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第46回ADB年次総会 日本国総務演説(平成25年5月4日 於インド・デリー)

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第46回アジア開発銀行(ADB)年次総会における麻生大臣総務演説
(平成25年5月4日(土) 於 インド・デリー)

 

I はじめに

  1. 総務会議長、総裁、各国総務並びにご列席の皆様、

  2. まず、インド政府及びデリーの皆様の温かい歓迎に心より感謝申し上げます。日本とインドは、歴史的にも、また、経済的にも、そして人的にも、様々な面を通じて、協力関係を築いてきました。デリー・メトロは、その象徴の一つです。経済協力面を含め、今後、日印両国関係が更に発展することを期待します。

  3. 本総会に先立ち、ADB加盟各国からの力強い支持を得て、中尾総裁が選出されました。この場を借りて、各国からの御支持に厚くお礼を申し上げます。

  4. ADBは、黒田前総裁の下、アジア・太平洋地域における最も重要な開発金融機関としての地位を確立しました。黒田前総裁のADBにおけるご功績に対して、深甚なる敬意を表します。また、中尾総裁におかれては、国際金融や開発の分野における豊富な経験を活かし、ADB総裁の重責を担われることを期待します。

 

II アジアの急速な経済成長

  1. アジアは、教育を受けた豊富な人材、安定的なマクロ経済運営、大規模なインフラ整備等が相まって、世界各国から直接投資が進み、これが急速な経済成長と貧困の持続的な削減をもたらしました。

  2. 日本は、アジアの一員として、官民一体となって、アジアの経済成長に協力してまいりました。例えば、円借款を通じたインフラ整備、技術協力を通じた人材育成、JBICを活用した民間資金の動員、そして、低所得国を対象とするアジア開発基金やADB日本基金への貢献は、アジアの成長の基盤づくりに大きな役割を果たしてきたのではないかと思います。

  3. 投資環境が改善され、投資先として魅力的になったアジアには、多数の日本企業が進出していきました。日本企業は、アジアの各地で雇用の機会を提供し、貧困の削減に貢献するだけでなく、世界的な生産ネットワークへの参加や、有形無形の技術移転を通じ、アジア各国経済の高度化に貢献してきました。

    いま、アジアは、世界的なサプライ・チェーンの一端を担い、世界経済との一体化が進んでいます。アジアには、先進国の水準に達した国があります。また、これら以外の国の多くも、中所得国と呼ばれるまでに経済成長を果たし、援助を受ける側から、援助を供与する側に回りつつあります。そして、2015年には、ASEAN共同体が発足します。メコン流域や中央アジア、南アジアでも、地域協力が進展しています。今後、アジア域内の経済統合が一層深化し、各国が発展の階段を更に上るにつれて、世界経済との統合も一段と進むことが期待されます。

 

III アジアと共に歩む日本

  1. 日本は、アジアの一員として、今後ともアジアと共に歩んでまいります。昨年12月に発足した安倍政権は、アジア重視の方針を前面に打ち出しています。1月には安倍総理が、就任直後の初めての外遊として、インドネシア、タイ、ベトナムの3か国を歴訪したほか、3月にはモンゴルを訪問しています。

  2. また、私自身、副総理として、1月2日からミャンマーを訪問し、民主化・国民和解・経済改革が進むよう、ADBや世界銀行・IMFとも協力しつつ、日本として積極的な支援を行うことを伝えました。ミャンマーの延滞債務問題の解決に当たり、ADBはもちろんのこと、世界銀行やIMF、パリクラブ(主要債権国会議)とも緊密に連携しつつ、日本として、主導的な役割を担うことができたことは、まことに喜ばしい限りです。更に、デリー総会の直前、私は、スリランカを訪問し、同国が長年にわたる内戦から再興し、力強い成長を続けていることを自分の目で確認してきました。

  3. アジアは、世界の成長センターとして、力強い成長を持続することが期待されています。また、アジアに存在する8億人の貧困人口を削減するためにも、アジア自身による更なる努力と、アジア以外からの支援も得て、成長を持続させていくことが不可欠だと考えます。勿論、日本は、アジアの一員として、アジア各国による努力を下支えしていく決意です。

  4. 先ほど、中尾総裁より、アジアが取り組むべき今後の課題として、3つのI(アイ)、すなわち、イノベーション(創造性)、インクルージョン(国民各層に裨益する広がりのある成長)、インテグレーション(アジア内外にわたる経済統合)を一段と進めることが示されました。私は、3つのI(アイ)に取り組もうとする中尾総裁のビジョンに全面的に賛成します。

  5. アジアの課題解決を図るため、日本としては、次の5つの取り組みを強力に進めていく考えです。

  6. 第一に、これまで、アジアの発展に大きな貢献をしてきた譲許性資金の円借款について、一段の積極活用を図ります。このため、先月、具体的な改善策を講じました。

    1. アジアの経済統合を加速させていくためには、国境や地域を跨いだインフラ整備を進め、連結性(コネクティビティ)を向上させることが不可欠です。こうした観点に立って、戦略的意義が認められる場合には、中進国以上の国に対しても、円借款の積極的な供与を図ってまいります。 

