アップル 17年ぶり社債発行へ5月2日 6時55分
アメリカのIT企業アップルは1日、大規模な株主への還元策を実施する資金を賄うため、17年ぶりに社債を発行して日本円で1兆6600億円を調達する計画を発表し、創業者のスティーブ・ジョブズ氏が確立した無借金経営を転換することになりました。
アップルは自社株買いや配当の増額を通じて、総額で1000億ドル(日本円にして9兆7500億円)に上る大規模な株主への還元策を実施する計画です。
この資金を賄うため170億ドル(1兆6600億円)を、償還期限が3年から30年までの社債を発行して調達すると、1日、発表しました。
アップルが、借金に当たる社債を発行するのは1996年以来、17年ぶりです。
また、1回の社債の発行額としては金融機関を除くと過去最大規模です。
アップルは、手元資金としておよそ1450億ドル(14兆1000億円)を保有していますが、このうち70%は海外にあり、アメリカに戻す際には海外より高い税率がかかるため、社債で調達する方法を選択したということです。
世界的な低金利で、社債の発行に有利な環境であることも、今回の選択の要因になったとみられます。
アップルは、多額の手元資金を抱え込むことに不満を持つ株主から、株主への対応が不十分だと指摘され、去年、創業者のスティーブ・ジョブズ氏がやめていた配当を再開しました。
その後、株価の低迷に直面するなかで、株主への一段の還元策を求められジョブズ氏が確立した無借金経営も転換することになりました。
社債発行の背景は
アップルが資金調達のため最後に社債を発行したのは1996年。
当時、会社は経営難で資金繰りに苦しんでいました。
この時、創業者のスティーブ・ジョブズ氏は、アップルを離れていましたが、翌年、暫定的なCEO=最高経営責任者となり、会社の再建に乗り出します。
2001年に投入した携帯音楽プレーヤーのiPodが大ヒットしたことで、業績は急速に改善し借金も返済。
2004年以降「無借金経営」が確立します。
アップルはその後もスマートフォンのiPhoneやタブレット端末のiPadなど、革新的な商品を次々に生み出し、売り上げ、利益とも急拡大します。
これに伴って、アップルが抱える現金などの手元資金は急速に積み上がっていきます。
手元資金は、この3年間だけで2.5倍に増え、ことし3月末の時点で1450億ドル(日本円で14兆1000億円)にまで拡大しています。
増え続ける手元資金に対し、投資家からは配当などを通じて株主に利益を還元すべきだという声も上がりましたが、スティーブ・ジョブズ氏は2010年の株主総会で、「現金などの手元資金は会社の経営に安全性と柔軟性をもたらすものであり、将来、リスクを取る時に備えておくべきだ」と述べるなど、手元資金を配当などに充てることを一貫して拒否してきました。
ジョブズ氏は、手元資金を開発費に使い革新的なヒット商品を生み出して株価を高めたほうが株主の利益になるという信念を持っていたと言われています。
しかし、おととしジョブズ氏が亡くなって以降、株主から巨額の手元資金を還元すべきだという声が改めて高まり、アップルは、去年、株主の要望に応えて17年ぶりに配当を再開しました。
さらに、去年秋以降はアップルの株価の値下がり傾向も続いたことから、アップルは先週、一段の株主還元策を決めました。
潤沢な手元資金があるにもかかわらず今回、あえて借金に当たる社債を発行するという手段を選んだ理由について、アップルの幹部は、手元資金の70%が海外にあり、アメリカに戻す際には海外より高い税率がかかるため、コストを抑えるための方法を選択したと説明しています。
世界的な低金利で、アップルにとって社債発行に有利な環境であることも、今回の選択の要因になったとみられます。
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