【ワシントン=吉野直也】シーファー前駐日米大使は3日、日本政府が旧日本軍による従軍慰安婦の強制連行を事実上認めた「河野談話」の見直しに動けば「米国における日本の利益を大きく害する」と述べた。慰安婦問題を人権問題ととらえる米国と、歴史認識問題と位置づける日本。双方の立場の違いが鮮明になっており、順風満帆にみえる日米関係の波乱要因になりかねない。
「慰安婦問題は別だ。いかなる正当化もできない」。シーファー氏は3日にワシントン市内で開いた日米関係に関するシンポジウムに出席し、靖国問題に一定の理解を示す半面、慰安婦問題についてはこう語った。
米議会は2007年に慰安婦問題で日本政府に謝罪を求める決議を採択した。当時も首相だった安倍晋三氏の歴史認識を巡る発言をきっかけに関心が高まり、超党派による決議だった。人権に価値を置く米国で人権問題と受け止められた場合、反対する議員はほとんどいない。その時の決議も共同提案者は170人近くにのぼった。
米国の同盟国である日韓の対立はオバマ大統領が掲げるアジア重視の政策にも波及する。米国務省のベントレル報道部長は歴史認識を巡る安倍首相らの発言について「建設的な関係が地域の平和と安定をもたらすことを訴えていく」と指摘する。
核やミサイルの開発をやめない北朝鮮と沖縄県・尖閣諸島や南シナ海で海洋権益の確保に動く中国。日米韓の結束がいままで以上に求められている時にその基軸である日米が揺らぐ事態はアジアの混迷を招きかねない。
オバマ、安倍晋三、ワシントン
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