ウクレレ漫談家の牧伸二(まき・しんじ、本名・大井守常〈おおい・もりつね〉)さん(78)が29日午前0時15分すぎ、東京都大田区田園調布本町の丸子橋から約15メートル下の多摩川に飛び込み、死亡した。目撃者の話から、警視庁は自殺の可能性が高いとみている。
田園調布署によると、通行人が、欄干をまたいで川に飛び込む牧さんを目撃し、近くの交番に知らせた。駆けつけた警察官が川に浮いている牧さんを岸に引き上げたが意識がなく、搬送された病院で死亡が確認された。
牧さんは丸子橋の近くに住んでいた。警視庁によると、所持品などから家族が牧さんと確認した。遺書は見つかっていないという。
牧さんは東京生まれ。1957年に漫談家の牧野周一に弟子入りし、師の勧めたウクレレ漫談で59年にデビューした。ハワイアン風の旋律に乗せて社会風刺ネタを歌い、「あーあんあやんなっちゃった、あーあんあ驚いた」で朗らかに締める「やんなっちゃった節」で一世を風靡(ふうび)。演芸番組や「大正テレビ寄席」の司会などで活躍した。
99年から東京演芸協会の会長を務めた。2002年に脳内出血で入院したがほどなく復帰し、舞台のほか、70歳で新曲CDを出すなど活動を続けていた。若い頃に辛抱した話もほのぼのと語り、プレスリーなど幅広い音楽を好んだ。
所属事務所によると、葬儀は家族で行う。
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■芸熱心さを尊敬
《漫談家・ケーシー高峰さんの話》 昔は1日に3回同じ舞台に立つこともざらだったが、お客を飽きさせないようネタを変えていた。最近の舞台でも必ず新しいことを取り入れていて、そんな芸熱心さを尊敬していました。扱うネタは庶民的。それが世間に広く受け入れられたのだと思う。周囲の信頼も厚かった。本当に残念です。
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朝日新聞社会部