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くらし☆解説 「小型家電リサイクル制度 スタート」2013年04月26日 (金)
今井 純子 解説委員
きょうのテーマはこちら。小型家電リサイクル制度 スタート。小型家電を捨てずに、リサイクルしようという制度が今月から始まりました。今井解説委員です。
Q)そもそも、小型家電とは?
A)はい。例えば、こういう製品。
炊飯器やゲーム機、デジタルビデオ・カメラ、リモコン・・。すでにある「家電リサイクル制度」の対象になっている「テレビ」「エアコン」「洗濯機」「冷蔵庫」の4品目をのぞく、100品目以上が、国からリサイクルの対象に指定されています。
こうした製品。これまでは、使い終わると、「燃えるごみ」あるいは、「燃えないごみ」として捨てられ、多くが埋め立て処分にされてきました。それを、リサイクルしようということなのです。
Q)テレビなどのリサイクル制度と、何か違うのですか?
A)
▼ まず、大型の「家電リサイクル」は、全国一律で、「義務」づけられています。私たちは、国内のどこに住んでいても、使い終わった後、小売店などに引き渡さなくてはいけません。しかも、消費者が、リサイクル費用や運搬費用を負担します。
Q)結構高いですよね。
A)数千円、かかりますよね。
一方、新しい「小型家電リサイクル」では、
▼ そもそも、「リサイクルするかどうか」。そして、この対象品目の中から、実際、「どれをリサイクルするか」は、それぞれの自治体が決める、「任意」の制度になっています。
▼ また、費用も、市町村や品目にもよりますが、多くの場合、無料です。
Q)なぜ、リサイクルすることにしたのですか?
A)大型家電の場合は、主に、埋め立てる量を減らして、最終処分場に余裕をつくることが狙いでしたが、小型家電の場合は、中に含まれている貴重な金属を取り出して活用しようということが主な狙いです。
Q)金属ですか?
A)はい。今や家電製品も、コンピュータ化しています。毎年、使用済みとなる小型家電の中には、鉄のほか、金や銀などの貴金属。そして、レアメタルなどの希少な金属が28万トン。844億円分含まれていて、「都市鉱山」とも呼ばれているのです。
これを、捨てるのはもったいない。ということで、自治体が集めた後、国から認定を受けたリサイクル事業者などに売却したり、無償で引渡したりします。そして、リサイクル事業者が、細かく分解したあと、製錬事業者が、貴金属やレアメタルなどの資源に変えて、新たな製品の原材料として再利用しようという仕組みです。
Q)消費者は、どうやって出すのでしょうか?
A)出し方も、自治体が決めます。例えば、こちら。
▼ 新たに、「小型家電」といった、ごみ捨ての区分をつくる。
▼ これまで通りに集めた上で、自治体の人が、ごみの中から、小型家電を選別する。
▼ 役所やスーパーなどに、小型家電を集める回収ボックスを設けて、持ってきてもらう。
▼ お祭りなどのイベント会場に窓口を設けて、持ってきてもらう
▼ 消費者が、自治体に依頼をして引き取りにきてもらう。
▼ 清掃工場などに持ち込む。
こういった方法の中から、自治体が、決めることになっています。いくつか、組み合わせるというところもあります。
Q)携帯電話も対象ですよね。住所録などの個人情報が漏れる心配はないですか?
A)携帯電話には、高価な金属がたくさん含まれています。これまでのように販売店に持っていってもリサイクルしてくれますが、それに加えて、自治体が回収してリサイクルに回してもいいことになりました。確かに、個人情報が心配なので、回収する自治体は、カギがかかる場所などで厳重に保管すること。そして、リサイクル事業者は、物理的に破壊することが求められています。ただ、消費者としても、データは完全に消してから出すようにしたほうが安心だと思います。
Q)棄てるのはもったいなくて、家の中に置いたままの家電製品は結構あります。きちんとリサイクルされるのは、いいことだと思います。でも、私の住んでいる地域では、まだ、リサイクルを始めていないのですが・・。
A)先行的にリサイクルを始めている自治体もありますが、全国的には、まだ、法律が施行されて、リサイクル事業者の認定もこれからという段階です。今後、少しずつ広がっていくと思います。ただ、気になるのは、国のアンケートに対して、参加に前向きな姿勢を示した自治体が、3分の1にとどまっているということです。
Q)慎重な自治体が多いのですね。なぜですか?
A)回収ボックスなどの費用は、国が支援しますが、
運搬費や人件費は、自治体の負担になります。このため、
▼ 体制が整わない。
▼ 予算的に厳しい
つまり、売っても、赤字になるのではないか・・という懸念があるからというのです。
Q)どうしたら、参加する自治体は増えるのか。
A)先行している自治体の中には、
▼ 最終処分場に少し余裕ができた、
▼ 有害な鉛が溶け出さないように自治体が処理してきた費用の負担がなくなった。
というメリットを挙げるところもあります。こうしたことも含めて、広い視野でメリットを考えてほしいと思います。
その上で、経済的なメリットを増やすには
▼ 例えば、引越しのシーズンには、引っ越し業者と連携をするといったように、効率よく製品を集められる方法を全国で共有していく。
▼ また、メーカーは、貴金属やレアメタルを取り出すい設計をし、リサイクル事業者は効率よく取り出せる技術を開発する。
こうした点も、今後の大きな課題になります。
Q)小型家電をリサイクルに出したいけれど、自治体が参加していない場合、どうしたらいいのでしょうか。
A)まずは、
▼ 自治体が、今後、リサイクルを予定しているかどうか、電話やホームページで調べてみてください。
当面参加しないという場合でも、すぐには捨てないでください。というのも、
▼ 全国展開している家電量販店や商社などの中には、認定事業者として、家庭から小型家電を集めて、リサイクル事業者に引き渡すことを検討しているところもあります。
▼ ですから、待てるのであれば、もう少し待っていただくと、リサイクルに回すことができるかもしれません。
Q)トラックなどで、回収に回ってくる事業者もありますよね?
A)環境省の話では、町を回りながら不用品を集めている事業者の中には、最終的に、製品を不法投棄したり、分解するときに有害な物質をきちんと処理しなかったりする事業者もいる。消費者は見分けがつかないので、自治体に問い合わせてほしい。そうでなければ、慎重に対応してほしいとしています。ただ、逆に、そう言うのであれば、私たち消費者が、きちんとしたリサイクルの窓口に、製品を出しやすいよう、各自治体は積極的に取り組んでほしい。国も、もっと強力に後押ししてほしいと思います。