米連邦航空局の運行停止措置解除に続いて国土交通省も1日遅れの26日に追認することで、B787が再び日本と世界の空を飛ぶことになったが、『読売新聞』(4月26日付朝刊)が社説に「原因究明を進めていた米国家運輸安全委員会(NTSB)などの調査では、依然として技術的な問題は特定されていない」と書いているように、実はトラブルを引き起こした原因が未解明のままの運航再開なのだ。
同紙社説のタイトル「安全最優先で世界の空を飛べ」は、まさにその通りである。万が一、運航再開後にトラブルが再発したらメーカーのボーイング社だけでなく、同機を営業運航する各航空会社も致命的なダメージを被ることになる。
「万が一」のためのリスク・マネージメント
1月16日の運行停止措置によってJALは国際・国内線766便が欠航、ANAが国内線2662便、国際線939便の欠航を余儀なくされ、両社は経営面でも大きな打撃を受け、ボーイング社に損害賠償を求めることを決めている。
だが、肝心なのはお金のことではない。主要航空会社が機材調達の分散化を図ることで「万が一」のためのリスク・マネージメントを実施しているのに対し、我がJALとANAにはそれがないということである。
具体的に見てみよう。ボーイング社のお膝元のアメリカン航空はB787を42機発注しているが、未就航である。エアカナダ、エティハド航空、さらに24機発注の英国航空、22機発注のアエロフロート(ロシア)も未就航である。全世界に納入された50機のうち24機の日本が突出して運航を急いだことが見てとれる。それだけではない。
世界の主要航空会社は、米ボーイング社か、欧州のエアバス社が製造する航空機を使用している。使用機材比率についてのデータがある。ユナイテッド航空:B(ボーイング社)78%、A(エアバス社)22%。シンガポール航空:B57%、A43%。トルコ航空:B42%、A58%。カタール航空:B28%、A71%。中国東方航空:B18%、A80%。そしてANAがB88%、A12%であるのに対して、JALは何とB100%なのだ。
JALの保有する100機超の航空機すべてが米ボーイング社製であること自体が「異常」としか言いようがない。米国では「小」のUSエアウェイズが「大」のアメリカン航空を呑み込んだ合併劇が話題となったが、このUSエアウェイズはB18%、A76%である。
先に『日本経済新聞』(3月24日付朝刊)が、日本航空(JAL)がB787のライバル機であるエアバス社のA350導入を検討していると報じたが、調達先の分散化が遅すぎるぐらいだ。
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