ここでもサービス産業化が進行
もう一つ注目すべき動きは、天然ガスの利用拡大である。これまで使われていた天然ガスの大部分は、油田に随伴する「在来系」と呼ばれるものだった。ところが近年、油田やガス田以外から生産される「非在来系」に注目が集まっている。その代表的なものがシェールガスである(図11)。シェールガスは、泥土が堆積して固まった岩の層に閉じ込められている新型の天然ガスで、その存在は以前より知られていたが採掘が難しく放置されてきた。だが技術革新によって大幅に採掘コストが下がり、現在はエネルギー換算で原油の1/3程度のコストで採掘できるようになっている。
こうした事態を受け、膨大な埋蔵量が確認されている北米を中心に数年前から大増産が始まっている。米国のほか、カナダ、オーストラリア、中国でも相次いでシェールガスの埋蔵が確認された。今後も発見が相次ぎ、エネルギーを巡る世界の勢力図を塗り変えることになるだろう。実際、米国がシェールガスを増産し始めたことで、2009年には米国がロシアを抜いて世界最大の天然ガス生産国になった。米国エネルギー省は2035年までに追加される発電能力の中で「ガス」が占める割合が60%を占めると予測している。シェールガスを積極的に使うことで脱石油を進めようとの意思を明確に示したものといえるだろう。
こうした激しい環境の変化を受けエネルギー業界では、ガスや石油など様々な業界が入り乱れての再編が進むことになるだろう。例えば昭和シェル石油は1993年から太陽光発電に取り組んでおり、今後5年以内に経常利益の半分をこの分野から稼ぎ出すという目標を掲げている。東京ガスは2008年から川崎で天然ガスを1次エネルギーとする「発電所」の運転を開始した。社名から「石油」や「ガス」という言葉が消える日も近いかもしれない。再生可能エネルギーを利用するためには、双方向で管理するのにネットワークが不可欠になっていく。いわゆる「スマートグリッド」の導入が真剣に検討されることになるだろう。こうして電力会社の役割は、発電より電力網の「管理サービス」の方へとウエートを移していくことになる。将来的には、エネルギー管理だけでなく、セキュリティーなど様々な生活サービスへと事業の領域を広げていくことになりそうだ(図12)。
※図はいずれも『未来予測レポート2013-2025〈自動車編〉〈エネルギー編〉』より
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