「金曜アンテナ」にも掲載されています。
まだ逮捕者が出るような事態ではないものの、誰でも入れるようなビルに、
しかも株主が入ったところ警察から身辺を調べられて出頭を要請されるとは、まったく不当な話です。

真相をより追究すべく、この事件の当該として、不当な警察取調べをされた方に、直接話を聞きました。

関電行動が本格化して以降、関電東海ビルの前にはこのような立て看板が常時設置されている。

関電行動が本格化して以降、関電東海ビルの前にはこのような立て看板が常時設置されている。


●名古屋・関電弾圧の当事者、木村穣さんの話。

筆者:
木村さんはなにをしている人ですか?
木村穣(以下、J):私は、特になにもしていない、ただの一般人です。契約社員として働いていて、現在、37才になります。
以前は、趣味で映像関連の勉強をしていて、自主映像のイベントにかかわったり、映画会社の下請けの仕事などもしていました。
最近は、広告会社で着ぐるみを着て子供たちに接する火災予防キャンペーンの仕事をしていますが、子供たちを喜ばせるのは実に楽しいです。

名古屋の関電に株主として訪問したことを理由に、警察に呼び出された木村穣氏。少し疲れた感じで話をしてくれた。

名古屋の関電に株主として訪問したことを理由に、警察に呼び出された木村穣氏。少し疲れた感じで話をしてくれた。

筆者:この事件について記者会見を行ったそうですが、どうでしたか?
J:記者会見は、11月12日の15時半に、名古屋地裁地下にある司法記者クラブで行いました。
呼びかけは、この事件を担当してくれている弁護団の中谷雄二弁護士らが中心的に行ってくれました。
記者会見当日は、記者クラブに加盟していない赤旗などのメディア以外は、大手メディアの記者は一通り出席していました。
個人的には熱心に聞いてくれた記者もいたのですが、残念ながら記事にはなりませんでした。

筆者:今回、週刊金曜日にはどのような経緯で掲載されたのですか?
J:記事を執筆した有名なライターの竹内さんが別の経済誌の取材でたまたま名古屋に来ていたので、この話を聞きつけて書いてくれました。
竹内さんは警察での取調べにも同行して取材をしてくれました。
週刊金曜日の記事の写真はその際の写真です。先頭が「浜岡原発差し止め訴訟」に取り組む北村弁護士で、その後ろが私です。

筆者:事実は週間金曜日の記事のとおりですか?
J:そのとおりです。ただし一箇所だけ、微妙に違う部分があります。
週刊金曜日の記事では私か関電支社を見に行ったことが「興味本位」ということになっていますが、実際にはそうではなくて、
関電の株主として、関西電力がこの東海地域でどんな業務をしているのかにたいへん関心があったので、ぜひ業務の現場の見学をさせてほしい、というのが正確な理由です。

筆者:週金の記事を読んでいない人もいるので、事件の大まかな流れを教えてください。
まずは問題とされている当日、関電支社で起こったことを説明してください。
J:5月25日、私は、東電福島第一原発の事故が起こる以前から、関電の株を長~く所有していたので、近くに寄ったついでに、関電が名古屋でどんな仕事をしているのかが気になり、会社訪問してみることにしました。
その時点では、関電前の行動はあまり盛んではなく、抗議に来ている人々もまばらでした。
私は、そのときは抗議に来たのではなく、株主として関電の業務に関心があって、東海支社の受付に行こうとしたのです。関電東海支社の入っているビルは、関電不動産という関連会社が管理しているオフィスビルですが、関電以外にも、テナントとして法律事務所や建設・設計会社、コンビニなども入っていて、一般に自由に立ち入ることのできるビルです。
そのビルに入ろうとしたところ、ビルのガードマンが「抗議に来ている人は入れるなと言われている」といって止めようとしたので、
私は抗議に来たのではなくて、株主であり、電力会社の顧客として、関電の業務を見に来ただけだと説明すると、警備員は迷ったようですが引き下がって入場を許可しました。関電前抗議によく参加している知人も、私の行動を心配したそうで、後から同行しました。
そのままエレベーターで関電支社のある階にいったのですが、業務時間が過ぎていてしまっていたので、トイレを借りて帰りました。

