2010年01月25日

クリオネ騒動は北浜海岸から

今や流氷の海と言えば、クリオネというほどの有名人?ではなく有名生物となった。

学名ハダカカメガイはね巻き貝の一種で、貝殻を身につけていない裸の姿なのだ。左右に張り出した翼のように見える足で水を掻くから翼足類と言い、冷水性の動物プランクトンである。貝殻が退化して素っ裸という状態だから真っ赤な内臓が透けて見える。

「涼やかないのちと言えど流氷下クリオネの胸いってきの赤」という短歌を女性が詠んでいる。 クリオネという名は、ギリシャ神話「海の妖精」からきているが、かわいらしさで言えば、「流氷の天使」の方が愛称にふさわしい。

流氷の天使とは、オホーツク水族館(閉館)の本間保館長(故人)の命名だが、ある時ドキリとする話を聞いた。
「クリオネは妖精というより怪物ですよ。見ていると頭の部分が開いて、6本のかぎ型の触手がのびて、エビの幼生をつかまえて食べるんです」なるほど美しいものは恐ろしいものを隠している。

<クリオネ>

ところで、クリオネは10年少し前、突然のように登場した。ある年の2月中旬、北浜の主婦Hさんは日課の渚歩きをしていた。

岸近くに取り残された流氷が 浮いていて、水面に打ち寄せられたコンブが一本浮いている。夕食のおかずにしようと思いつき、コンブを引き寄せた。コンブの表面に小さな赤いものがついて いる。何だろうと持ち帰って隣家に見せていくと、駐在所のお巡りさんがお茶を飲んでいて、これは…ということで水族館に通報した。

水族館から職員が飛んで きて、クリオネを採取したことから騒動は始まった。深海にいると思われていたいクリオネが渚ででも採れるということで、市民のクリオネ採りが始まってブー ムとなったのである。

当時はインターネットの通信販売で、つがいが3,000円とか、1万円とかで販売されたという。美しいものには欲もからむのだろう。それにしてもクリオネ発見が、「夕食の糧」にという主婦感覚だったことが面白い。(き)

<クリオネすくいの市民>