ドル箱降圧剤の論文撤回「有名教授(京都府立医大)と製薬会社(ノバルティスファーマ)の闇」

2013年04月26日(金) フライデー

フライデー経済の死角

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「Sの肩書は『大阪市立大学』となっていました。Sは非常勤講師として年に数回教壇に立つ程度でしたが、隠れ蓑に使ったのでしょう。専門家が少ない業界とはいえ、製薬会社の社員が表立って統計解析に携わるのは問題がある。第三者による松原論文のカルテと生データの照合を進め、真相を究明する必要があります」(前出・桑島氏)

 ノ社はドル箱商品のPRに湯水のようにカネを投資した。医療専門誌にバルサルタンの薬効に関するPR記事を度々掲載し、高名な医師の座談会を行ってその効果を喧伝した。 

「物凄い販促でした。日本高血圧学会の理事長や、高血圧のガイドラインを作成する幹部が、松原論文を引き合いに出して褒めちぎるんです。登場した医師には、通常、数万円の謝礼が出て、記事が出る時には原稿料も支払われる。それを見た別の医師が、『こんなにいいものがあるのか』とバルサルタンを処方する。バブルですよ」(前出・医療誌記者) 

 松原氏は4月上旬にも、 '04年に行った心臓の再生医療の申請のために提出した論文の捏造が指摘され、窮地に立たされている。2月末に責任を取る形で大学を辞めているが、「最後まで泣いて抵抗した」と証言する大学関係者もいる。松原氏は本誌の取材に、「論文不正は絶対にないので辞職の必要はないと考えていました」「(S氏と)個人的な付き合いはまったくありません」と回答した。

 ノ社は「一般的に医師主導臨床研究は独立した研究であり、ノバルティスとして関与できる性質のものではない」「(S氏が松原氏と)面会した頻度、個人的な付き合いの有無については、承知しておりません」と回答した。

「実は慈恵医大も、 '07年に松原氏の結果と酷似した内容の、バルサルタンの論文を発表しているんです。この統計解析に携わったのも、S氏です。今後慈恵医大の論文にも不正が見つかれば、さらなる大スキャンダルに繋がる可能性もあります」(前出・桑島氏)

 莫大なカネを生んだブロックバスターが、医療界を揺るがす〝劇薬〟になりつつある。

「フライデー」2013年5月3日号より

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