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世界遺産前進も…富士山に異変 3合目付近の林道で大規模陥没

滝沢林道の富士山三合目付近では300メートルにわたり道路が陥没
滝沢林道の富士山三合目付近では300メートルにわたり道路が陥没
Photo By スポニチ

 世界文化遺産の登録勧告に沸く富士山周辺で、異変が起きている。富士五湖の一つ・河口湖(山梨県)では大減水で湖岸から浮島が陸続きになっているほか、3合目付近の林道では大規模な陥没が発生している。現場に向かい、実際にこの目で確かめてきた。

 湖岸から約150メートル先にある浮島まで、茶色い地面が伸びる…目の前に広がるのは、海が割れ、道が現れた米映画「十戒」(56年)のワンシーンを思わせる光景。河口湖には20年ほど前から観光や釣りに何度も訪れていたが、水の引き具合は想像以上だった。

 普段はボートでしか行けない、浮島に立つ史跡「六角堂」と陸続きになり、多くの観光客が列をなして向かう。一躍話題の“新スポット”に、甲府市の望月久志さん(50)も「昨秋から河口湖周辺には何度か来ていたけど、六角堂の存在に気がつかなかった。話題になっているので…」。静岡県から来たカップルも主目的は六角堂の撮影で、カメラ付き携帯電話で何度もシャッターを切っていた。

 サクサクという音をたてながら乾いた地面を踏みしめて進むと、所々に貝殻の破片や枯れた水草が見つかり、そこが湖底だったとうかがえる。国土交通省によると、2日午前9時現在の水位は、満水からマイナス3・18メートル。今年1月中旬にマイナス3メートル超となって以降、約3カ月半にわたり過去10年の同時期の平均水位(マイナス2メートル)を約1メートルも下回った状態が続いている。4月から5月は農業用に引水され最も減水する時季で、富士河口湖町役場でも「梅雨が来れば回復する」と楽観視。

 山梨県などは、昨夏からの少雨に加え、富士山の雪解け水も少ないのが原因と分析しているが、周辺4湖の水位に大きな変化はなく説明がつきにくい。ネット上では「噴火の前兆?」と話題になり、気象庁は観測データに異常がないことから「火山活動とは関係ない」との見方を示しているが、不安はつきない。

 一方、道路が陥没した滝沢林道に県の許可を得て入ってみた。くねくねと曲がる山道を車で入ること30分。3合目付近まで登ると舗装された林道が、ぱっくりと割れていた。路面は約300メートルにわたり凹凸で、何か強い力が加わったように感じられる。亀裂の中に入ってみると、深さは最大1メートル50ほどで目の高さに路面が来ていた。

 県治山林道課によると雪解け水がアスファルトの下にある土を徐々に浸食し、陥没が起こったとしており、約10本ある富士山周辺の林道で「ほかに変化はない」という。

 内閣府の防災担当者に今回の減水と陥没について尋ねたところ「富士山の火山活動とは全く関係ないとは言えません。前回の噴火は約300年前で、いつ起こってもおかしくない」としており、なんとも不気味だ。

 ≪保全対策強化へ≫富士山の世界文化遺産登録見通しに、観光庁や旅行業関係者が外国人旅行者増加に期待を強める一方、登山者の急増による自然破壊への懸念も。環境省はこれまで以上に保全対策に取り組む方針だ。富士山に登る人は7、8月の2カ月だけでも約30万人。地元のNPO法人「富士山クラブ」の青木直子事務局長は「ごみのポイ捨てなどが増える可能性がある」と話す。ごみ清掃やトイレ整備に取り組んできた同省の担当者は「まずは従来の対策を続けて、新たな問題が起きないようにしたい」としている。

[ 2013年5月3日 06:00 ]

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