筆者:それだけの話ですか?
J:それだけです。もともと誰でも入場できるオフィスビルに入っただけです。
取調べの際の警察のストーリーでは、私が「ガードマンの制止を振り切った」ことになっていましたが、
ガードマンは、私が株主として見に来たことを伝えると、納得して制止はせず、引き下がったのです。
また、私たちがエレベーターが来るのを待っている間も、とくに何もせず見ていただけなので「制止」する意思もなかったのではないかと思います。
警察では取り調べの際に「監視カメラの映像と説明が食い違うところがある」と言われましたが、その映像のどこが食い違っているのか実際に見せてほしいと要望しましたが、「捜査の秘密上」見せられない、と言うだけでした。

筆者:それが5月の話で、しばらくなにもなく10月の終わりに突然警察から呼び出しですか?
J:そのとおりです。10月29日の朝、突然関電支社ビルの所轄の東署から電話がありました。私が平日の日中の仕事中にも関わらず、電話は1時間おきに5、6時間何度もかかり続けました。
それだけでなく、自宅に数人の警察官がおしかけてきたり、文書で呼び出し文書を作ってポストに投函していったりと、しつこく呼び出しが続きました。
私としては、株主として誰でも入れるオフィスビルに訪問しただけで建造物侵入の嫌疑がかかるとは疑問なので、弁護士に相談したところ、
中谷弁護士が動いてくれて、東署に対して、弾圧目的の不当な捜査だ、と抗議文をFAXしたり(11月2日)、内容証明郵便を送ったりしてくれました。

筆者:ヘリクツに近い容疑ですね。そのあとどうなりましたか?
J:弁護団からの申し入れをしても、文書での呼び出しが行われたので、
弁護士の意見で、東警察署に弁護人に同行してもらって、仕事を一日休んで取り調べに応じることにしました。

筆者:取調べはどうでしたか?
J:初めての経験でしたが、取調べは大変つらかったです。取調べに弁護人が立会いを求め、週刊誌記者も写真を撮らせることを求めたのですが、
「署の規定でできないことになっている」との理由で断られました。その規定に、もちろん法的根拠はありません。
取調室は署の刑事課の3階にあり、厳重に鍵のかかった廊下の奥にありました。
第一の扉を抜けた向こう側に3~4室ほどの取調室があり、取調べ担当警察官によって、入退室のたびに鍵の施錠が行われます。
それぞれの取調室は大変狭く、完全な密室で、4畳ほどの部屋に机があり、窓がひとつだけでした。

筆者:今回の取調べは任意ですよね?
J:強制的な取調べではなく、任意の取り調べです。
実際に取調室では、扉の鍵をしめられ、取調官が机をはさんでドアを背にして二人ですわり、
立ちふさがるようになっているので、一般人がとても途中で任意で帰れるような状態ではありませんでした。
同行した弁護士と記者が一階で待機しているということもあってか、
黙秘権があることや、あくまでも任意の取調べであることの告知は、丁寧になされた印象があります。
作成された供述調書の気に入らない部分についても、何度も修正を求めたところ応じてくれました。

筆者:具体的に、何が怖かったですか?
J:身体を拘束されているわけではないので、それは怖くないのですが、
取調官が怖く、また密室でのシチュエーションが怖かったです。
弁護人や記者が待機していない一般の被疑者の場合は、どんな対応をされるのか、権利があると知っていても、取調官が高圧的に話をしたら調書の修正箇所などを言い出せるだろうか、と心配になりました。
取調べの時間は、弁護人らが当初から事前に申し入れたとおり、きっちり一時間でした。
取調べは私が午前、もう一人の同行者が午後でした。
その間、弁護人と記者か一階でずっと待機してくれていました。
また、弁護団のみなさんが「なにか問題があったら国賠訴訟を提訴する」ということを警察に事前に強く通知していたので、それも効いていたのだろうと思います。
 

関電東海ビルの前では毎週金曜日、原発再稼動反対のアクションが行われている。

関電東海ビルの前では毎週金曜日、原発再稼動反対のアクションが行われている。

筆者:取調べに応じた後、警察はまだしつこく電話してきますか?
J:現在は、そのような動きはありません。
私は2回取調べがあったのですが、弁護団のみなさんが強く抗議してくれたこともあってか、
一回目の取調べでは「監視カメラの映像と供述内容が違う」などと言っていた警察も、もう取調べすることがないのか、事件を検察官に送るようでした。たいへん実力のある弁護団もついていますし、おそらく不起訴処分になるのではないかと思います。

