茨城・栃木の巨大竜巻:被災から1年 街の活気戻らず
毎日新聞 2013年05月05日 10時36分(最終更新 05月05日 11時55分)
茨城、栃木両県で1200棟以上が被災した巨大竜巻から6日で1年。被害が集中した茨城県つくば市北部の北条地区では、がれきはなくなり、地元商店街の復旧も進んだ。だが、寂れゆく街の人たちが取り戻そうとしていた活気は、竜巻に吹き飛ばされたままだ。住宅再建ができない人も多く、見えない爪痕が深く残っている。
「気持ちが萎えてしまったんだ」。時計店や履物店、酒屋など約90店が軒を並べる北条商店街。07年から季節ごとに青空市などを開催してきた「北条街づくり振興会」の坂入英幸会長(63)は、被災後の商店主仲間の気持ちをこう代弁した。
かつては筑波山の登山口として栄えたが、88年に合併してつくば市になってからは、人の流れが研究機関が集まる市の中心部に移っていった。そんな状況を打開しようと商店主らが作ったのが同振興会だった。青空市は評判を呼び、多い時は1日で5000人を集めるまでになった。09年には経済産業省の「新・がんばる商店街77選」に選ばれた。
努力が実を結ぼうとしていたときに、竜巻が直撃した。商店街はがれきに埋もれ、前向きだった雰囲気は一変した。坂入さんが次の一手を呼び掛けても仲間の反応は鈍かった。「まだ先のことまで考えられない」「もう少しゆっくりでいいんじゃないか」。昨年秋に青空市を復活させたが、つくば市商工会など外部の協力が大きかった。
「竜巻さえなかったら……」。化粧品店を約50年間営んできた佐原みち子さん(82)は再建を断念した。店は全壊し、自身も店先で転倒して右腕を骨折。「後継ぎもいないし、年を考えるととても無理」と語った。
北条地区の損壊家屋は702棟、うち全壊は137棟に上った。既に約10世帯が地元での生活を諦めて転出した。街を歩くと、更地が目立つ。家を失い県営住宅などに避難中の別の9世帯は今も転居のめどが立っていない。【松本尚也】