尖閣諸島問題で、また歴史認識をめぐり、日本と中国が対立している。こんなふうに、私たち新聞は「中国が」と書くが、中国の指導部にせよ、一般市民にせよ、意見が決して一つにまと[記事全文]
天動説から地動説へ、コペルニクスは中世の常識を覆した。それと並ぶ宇宙観の転換に、私たちは立ちあっているようだ。宇宙に存在が予想されてきた正体不明の「暗黒物質」(ダークマ[記事全文]
尖閣諸島問題で、また歴史認識をめぐり、日本と中国が対立している。
こんなふうに、私たち新聞は「中国が」と書くが、中国の指導部にせよ、一般市民にせよ、意見が決して一つにまとまっているわけではない。
日本に対する強硬派がいると同時に、対日関係を重くみる協調派もいる。いまのような局面では、つい見落としがちだ。
そんな当たり前のことに気づかせてくれたのは、中国のジャーナリスト、喩塵(ユイチェン)さんの言葉だった。河南省でのエイズ集団感染事件など社会問題を積極的に報じてきたことで知られる。国際交流基金の招きで来日し、明治大学でこう語った。
「昨年9月、尖閣国有化に抗議する反日行動が拡大したのは、中国のメディアに自由がないから。理性的な声が伝えられず、反日一色にされてしまった。あれは中国社会の真の姿ではないのです」
日本と対立が強まれば、中国で対日強硬派の発言力が増し、協調派の発言力が低下する。そうでなくても日中には歴史問題があるから、注意しないと強硬派が優勢になる。ここに日中の陥りがちなわながある。
安倍首相がかつての侵略の歴史を否定しかねない発言をし、168人の国会議員が靖国神社に参拝した。ここ最近の日本側の振る舞いは、中国の強硬派を元気づけ、協調派を落胆させたに違いない。
関係修復をめざして今月訪中するはずだった自民党の高村正彦副総裁は、李源潮(リーユワンチャオ)・国家副主席との会見を実現する見通しが立たず、訪問を断念した。李氏は対日関係を重視すると期待されていた人物だ。しかし、この情勢下では会えない。
協調派の声は中国で消えかかっているようにみえる。だが例えば、中国主要紙の一つ「中国青年報」は最近おきた四川省の地震をめぐって「耐震建築は日本に学べ」という大きな記事を出した。隣国がいがみあっても得はない。そう考える人が中国にもいることを示している。
厄介なのは尖閣海域での対応だ。無用な刺激を与えるのは避けなければならない。だが、中国が繰り出す監視船に対し日本側が後退すれば、それこそ「力で押せば日本は引っ込む」と強硬派を勢いづける。だから、退くわけにもいかない。ここが当面、最も難しい。
いずれにしても、対日関係改善を望む人が中国には少なからずいる。彼らを困らせる言動を慎むことが、わなを抜け出す第一歩になる。
天動説から地動説へ、コペルニクスは中世の常識を覆した。それと並ぶ宇宙観の転換に、私たちは立ちあっているようだ。
宇宙に存在が予想されてきた正体不明の「暗黒物質」(ダークマター)の跡らしきものがこのごろ、見つかった。
私たちの地球や太陽系は「天の川銀河」に属している。観測でこの銀河は高速で回転しているとわかった。太陽系などが遠心力で飛び出さないのは、銀河全体の質量にもとづく重力で引きとめられているからだ。
困った。
輝く星々の重さを足しあわせても、光らない惑星やブラックホールまでかき集めても、合計が軽すぎるのだ。
宇宙には、私たちの銀河のような渦巻き型やそうでない銀河も無数にある。それらを観測しても事情は同じだった。
遠心力とつりあう重力を説明するには、重さのある未知の物質が宇宙に広く満ちていることにすると都合がいい。こうして仮置きされたのが暗黒物質だ。
今回、国際宇宙ステーションで調べたところ、高速の「陽電子」が宇宙のあらゆる方向からまんべんなく、たくさん飛んできていた。
空間にまれに存在する陽電子は電子とぶつかると一緒に消えてしまう。だが、暗黒物質同士の衝突で次々に陽電子ができていれば、宇宙には高速の陽電子が飛び交っているはず。そんな予想ときれいに合った。
宇宙にはさらに、正体不明の暗黒(ダーク)エネルギーがあることも確実とみられている。宇宙は加速しながら膨張しており、その原因が必要だからだ。
アインシュタインの相対性理論によって、物質とエネルギーは互いの量を換算して足し算できるものとされる。
最新の観測では、宇宙のなかで、原子や分子といった既知の物質は、全体のわずか4%を占めるにすぎない。23%が暗黒物質で、残り73%は暗黒エネルギーと見積もられている。
私たちが今まで見たつもりになっていた宇宙は、4%の宇宙でしかなかったらしいのだ。
「大切なものは目に見えないんだよ」という、サンテグジュペリ「星の王子さま」の有名な言葉を思い出す。
暗黒物質や暗黒エネルギーはどこにあるのか。それが見つかっても、私たちの生活にたちまちの影響はないかもしれない。けれど、人類の思想に大きな影響を与えずにはいないだろう。
謎に満ち、私たちは何ほども知らない。最先端の科学が突きつける宇宙の真実である。