The・経営者:密着 ジャパネットたかた・高田明社長/下 次代に期待、もどかしさ
毎日新聞 2013年05月03日 東京朝刊
「ありがとうございます。ご注文を繰り返します」。2日午前0時、東京都中央区の隅田川沿いのビルにあるコールセンターが慌ただしくなった。通販専門の24時間生放送、ジュピターショップチャンネルが、毎日この時刻にお勧め商品を特価で紹介するためだ。この日は高機能の扇風機が登場。ヘッドマイクを着けた約120人のオペレーターに電話が次々と入り、放送中のテレビ画面に「注文集中しています」の表示。1時間の放送で売り上げは1億円を超えた。
ジュピターは、ジャパネットたかたがテレビ通販に進出した2年後の1996年創業。ジュピター社長の篠原淳史(あつし)(54)は4月19日、記者にジャパネットについて「デジタル家電に偏っていたが、今は総合通販を目指している。販売力があるから他の商品も伸びるだろう」と語った。話を聞いた社長室には、ジャパネット社長の高田明(64)と並ぶ写真があった。時には酒を酌み交わす旧知の間柄だ。
ジュピターの強みの一つは衣料品や食品、家電など豊富な品ぞろえ。創業以来増収が続き、年商約1200億円とジャパネットにほぼ並ぶ規模に成長した。篠原は「商品や番組の力を強化して、増収を続けますよ」と宣言した。
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「衣食住に関するものはすべて、通販で売りたい。マンションも可能性はある」。高田は4月11日、長崎県佐世保市の本社で、品ぞろえ拡大への意欲を記者に語った。昨年8月に東京オフィスを六本木に開いたのも、大手メーカーなどが集まる東京で、テレビに代わるヒット商品をいち早く掘り起こすためだ。運営を託されたのは副社長で長男の旭人(あきと)(34)。4月24日、高層ビルの34階にあるガラス張りの会議室で、「調理家電などは確実に売り上げが伸びています」と、記者に手応えを語った。
4月10日午後1時過ぎ、テレビ通販の生放送終了後の東京オフィスのスタジオ。普段は佐世保にいる高田が、厳しい表情でフロア中央のいすに座り、番組司会者やスタッフら約20人が取り囲んだ。