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阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

佐藤栄佐久・福島県元知事の冤罪

2012年10月18日

最高裁の上告棄却で、二審の有罪判決が確定した。収賄罪の根底が崩れているのに、検察の控訴と被告の控訴を両方棄却する形で、国家権力のメンツを守ろうとした最高裁第一小法廷の裁判長、桜井龍子判事をFACTAは断罪する。

桜井判事の判断は歴史的誤審であり、検察の国策捜査と同罪です。桜井判事は法曹にいる資格がない。地の果てまで、FACTAはこの裁判官を追跡します。

この事件についてはFACTAが他のメディアに先駆けて問題性を訴えてきた。最高裁決定を受けて、佐藤氏からこのようなメッセージが寄せられたので紹介しよう。

最高裁判所決定についてのコメント

平成24年10月16日
佐藤栄佐久

 本日10月16日、最高裁判所は、私、佐藤栄佐久の上告を棄却する決定を下しました。

 私は、この裁判で問われている収賄罪について無実であり、最高裁の決定には到底、承服できません。真実から目を背けるこの国の司法に対して、大変な失望を感じています。

 そもそも、この事件は「ない」ものを「ある」とでっち上げた、砂上の楼閣でした。

 福島県の「木戸ダム」建設工事入札で、私と弟が共謀して、私が県の土木部長に対してゼネコンを指定する「天の声」を発する一方、そのゼネコンが、私の弟が経営する会社の土地を下請のサブコンを使って、市価よりも高い値段で買わせることで賄賂にしたというのが、東京地検特捜部の見立てでした。
 これにより、私と弟は収賄罪で突然逮捕され、世間から隔絶された東京拘置所の取調室で、特捜部の検事から身に覚えのない自白を迫られました。検事は、時にはどなりつけ、時にはなだめ、私から収賄の自白を取ろうとしました。
 私の支持者たちが軒並み特捜部に呼び出されて厳しい取り調べを受けている、それによって自殺未遂者も出ている。私は独房の中で悩み、そして、「自分ひとりが罪をかぶって支持者が助かるなら」と、一度は虚偽の自白をいたしました。

 しかし、私は知らなかったのです。東京地検特捜部が、あまりにも無理な接ぎ木を重ねて収賄罪の絵を描いていたことを。

 裁判が始まると、収賄罪の要件は次々に崩れていきました。私が知事室で土木部長に発したという「天の声」は、弁護団の調べで、どう考えても不可能だというアリバイが証明されました。また、「知事への賄賂のつもりで弟の会社の土地を買った」と証言したサブコン水谷建設の水谷功元会長は、「検事との取引でそう証言したが、事実は違う。知事は潔白だ」というメールを、宗像紀夫主任弁護人に送ってきています。一方で、私から天の声を聞いたという土木部長の自宅からは、出所不明の札束が2600万円以上も見つかり、事件の構図は全く違うのではないかという、大きな疑いが出て参りました。特捜部の描いた収賄罪の構図は、完全に崩れてしまったのです。

 私の弟は、東京拘置所の取調室で、担当の検事からこんなことを言われていました。

「知事は日本にとってよろしくない。いずれ抹殺する」

 今にして思えば、これが事件の本質だったのかも知れません。

 私は知事在任中、東京電力福島第一・第二原発での事故やトラブルを隠蔽する、国や電力会社の体質に、福島県210万県民の安全のため、厳しく対峙していました。国から求められていたプルサーマル実施についても、県に「エネルギー政策検討会」を設置して議論を重ね、疑義ありとして拒否をしていました。事件は、このような「攻防」を背景に起きました。

 大変残念ながら、その後プルサーマルを実施した福島第一原発3号機を含む3つの原子炉が、福島原発事故でメルトダウンを起こし、私の懸念は、思っても見ない形で現実のものとなってしまいました。私たちのかけがえのない「ふるさと福島」は汚され、いまも多くの県民が避難を余儀なくされる事態が、いまだ進行中です。苦難を余儀なくされ、不安のうちに暮らしている県民を思うとき、私の胸はひどく痛みます。

 一方、私の事件の直後に起きた郵便不正事件のフロッピーディスク証拠改竄事件の発覚によって、特捜検察の、無理なストーリーを作っての強引な捜査手法が白日の下にさらされました。フロッピー改竄事件で実刑判決を受け、服役した前田恒彦検事は、私の事件で水谷功氏を取り調べ、水谷氏に取引を持ちかけた検事その人なのです。

 当然、私の事件はすべて洗い直され、私には無罪判決が言い渡されるべきでした。

 しかし、最高裁は私と検察側双方の上告を棄却した、そう聞いています。

 確定した二審判決である東京高裁判決は、大変奇妙なものでした。私と弟の収賄を認めたにもかかわらず、追徴金はゼロ、つまり、「賄賂の金額がゼロ」と認定したのです。そして判決文では、「知事は収賄の認識すらなかった可能性」を示唆しました。ならば無罪のはずですが、特捜部の顔も立てて、「実質無罪の有罪判決」を出したのです。

 今日の決定は、こんな検察の顔色を伺ったような二審判決を、司法権の最高機関である最高裁判所が公式に認めたということなのです。当事者として、こんな不正義があってよいのかと憤ると同時に、この決定は今後の日本に間違いなく禍根を残すと心配しています。

 福島県民のみなさま。日本国民のみなさま。

 私は、弁護団とも相談しながら、今後とも再審を求めることを含めて、無罪を求める闘いを今後も続けていきます。どうか、お心を寄せていただきますようお願い申し上げます。

投稿者 阿部重夫 - 09:00| Permanent link | トラックバック (0)


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発行人 阿部重夫

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

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