京都府立医大:降圧剤の全論文を撤回…松原元教授チーム
毎日新聞 2013年04月20日 15時01分
降圧剤「バルサルタン」の臨床試験を巡る京都府立医大の論文撤回問題で、松原弘明元教授(56)=今年2月末に辞職=のチームが、2011〜12年に海外の心臓病専門誌2誌に発表した臨床試験の関連論文3本が、いずれも撤回されていたことが分かった。大学が取材に明らかにした。大学によると、元教授のチームがこの薬の効果に関して発表した論文は計6本あり、既に撤回が判明していた3本を含め、全てが撤回された。3000人の患者対象の大規模臨床試験の結果が、何ら論文として残らない異例の事態となった。
◇大規模臨床で異例
撤回が判明した3本は、米国とアイルランドの心臓病専門誌に発表されていた。冠動脈疾患や慢性腎臓病などのある高血圧患者に対するバルサルタンの効果を検証した内容。掲載誌は撤回の理由を明らかにしておらず、大学も「理由は把握していない」としている。
チームは08年、試験の実施要綱を論文にして英医学誌に発表。この論文には、薬の販売元の製薬会社「ノバルティスファーマ」の社員が、統計解析の責任者として名を連ねていた。だがノ社名の記載はなく、この社員の所属は兼任する「大阪市立大」となっていた。また、ノ社が08年以降、元教授の研究室に1億円余の奨学寄付金を提供していたことが毎日新聞の報道で表面化している。
元教授は、今年1月までの大学側の調査に「データ集計のミス」などと説明してきたが、単純ミスなら撤回せずに修正で対応するのが一般的とされる。
元教授を巡っては今月11日、大学の調査委員会が「元教授が関わった14論文に不正があった」と公表している。この14本はバルサルタンとは関係がない。【八田浩輔、河内敏康】