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漁業者、遠い春 セシウム基準厳格化1年 宮城・亘理

今シーズンの漁が本格化した定置網漁。出荷自粛が続く魚種は船上で選別される=2日午前6時ごろ、宮城県亘理町の荒浜沖

 東日本大震災からの復興を目指す宮城県内の漁業者が、福島第1原発事故の放射能汚染に苦しんでいる。食品中の放射性セシウムの国の基準値が昨年4月、1キログラム当たり100ベクレルに厳格化されてから1年余り。県内では基準値を超えるなどした5魚種で出荷自粛などが続く。先が見えない放射能汚染との闘いは、漁業者の重い足かせになっている。(馬場崇)

 定置網にさまざまな魚がかかっている。ヒラメやタラがピチピチと跳ねる。
 2日午前6時、今シーズンの定置網漁が本格化する宮城県亘理町の荒浜沖。漁師渡辺信次さん(74)の漁船「山六寿丸」(3.9トン)が、沖合約1キロで定置網を海から引き上げた。
 5人の乗組員が魚を手分けして分類する。スズキとヒガンフグを選び出し、次々と海に放り投げていった。
 「もったいねえよなあ。手間もかかるし…」。渡辺さんが嘆く。
 スズキとヒガンフグは昨年4月、亘理沖で捕れた検体から新基準値を超える放射性セシウムが検出され、国の出荷制限指示を受けた。その後も数値は下がらず、解除のめどは立たない。
 痛手は大きい。中でもスズキは1キロ当たり800〜1000円で取引される「高級魚」。渡辺さんがスズキを手に恨めしそうに語る。「1日で200匹捕れる日もあり、主力だった」
 昨年は、5月にスズキと並ぶ主力のヒラメが出荷制限指示を受けた。先月1日に解除されたが、この間、水揚げ額は大幅に落ち込んだ。ホッキ貝漁や秋サケ漁でしのぐほかなかった。
 山六寿丸のこの日の水揚げは約100キロ。普段の3分の1程度だった。「自粛はいつまで続くのか。先が見えない」と渡辺さん。スズキが盛漁期を迎える夏までの解除を願うばかりだ。
 宮城県漁協仙南支所亘理の運営委員長を務める菊地伸悦県漁協会長は「原発事故の汚染水問題は今も続いている。安全、安心のためとはいえ、自粛が長引けば復興の意欲がそがれる」と懸念する。
 宮城県によると2日現在、国の出荷制限指示や県の出荷自粛要請が出ているのはスズキ、ヒガンフグのほか、クロダイ、イシガレイ、アイナメの計5魚種。解除がいつになるのか、漁業者の視界はまだ開けない。


2013年05月03日金曜日


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