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 NTTグループなどの電気通信事業者と家電量販店がインターネットの光回線サービスを家電製品とセットにして割引販売していることに対し、消費者から「虚偽説明」や「説明不足」と訴えるトラブルが多発している問題で、総務省がこの度、電気通信業界団体に対してトラブル防止のガイドライン作成などを要請していることがわかった。

 本誌では「『地デジ移行』につけこむNTTとビックカメラ」(二〇一一年九月二日号)で、地デジ対応テレビを割引購入した顧客が、割引条件として説明された契約以外に、別のサービスまで無断で契約させられていたと訴えるケースなど紹介。国民生活センターなどに相談や苦情が多数あると報じた。だが、相談の総件数などは明らかにされていなかった。

 今回、総務省は同センターと協力し、電気通信分野での相談事項について分析。セット販売時の「虚偽説明」「説明不足」「書面不交付」と三つに分類された相談件数の合計は、二〇一〇年で五七二件。前年の四七五件より二割以上も増えていた。またネット回線契約では、電話勧誘販売や訪問販売でのトラブルも急増。通信販売や店舗購入などを合わせた相談件数は、前年の三一六一件を四割以上も上回る四五九六件に達していた。

 この結果を受け、総務省は電気通信事業者が加盟する「電気通信サービス向上推進協議会」に対し、セット販売時に消費者の誤解を防ぐための表示や説明方法などを検討し、そのモデルを公表するよう要請。同協議会では、早ければ四月中にも自主基準やガイドラインなどまとめるという。

 総務省は今後、業界の自主対応でも問題が解消しない場合は、今の電気通信事業法に基づく規制では設定されていないクーリングオフ制度の導入なども検討すべきとの強い姿勢を打ち出している。これまで野放しだったセット販売に初めて規制がかかることになり、電気通信事業者や家電量販店は適切な対応を迫られることになる。

(杉原章一・ジャーナリスト、3月30日号)

NTTの広報紙的な存在である『テレコム・レビュー』が、幹部たちの“障害”ぶりを披露している。

 

 元国営公社という強みで民営化後も業界優位に立つNTT(日本電信電話株式会社)。先日、グループのNTTドコモは携帯電話の一部が通信障害を起こしたことで山田隆持社長が謝罪会見を行なった。しかし、グループ幹部連中の“障害”ぶりは既に意外な形で明らかにされていた。

 NTTグループ幹部たちの異常な“趣味”が明らかになった。NTTドコモの山田隆持社長ら現役の幹部と関連企業に天下りなどした元幹部のOBらが、長年にわたって賭けゴルフと賭け麻雀を堪能する例会を頻繁に開催し、「禁じられた遊び」にふけっている。しかもその中心人物が、自らの違法行為をメディアで自慢までしていたのだ。
「いったい、あの記事がどうして書かれたのか。あんなことを公言するなんて信じられないと関係者の間で話題になっていた」

 NTT関係者がこう語って首を傾げたのは、昨年一〇月、情報通信業界紙の『テレコム・レビュー』(「逓信」発行)が、一面全体で大々的に報じた記事だった。
 この業界紙は、NTTグループやKDDIなど情報通信企業や関連企業のほか、情報通信行政に関わる省庁や政界などで読まれている月刊紙で、発行部数は公称一万部。一般的な知名度はないが、関係者には注目されてきたメディアだ。

■「ゴルフを100倍楽しむ」

 日ごろは業界のトピックなど伝えているお堅い業界紙が昨年一〇月一五日号で唐突に掲載した記事の大見出しは、「ゴルフを100倍楽しむ法」。サブの見出しは「大評判 三原種昭(大明相談役)の『ベット集』」だった。

 その内容は、「広くNTT関係者の間」で、一五年前に賭けゴルフと賭け麻雀を徹底的に楽しむ目的で「MG会」と呼ばれる親睦会が自然発生的に生まれ、以後、年に五、六回も泊りがけの例会が開催され続けている、というものだった。

 そのゴルフで重宝されているのが「MG会の推進者」で「NTTグループ切ってのアイディアマン」とされ、現在はグループ傘下の関連企業「大明」に在籍している三原相談役の作成した独自のにぎり(賭け)ルール集なのだという。

