米雇用統計:識者はこうみる
[ワシントン/ニューヨーク 3日 ロイター] 米労働省が3日発表した4月の雇用統計は、非農業部門雇用者の増加数が前月比16万5000人で、ロイターがまとめたエコノミスト予想の14万5000人を上回る伸びとなった。財政の引き締めが経済に大きな打撃となるとの懸念が和らいだ。
市場関係者のコメントは以下の通り。
●先行指標さえず、楽観できない
<RBCキャピタルマーケッツ(ニューヨーク)の首席米国エコノミスト、トム・ポーセリ氏>
見出し部分だけ見ると前向きな内容だが、全体を眺めれば、相当強弱が入り混じっている。たとえば、平均週間賃金は減少しており、全体の労働時間も短縮している。これらは先行指標と考えられているため、第4・四半期にどうなるかを考えると楽観できない。
●大きなサプライズ、QE縮小観測には力不足か
<CIBCワールド・マーケッツ・エコノミクス(トロント)のエコノミスト、アンドリュー・グランサム氏>
これまでオートマチック・データ・プロセッシング(ADP)全米雇用報告など一部さえない指標が続いていたが、今回の雇用統計で4月の非農業部門雇用者数が予想以上に増加しただけでなく、過去分も上方修正されたことは大きなサプライズとなった。
全体として、米経済は当初一部指標に見られたほど弱くなっていないと言えそうだが、今回の雇用統計だけでは、米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和(QE)の縮小を検討するといった話にはならないのではないか。
●大きな改善、FRBの政策方針に変わりなし
<アメリプライズ・フィナンシャル・サービセズ(ミシガン州)のシニアエコノミスト、ラッセル・プライス氏>
3月分が当初かなり悪いと見られていただけに、今回の内容はずっと良好で、大きな改善がうかがえる。3月分に関しては上方修正されたとはいえ、天候要因が影響したことが確認された。
さらに重要なのは、財政面で逆風が吹いているにもかかわらず雇用状況は持ちこたえている点で、これはファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の改善を示す明るい兆しと言えよう。
ただ、今回の統計を受け、これまで製造業や経済成長全般などで見受けられた一定の軟調さがまったく帳消しになるとは考えにくく、米連邦準備理事会(FRB)の政策方針に変わりはないと見られる。
●春の景気失速、想定ほど悪くない公算
<コモンウェルス・フォーリン・エクスチェンジの首席市場アナリスト、オメール・エシナー氏>
非農業部門雇用者数の伸びが予想を上回るなど良い内容だ。だがおそらく2・3月分の上方修正の方が重要だろう。
上方修正に加え、失業率の低下も踏まえると、春の景気失速は懸念されていたほど顕著ではない可能性がある。ドルには支援材料だ。
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