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【連載】岐路に立つ憲法 識者に聞く(下)「邪道」な96条改正案~慶応大学・小林節教授

2013年5月6日

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慶応大学・小林節教授

慶応大学・小林節教授

 施行から66年を経た憲法。自民党が政権に復帰し、安倍晋三首相が憲法改正の発議要件を定めた96条の改正を目指すことを明言したことで、改憲の可能性が現実的なものになりつつある。だが、憲法改正は本当に必要なのか。「護憲派」「改憲派」「護憲的改憲派」の3人の専門家に聞いた。

   ◇

 現憲法を「すでに壊れている」とし、改正を説いてきた。かと思えば改憲を唱える第2次安倍内閣には、「そもそも憲法を論じる資格がない」とにべもない。

 下ろす刀で右を切り、返す刀で左も切る。「右も左もない。私はど真ん中」。立ち位置は「護憲的改憲派」。ただ憲法学の論客は、怒っている。

 一番の矛先は自民党の96条改正案に向かう。改憲に衆参両院議員の3分の2以上の賛成が必要とする規定を、「2分の1以上」に下げようという案だ。

 「本来憲法で拘束されるべき権力者が、改憲したくてもできないから、条件を下げてくれという発想。彼らは憲法から自由になり、さらに管理しようとしている。これは民主主義、そして人類の歴史に対する冒(ぼう)涜(とく)だ」

 自民が改憲案で示すプライバシー保護や環境権については賛成だ。その前提として96条改正を持ち出すのが、「邪道」で許せない。

 「日本の改正手続きを世界一厳しいというのは誤解だ。米国は上下両院の3分の2以上の議員の賛成、全50州の4分の3以上の批准が必要なのに、20回以上改憲している。自民案は憲法と法律の改正要件が同じになる。憲法は法律より変えづらい『硬性』があってこそ。根本を分かっていない」

 元来は改憲派だ。自衛隊は「すでに戦争の後方支援をしている」軍隊と認め、侵略戦争は放棄するが自国が不当に侵略されたら自衛はすると、憲法9条を改正すべきだと考える。

 一方で北朝鮮問題や中韓との領土問題に端を発するナショナリズムは、「低次元」とくみしない。

 「米国の占領下で作らされた押しつけ憲法だから、われわれが独自に作った明治憲法に戻れ、というのが安倍政権の主張の柱。だが明治憲法下では国民は天皇の臣民であり、決定権も人権もなかった。そんな憲法だからこそ、あんな戦争ができた」

 そんなうさんくささが自民の改正草案に漂う。「前文と24条で『家族は互いに助け合わなければならない』とあるが、めちゃくちゃ。法律が国民を縛るのに対し、憲法は国家の暴走を監視するためにある。ベクトルが真逆。国民に憲法尊重擁護義務を課すなんて、非常識。戦時中、天皇制の賛美歌として国定教科書で説明された君が代を国歌とするのも、無理がある」

 7月の参院選では自民が勝ち、日本維新の会と協力して改正要件を満たす両院の3分の2を確保するとみる。次は国民投票。だが、悲観はしていない。

 「安倍政権は憲法論議の土俵をしつらえる。国民は逃げようがない。だが、主権者たる国民が良識ある結論を出せば、明治憲法回帰の改憲論は永遠に出てこない。そして国民は憲法論議が楽しくなる。そのときに日本人は初めて、日本のオーナーとなれるはず」

◆こばやし・せつ 慶応大学法学部教授。弁護士。30年以上前から一貫して護憲的改憲論を唱える。64歳。

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