 三原氏は、日本電信電話公社に入社し、後のNTTで常務にまで上り詰めた。その後、現在のNTTコムウェアの前身であるNTTコミュニケーションウェアの社長を務め、さらに大明の社長に天下りして、今は相談役となっている。

 いわば大物OBの三原氏は、記事中で「ゴルフは楽しくなければゴルフではない。くそ真面目にスコアだけを気にしないで、はち切れんばかりのベットを持ちこんでアフタープレーの場を盛り上げるのが醍醐味だ」と胸を張り、自分が作成した「にぎり」のルール集について自慢げに解説している。

■「賭博性を高めた」ルール

 たとえば、自信作というルールでは、ショート4ホールで一度もワンオンしなかった場合、「バイアグラ」というペナルティを受ける。なぜなら「旗竿が立ちっ放し」だからだ。また、グリーン周りのバンカーから一打で乗せられないと、「乗らないで出すだけ」という意味で「ソープランド」のペナルティが科される。一般的にも知られる「オリンピック」を、三原流にアレンジして「博打性を高めた」ルールもあるという。

 賭けのレートは不明だが、あるNTT関係者は「部長クラスでにぎる時、一つのペナルティは一〇〇〇円くらい。役員ならもっとレートが高いのでは」と話す。仮にレートが一万円ならば一〇万単位の勝ち負けになるだろう。

 MG会のメンバーは、現役幹部とOBがほぼ半分で総勢約一〇〇人。例会は沖縄を含む全国各地で行なわれる。出身地や所属先で東西に分かれ、関ヶ原に近い名古屋で行なわれる東西対抗戦には、ドコモの山田社長も「欠かさず参加」しているという。

 このほか紙面では、NTT西日本の伊東則昭副社長や、NTTドコモの元副社長で現在は関連企業「協和エクシオ」の石川國雄社長、NTT元常務で、現在は「古河電工」の石原廣司会長ら一〇人ほどが、中核メンバーとして紹介されている。

 言うまでもないが、賭けゴルフや賭け麻雀は刑法一八五条の賭博罪にあたる違法行為だ。NTTの幹部やOBたちが違法な例会を組織的に開催し、それを当事者が自慢げに公表するなど常識的には考えられない異常な状況といえるだろう。

 そこで、NTTドコモなど紙面に登場したメンバーの所属企業に当事者の見解や企業としての対応について質問したが、締め切り前に回答した企業は一社もなく、こちらから東西対抗戦の世話役という片桐清志相談役がいる「シーキューブ」の広報担当者に確認すると、「プライベートの話なので回答は控えさせていただきます」と答えた。さらに締め切り後、NTTドコモとNTT西日本から揃って、問題の記事は「こちらで対応した(取材を受けた)ものではないので、回答は控えさせていただきます」との連絡があった。

■出張費はポケットマネーに?

 とはいえあるNTT関係者は、この問題は「プライベートの話では済まされないのでは」と眉をひそめる。なぜなら、MG会の例会は「それぞれ幹事が参加者の交通手段や食事、宿泊などアゴアシすべてを手配し、メンバーが自腹を切ることがない。なのに、例会の参加費を出張費としている会社もある」というのだ。

 いったい幹事が支払う費用はどうやって捻出されているのか。また「宴会にコンパニオンが手配されることもある」とのことで、メンバーは無料で文字通りの大名遊びを満喫し、出張費までポケットマネーにできるというのだ。

 このNTT関係者は、MG会の話に限らず、NTTの幹部がゴルフや麻雀をする際には「外部の取引先が参加させられることもある」とも語る。その場合、「出入りの業者が、賭けで安易に勝てると思いますか? なかにはワザと負ける業者だっていないわけではない」というのだが……。

 どうやらNTTグループには、キャリアの幹部たちが美味しい思いをする“仕組み”がいろいろと存在しているようなのだ。

 一方、渦中の業界紙を発行する「逓信」には、NTT関連企業から多数の広告が出ているほか、「逓信」自体がOBの天下りを受け入れることもあり、いわばNTTの広報紙的な存在だと見られることもある。そんな業界紙が、いったいナゼこんな記事を掲載したのか。
 冒頭のNTT関係者は、「だから皆、不思議に思っている。今回、記事に名前の書かれた人はNTTグループ内でも技術系と呼ばれる人たちだった。それでグループ内の派閥抗争に関係あるのか? などと憶測もされている」と声を潜めた。

