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除熱機能を喪失、ギリギリの復旧作業 福島第2原発で何が起きたか(上)
編集委員 滝 順一

(4/4ページ)
2013/5/3 7:00
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 12日早朝には1、2、4号機で圧力抑制室の温度が100度を超えた。同室で水蒸気が水に変わって減圧するメカニズムは働かない。格納容器破壊の危機が迫ってくる。増田所長は「圧力抑制機能喪失」に該当すると判断し原災法15条の通報をせざるを得なかった。これを受け政府は午前7時45分に福島第2の周囲3キロ圏内からの住民にも避難を指示した。

■ベントまであと2時間、「紙一重だった」

 格納容器の破壊を避けるには内部の水蒸気を抜くベントしかない。増田所長はベントの準備を指示した。2、4号機は遠隔操作でベントラインを準備できたが、1号機はひとつの弁が開かなかったため、運転員が現場に行って電源をつなぎ替えて、いつでもベント可能な状態とした。

 「注水を継続していたので核燃料が壊れていない自信はあった」と増田所長は述懐する。すでに炉心が溶け放射性物質が核燃料から出ていた福島第1と違い、第2で仮にベントしても放射性物質が大量に出る可能性は低かっただろう。しかし、福島第1と並んで第2もベントしていたら、その知らせだけで周辺の混乱は倍加していたかもしれない。12日早朝は第1でもベントの実施に懸命だった。

 ベントのメドは格納容器がその最高使用設計圧力(約3気圧)に達した時点だ。三嶋部長らは冷却水の入れ方をドライウェルスプレー(格納容器上部からの散水)に変えてみるなど工夫して、少しでも圧力上昇を遅くしようと試みた。最初は核燃料の崩壊熱が大きい2号機の圧力上昇が速かったが、そのうち格納容器の容積が小さい1号機の上がり方が急になった。

 復旧班の作業によって、1号機で残留熱除去系(RHR)のB系による冷却が可能になったのは14日午前1時過ぎだ。あと2時間遅れていたら、ベントせざるを得なかった。「紙一重だった」と増田所長は言う。

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