「製薬会社がバックに付いた、ここまで大きな疑獄は記憶にありません。販売元の製薬会社『ノバルティス』は、本社のあるバーゼルから匿名チームを派遣していると聞きました。返り血を浴びるのを恐れてか、他社のMR(医薬情報担当者)もこの件について、口を噤んでいます」(医療誌メディカル担当記者)
医療界が激震している。震源地は京都府立医科大学だ。 '09 ~ '12 年にかけて松原弘明元教授(循環器内科)が発表した降圧剤『バルサルタン』に関する論文が昨年末から相次いで3本撤回され、製薬会社と研究者の「不適切な関係」に光が当てられようとしているのだ。製薬会社『ノバルティスファーマ』(東京・港区)が販売するバルサルタンは、血圧を上げる物質の働きを抑える効果があり、高血圧治療に用いられている薬である。
ことの発端は、医師たちの間で話題をさらった松原氏の大規模な研究だ。 '04 年から約5年間の期間をかけ、松原氏は高血圧患者にバルサルタンを投与する臨床試験を行った。被験者は3000人に上り、日本人に対して行われた初めての巨大臨床試験となった。そしてこの結果が '09 年に論文として発表されると、医学界に再び波紋が拡がった。
「欧州心臓病学会誌の電子版に、バルサルタンは『脳卒中や狭心症などのリスクも下げる効果』があると、降圧以外の薬効があったことを発表したのです。松原氏は立て続けに心臓肥大の症状や糖尿病患者にも同様の効果があると日本循環器学会誌に発表し、時の人になったのです」(循環器学会関係者)
血圧を下げるだけでなく、脳卒中や狭心症のリスクも下げる―薬は飛ぶように売れ、販売元の『ノバルティスファーマ』のNo.1ヒット商品になった。他社のMRが明かす。
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