 問題の記事のリード部分には、「よく遊ぶ人は、よく仕事ができる。この会のメンバーが(NTT)グループを代表する腕利きの仕事師と趣味人間が集結している事実はあまり知られていない」とある。

 確かに、NTTドコモの山田社長はグループ全体を統括するNTT持株会社の次期社長有力候補としても注目されている実力者だ。とはいえ、こんな非常識な趣味人に日本を代表する大企業を統率させてもいいのだろうか。

(杉原章一・ジャーナリスト、2月3日号)

 NTTドコモを恐喝したとして元暴力団幹部で経営コンサルタントの鴻池宗一容疑者が逮捕された。だが実は、ドコモは昨年まで鴻池容疑者が関係する企業と巨額の取引きをしており、両者は良好な関係にあった。事件の背後にNTTの「闇」が透けてみえる。

 報道によれば、鴻池容疑者は九月にドコモを訪れ、過去の不祥事を明らかにすることをほのめかして金品を要求した容疑がかけられているが、本人は「会社には行ったが脅していないし、金も要求していない」と否認しているという。

 実は、鴻池容疑者は逮捕前、「真実を報じてほしい」と、こんな話を筆者に打ち明けていた。

「ドコモなどNTTグループから、私が仲介して外部の企業に出ていた“仕事”の総額は一〇〇億円以上になる。私はその何パーセントかを受け取っていた」

 調査によると、鴻池容疑者が業務委託契約を結ぶ広告代理店などに、NTTグループから億単位の発注があったことは間違いない。

 それが昨年夏、鴻池容疑者はNTTと関係の深いビックカメラでテレビを購入した際、詳しい説明もないままにNTT関連の複数の契約を結ばされているという事態に陥った。そのためビックカメラやNTTコミュニケーションズなどに「不適切な営業はやめろ」と抗議。だが、NTT側から「問題はなかった」と突っぱねられたため、昨年末からはNTTとの仕事上の関係を自ら絶って抗議を続けてきたという。

 調査したところ、ビックカメラとの問題は鴻池容疑者に限らず、ほかにも多数の顧客が同様なトラブルに巻き込まれていることが分かった(本誌九月二日号参照)。つまり鴻池容疑者の抗議は、根も葉もない「脅し」ではなかった。

 ビックカメラは、NTTの元社長で今もNTT特別顧問の児島仁氏を社外取締役とするなど、NTTとの関係が深く、両者が問題を黙殺しているようにもみえる。

 一方、鴻池容疑者とドコモとの接点は一〇年以上前に遡り、以前の関係者などにも取材をすると、ドコモはかつて鴻池容疑者に、表沙汰にしにくいトラブルの処理などを依頼し、その見返りに「仕事を出した」(ドコモ関係者)ことがあったという。

 鴻池容疑者は約二〇年前に暴力団を辞めているが、「自分のような人間がこんなことをしていると、普通は逮捕されないことで逮捕される可能性もある」とも話していた。実際、二〇〇八年にも別の企業から金を脅し取ろうとしたとして逮捕されたが、その事件は結局、被害者の言い分がでたらめで、鴻池容疑者は嫌疑不十分で釈放されている。

 別の見方をすると、三年前にも暴力団関係者として逮捕された鴻池容疑者に、ドコモは以後も仕事を出していた。ドコモは鴻池容疑者を、まともなビジネスパートナーとして高く評価していたのか、それともよほどの弱みを握られているのか……。

 そして、「私はウソで(NTTに)言うことを聞かせようとはしていない」と訴えていた鴻池容疑者の行動は、自分とNTTとの関係が、協力や信頼で成り立ってきたのか、NTTが問題を隠すためのものだったのか、明確にさせようとしているようにもみえる。

 NTT各社は、鴻池容疑者との関係を問うと「個別の取引きについてお答えできない」などと説明を避けていたが、両者の関係は、さらに過去へと遡り、不可解な部分も多い。

 今回の逮捕が、単純な恐喝事件でないことは間違いなく、捜査の行方によってはNTTの闇が、さらに明らかになる可能性がある。

(杉原章一・ジャーナリスト、12月23日号)