筆者:ジョーさんは株主とのことですが、株主総会には出たりしたのですか?
J:今年の6月23日に開催された総会に出席しました。私も会社の法的な実質的所有者である株主の権利として、経営に参与したいので参加しました。東電の株主総会のように、原発再稼動問題で荒れるか、と予測して参加したのですが、残念ながら原発の問題について、十分な議論はなされませんでした。
関電株主総会の全体像は、大手マスメディアは結論しか報道しませんが、IWJ大阪などの独立系メディアが、頑張って全体像をインターネットでユーストリーム中継していましたので、心強く感じました。
しかし、議長である八木誠関電社長が、3分で個々の株主発言をすべて中断してしまい、現体制に批判的、提案的な株主提案は、ことごとく否決される、ということの繰り返しで、総会はあっけなく終わってしまいました。

筆者:ジョーさんは会社の実態にも関心を持つ関電のまじめな株主ですね。株主として言いたいことはないですか?
J:祖父からゆずり受けた株ですが、東電の原発事故以前は100万円以上していたものが、現在では40万円ほどです。私の大切な資産も、原発のせいで激減してしまったので悲しいです。
経済的・経営的な観点からしても、世の中の関電に対する評価が、この株価の下落に現れていると思います。
大飯原発を再稼動して世界の人々に大きな迷惑をかけている関電から配当金を受け取っているものの一人として、
関電を変えていくために、これからも株主として積極的に経営に参与していきたいと思っています。

◇◇◇

名古屋で発生した「警察の弾圧」は、
実態としては、株主が誰でも入れるビルに入っている会社を見に行ったら、
住居侵入で被害届けを出されて警察から呼び出しをされた、という、実に無理のある話しだった、ということのようでした。

会社訪問に来た株主に住居侵入容疑で被害届けを出す関電不動産も、失礼な企業といえますが、
関電不動産が半年近くたって、自主的にそんなことをするとも考えにくいので、
この背景には、なにがしかの理由をつけて脱原発運動に捜査の手を伸ばしたい公安警察の策動がある、と考えるのが普通でしょう。
そのような不当なことをさせないためにも、今後の警察の動向に皆で大いに注目する必要があると思います。

近々、弁護士や木村さんらが中心となって、弾圧に対する救援会を立ち上げたい、とのことでした。
皆様のよりいっそうの注目をお願いします。

12月7日発刊の週間金曜日923号「金曜アンテナ」

12月7日発刊の週間金曜日923号「金曜アンテナ」

関連リンク:
関電支社を訪問した市民が「建造物侵入」容疑「運動つぶし」が目的か
http://blog.livedoor.jp/esaman/archives/51889281.html

脱原発運動を弾圧する公安警察に対して、抗議する(街の弁護士日記 守山法律事務所)
http://moriyama-law.cocolog-nifty.com/machiben/2012/11/post-4291.html

Esaman記者のプロフィール

インディーズ系メーデー中部。アースデイあいち・LOVE&ビンボー作戦本部。反貧困名古屋。生存組合。などで活動しています。
Chisitomare_Esamanihi

アイヌにまつわるQ&A
LOVE&ビンボー作戦本部
生存助け合いネットワーク(生存組合)
Twitter??
}{}{ Esa Tube }{}{
CNN_Rainbow市民放送局

「良い記事」と思った!
Loading ... Loading ...

【ご意見板】一件の書き込みがあります

  1. s.sakurai    2012年 12月 19日 21:08

    リベラル勢力が壊滅的な打撃を受け、ウルトラタカ派政権が「改憲だ、改憲だ。」と叫ぶ姿は本当に背筋が凍る。タカ派政権成立が確実と見るや昨年の未曾有の原発事故に何の反省もなく電機連合会の八木会長が「原発セロ見直しを」臆面もなく自民党に釘を刺す始末。原発ゼロを撤回し原発をどんどん再稼働させろと恫喝しているようなもの。反原発運動が公然と弾圧されるのではないか?

【ご意見板】書き込みフォーム   必ず「利用規定」をお読みください。



▲このページの上へ戻る