    2. インフラ以外の分野についても、円借款を活用した積極的な協力を実施してまいります。このため、環境、人材育成、防災、保健・医療の4分野について、円借款の金利を大幅に引き下げることとしました。

    3. アジアは、台風による水害や地震を始めとして、多くの災害リスクに直面しています。一旦、大規模災害が発生すれば、貴重な人材が失われ、長年にわたる経済発展に向けた取り組みが水泡に帰すことになりかねません。こうした観点に立って、日本は、十分な防災対策を講じようとする国を対象として、災害発生時において、迅速に資金供与を図る「災害復旧スタンドバイ借款」を新設することにしました。

  7. 第二に、インフラ分野などにおいて、民間資金の更なる活用や投資拡大を図るため、JBICの積極的な活用を図ります。こうした観点に立って、本年2月には出資ファシリティを、また、本年4月には融資ファシリティを創設しました。両ファシリティを通じて、日本とアジアの経済統合が一段と進み、アジア経済の底上げが図られることが期待されます。また、アジア各国が東京市場で発行するサムライ債(日本円建て債券)に対するJBIC保証の付与を通じて、安定的な資金調達を支援してまいります。

  8. 第三に、アジアとの間で、金融協力の一段の深化を図ります。アジア通貨危機を契機として始まったチェンマイ・イニシアティブは、ASEAN+3マクロ経済リサーチオフィス(AMRO)の設置や、マルチ化、2,400億ドル規模への拡大等を通じて、経済統合を進める上で不可欠な地域の金融セーフティネットとして大きく発展しました。また、日本は、二国間の金融協力についても積極的に取り組んでまいります。これまで、中国、韓国等と行ってきた二国間の金融協力をその他の国々にも広げ、昨年12月には、インドとの間で、従来、30億ドルを上限としていた二国間通貨スワップ取極を150億ドルに拡充しました。更に、昨日の日ASEAN財務大臣・中央銀行総裁会議では、ASEAN諸国との二国間金融協力を強化することを日本として発表したところです。

  9. 第四に、ミャンマーやアフガニスタン・東チモールなど、国際社会に復帰する国々に対して、ADBと緊密に連携しつつ、きめ細かな支援を行います。これらの国々の成長を促進することは、アジア・太平洋地域全体の経済統合を加速させることを通じて、地域全体の安定と経済成長にも貢献することが期待されます。日本は、ミャンマーのADB・世界銀行に対する延滞債務問題の解決を図るため、JBICを通じてブリッジローン(超短期のつなぎ融資)を供与しました。また、ミャンマーを始めとする国際社会に復帰する国々に対して、ADBによる通常のオペレーションを補完する形で、的確な支援を迅速に供与することも重要です。こうした観点から、日本は、ADB等に設けた信託基金を活用して、政府関係機関の能力構築を進めるとともに、幅広い経済成長と貧困削減を目指して、NGO等とも協力しつつ、コミュニティ・ベースの小規模プロジェクトを支援してまいります。

  10. 最後に、日本自身の経済成長の強化です。昨年末に成立した新政権の下において、日本は、長く続いたデフレーションから脱却するため、これまでとは次元の異なる大胆な政策パッケージとして、「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」から成る「三本の矢」を一体的かつ強力に実行して経済再生を推し進めることにしています。こうした日本の取り組みが、アジアの成長強化にもつながることを期待しています。

 

IV ADBの中長期戦略

  1. ADBは、2008年、黒田前総裁の下、中長期的な戦略としての「ストラテジー2020」を策定し、2009年には、その実現のために、資本金の規模を3倍に拡大することに成功しました。ADBは、アジア・太平洋地域における最も重要な開発金融機関の地位を確固なものとしましたが、その後も、アジア・太平洋地域を取り巻く経済環境は急速に変化しています。

  2. 先ほど、中尾総裁より、「ストラテジー2020」の中間レビューを開始する旨の方針が示されました。日本としても、ADBがアジアの更なる発展に貢献できるよう、積極的に議論に参加してまいります。

  3. また、私は、ADBの活動の基盤である資本財源について、様々な選択肢が示されたことを歓迎します。今後、議論を進めていくに当たっては、2009年に資本金の3倍増が決定されてから期間が浅いことや、各国とも厳しい財政事情を抱えていることが十分に勘案される必要があります。加盟各国にとって受け入れ可能なコンセンサスが形成されるよう、日本としては、ADBの筆頭株主としての責任ある立場から、建設的に議論に参加していきます。

 

V 結び

  1. 総務会議長、総裁、各国総務並びにご列席の皆様、

  2. アジアは、世界の成長センターとして、目覚ましい経済成長と大きな貧困削減を実現してきました。今後とも、力強い成長を維持していくためには、中尾総裁が示された3つのI(アイ)の課題に対して、アジア自身が努力を重ねるとともに、アジア以外の地域とも緊密に連携していくことが不可欠です。

  3. こうした中にあって、ADBに求められる役割は益々大きくなっています。アジアの持続的な成長に向け、中尾総裁の下、ADBが一段と大きな役割を果たすことを期待します。アジアの成長に貢献するADBに対して、日本は全面的に協力していきます。

  4. ご清聴ありがとうございました。

(以上)