4月1日といえばエープリルフール。この日はたわいないウソは許される。しかし、日本経済に関して、これまで流されてきた数々のウソについては、それらを信じてきた人も多く、罪も大きい。
もっとも、金融政策を使うアベノミクスによってこうした言説の多くがウソだったことがバレてしまった。もしくは、これからバレることになるだろう。
日本経済をめぐる妄説は2種類に分けられる。1つは「金融政策は効かない」という類で、(1)インフレ目標でデフレ脱却はできない(2)デフレは中国やグローバル化が原因(3)デフレは人口減が原因(4)日銀は十分金融緩和している(5)金融緩和でインフレ目標2%達成はできない−などだ。
もう1つは、逆に「金融政策のマイナス効果が大きい」という類であり、(6)インフレ目標は悪魔的手法(7)金融緩和で金利が急上昇する(8)金融緩和で円の信認が失墜しキャピタルフライト(資本逃避)が起こる(9)アベノミクスで儲かるのは富裕層と資産家だけ(10)給料は上がらず格差が拡大する−といったものだ。
極めつけは、民主党が主張していた「金利を上げると景気がよくなる」だが、これはさすがに論外であった。
それぞれが真っ赤なウソである理由を以下に示そう。(1)については、アベノミクスが論より証拠(2)デフレは日本だけの現象なのでおかしい(3)安倍晋三首相がテレビで論破したように、世界中の国で人口減少している国は十数カ国もあるが、その中で日本だけがデフレ(4)日本のマネーの伸び率は世界でビリ(5)日銀新執行部は2年でやるとの決意で、ノーベル賞学者のクルーグマン教授も2年で達成可能と言っている。
(5)については、これから2年でウソであることがわかるが、これまでの日本の過去40年間のデータをみると、インフレ率は2年前のマネーストック(世の中に出回っている通貨の総量)の増加率でほとんど決まっている。アメリカでも2〜3年だ。いずれにしても2年後には事実が判明する。
さらに(6)は、インフレ目標が悪魔なら日本以外の先進国はみな悪魔(7)事実はそうなっていない(8)これも事実と逆(9)アベノミクスで世の中の雰囲気が一変した(10)コンビニの給料も上がり始めた。
(7)、(8)についても今後、事実がはっきりするだろう。これまでのデータでは、本格的な金利の上昇は景気回復後なので2〜3年先の話だ。その時には景気が回復しているので金利上昇は問題ない。キャピタルフライトも景気回復してから起こるはずはない。また、(9)、(10)は景気が回復していれば、社会全体の所得が上がるので問題にならない。
日本経済はもう成長しないと言っていた人が、アベノミクスで大慌てで、多くの評論家は転向しつつある。現実が既に変化していて、論より証拠になっているからだ。身の回りを見ても、株価の上昇以外にも、ボーナスが増えた、不動産の広告が増えた等、小さいが望ましい変化が起きているはずなので、探してみよう。日本経済にとっては小さな出来事でも朗報だ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)