HOME >> 3.11あの時―東日本大震災3月11日14時46分からの物語

vol.17 【宮城県石巻市】NPO法人いしのまき環境ネット 理事兼事務局 川村久美さん 掲載日:2011/7/28 

3月11日 14時46分
 3月11日は家にいた。蛇田は海岸線から5kmも離れているが、非常な緊迫感を持った防災無線が入り、「津波がここまで来る、逃げなくちゃ」と思わされた。あとで知った事だが、その無線が本当に大変なエリアの人たちには届いていなかった。地震で放送設備がダメになるとはまさかの事態だった。そのため、津波がくることが分からず、窓から見て初めて津波がきていることを知ったという人がたくさんいた。
 二日目の晩までは余震がひどかったうえ、門脇町方面に見える赤黒い空とヘリコプターの爆音に不安を掻き立てられながら過ごした。三日目の朝が来て、泥にまみれ、なすすべもなく人々が続々と大通りを歩いているのを見て、大変なことが起きているのだと実感した。

 蛇田は無事だという情報があったのか、4日目からたくさんの人が訪れてくれた。安否確認所のような機能を果たせるのではないかと考え活動を始めた。これが復興支援のスタートとなった。仲間や友人の生存を確認するという不安と焦燥の入り混じる活動だったが、生きている姿を見た瞬間は、この先ずっと忘れ得ない喜びになっている。
 いしのまき環境ネットとしての組織力を起動出来る状態でない、深刻な被災状況だったため、個人として活動している。けれども震災後の支援活動は、いしのまき環境ネットがあったからこそのつながりで展開している。
 
地域で炊き出し
 13日には近所の神社で町内の人達が炊き出しをすると集まっていた。この辺りは農家が多いので材料もみそも井戸水もあり、畑にある野菜で食べることができた。夏祭りをする会場だったのでこうした活動がすぐに行える土台があった。これまで、まちづくり団体の皆さんがそれぞれ一生懸命積み重ねてきたものの威力とネットワークと機動力が発揮されていた。

ボランティアの姿
 ピーク時はものすごい数のボランティアが入ってきた。自分がどこのチームに所属する者なのかわかるようゼッケンを装着していて、とても目立っていた。目立つことが、「ボランティアさんが来てくれている」「応援されている、頑張らなくちゃ」という活力を住民に与えていた。

 交流のある他県の団体から依頼があり、「東北広域震災NGOセンター」の活動拠点として自宅を提供している。ここには4月9日からスタッフ数名とボランティアさんが来てくれていて、支援が手薄な遠隔地へと赴き、必要なものを伺い、購入して渡すという支援を行っていた。「必要な物を必要な分だけ必要な場所に届ける」という、一方通行ではなく会話を持ち信頼を培っていく形の支援を知って刺激になった。

これから
 いしのまき環境ネットとしては消臭をテーマのひとつとして活動している。体育館や学校の昇降口などに微生物群の液体を散布し、実績を出している。効果はだいぶあるようで、口コミで少しずつ申し込みが広がってきている。EM菌はニオイを消す、土壌の改良になるとの評判は以前から高かったので、出番だと言わんばかりに、要請に対処できるよう体制を整えていた事が功を奏した。

 石巻は広いので、災害の度合いが本当に色々なレベルである。町内会ごとに色々な大変なこと、不満、不都合を抱えているがそれを吐き出すところがない。役所に行ってもすぐには対応してくれないという思いを抱いていて、仕方ないと諦めそうな雰囲気もある。けれども、諦めても仕方がなくて何とかするしかない。私たちのような第3者が入って整理することによって、市民の声を行政に届けて行く橋渡しをしていけたらなと思っている。
(取材日 2011.5.29 鈴木)

=紹介=
NPO法人いしのまき環境ネット
 
 住所 石巻市泉町3-1-63
     特定非営利活動法人 いしのまきNPOセンター内
 電話 090-2992-7451 FAX 0225-22-6761
 URL http://www.i-net.or.jp/

石巻圏域の環境に関わる啓蒙教育と実践活動を通し、よりよい自然環境を未来へと引き継ぐために、自然環境と生活環境が共生する社会を形成することを目的としています。

 復興支援に関する活動
・「東北広域震災NGOセンター」の石巻地区活動拠点として場所を提供
・地域の炊き出しのお手伝い、安否確認
・消臭のためにEM菌を使った活動を進める
・「石巻市民による石巻復興支援プロジェクト」始動!