ゲーム・マスターのためのプレイ時間管理講座


■1■ プレイ時間管理の目的

 コンベンションやサークルの例会などで良く見かける失敗の一つに──
「プレイ時間が足りなくて尻切れ蜻蛉に終わる」
──というものがあります。

 プレイ場所を借りて遊んでいる以上、何らかの時間制限はかならず発生します。
 ゲーム・マスター(以下GM)は、その時間制限の範囲内で一つのセッションを終わ
らせる義務を負っています。そして、そのための権限や情報も持っています。
 本講座では、プレイ時間を管理して、ゲームを時間内に終わらせるGMのテクニック
について考察していきます。


■2■ プレイ時間を計算する

 コンベンションやサークルの例会の多くは、公共の施設を利用しています。
 そのため、あらかじめプレイ開始時間とプレイ終了時間が決まっています。まずは、
その時間を確認するところから始めましょう。

 具体的な例で説明しますと、筆者が参加している「テーブルトークの会」では、次の
タイムスケジュールで進行しています。

 ●11時 開会
 ●11時〜11時30分 GMによるテーブル紹介と、プレイヤーのテーブル分け
 ●11時30分〜16時45分 ★★ プレイ時間 ★★
 ●16時45分〜17時 後片付け

 この場合、プレイ時間は最大で5時間15分です。
 しかし、このプレイ時間は間にお昼をはさんでいます。昼休みに45分かかるとする
と、残りは4時間30分。
 さらに、1時間ごとに約10分ずつ休憩をいれるとすると残りは3時間50分です。

 このように、まずは休憩を考えに入れたトータルのプレイ時間を把握しておき
ます。


■3■ 時間配分を決める

 合計時間が決まったら、次に時間配分を決めます。
 時間を配分するべき項目は、以下の通り。

 1)GMとプレイヤーの自己紹介・挨拶
 2)キャラクター作成
 3)ルール・世界観・簡単な遊び方解説
 4)プレイ:導入部分
 5)プレイ:展開部分
 6)プレイ:山場部分
 7)プレイ後の処理
 8)プレイ感想を互いにおしゃべり

 1)と8)は必須です。特にプレイ前の意識のすり合わせなどに最初の挨拶や会話は
欠かせません。最低でも10分ずつとっておきます。
 そして、残り時間でプレイするわけですが……ここからが大事です。

 具体的に、先ほど紹介した私の参加しているサークルの例で話をしてみましょう。

 1)GMとプレイヤーの自己紹介・挨拶 10分
 8)プレイ感想を互いにおしゃべり	10分
 残り時間:3時間30分

 シナリオにもよりますが、これはかなりきついスケジュールです。少なくとも、漫然
とプレイをしていたのではあっという間に時間切れになってしまいます。
 そこで、重点をどこに置くかで配分を切り分けます。

▼プレイヤーが始めて遊ぶ新作RPGシステムの場合
 2)キャラクター作成			10分(GMが事前に用意)
 3)ルール・世界観・簡単な遊び方解説 40分
 4)プレイ:導入部分			30分
 5)プレイ:展開部分			60分
 6)プレイ:山場部分			60分
 7)プレイ後の処理			10分

▼キャンペーンで遊んでいるRPGシステムの場合
 2)キャラクター作成			10分(前回のレベルアップなど)
 3)ルール・世界観・簡単な遊び方解説 10分(前回の説明など)
 4)プレイ:導入部分			30分
 5)プレイ:展開部分			90分
 6)プレイ:山場部分			60分
 7)プレイ後の処理			30分(死/退場したキャラへの対応など)

 しかしながら、セッション前の時間配分など、しょせんは目安に過ぎません。
 これを実際に守らせるにはどうすればいいのでしょうか。


■4■ 事前作業

 時間配分を守らせるためには、GMの事前作業が大事です。
 時間配分の一つのポイントは、プレイヤーがルールを知っているか/キャラクターを
自分で作れるか、というところにあります。
 いざという時のため、GM側があらかじめ、シナリオに対応したキャラクターを作成
しておき、それをプレイヤーに選ばせるのも時間を短縮させる有効な手法です。

 また、シナリオをきちんと読んで確認しておき、省略できる部分・絶対必要な部分に
分けて、省略できる部分にチェックを入れておきます。できればチェックリストを作っ
ておきましょう。
◆チェックリストの例
シナリオの項目必要性所要時間推定
男爵からの依頼10〜20分?
酒場での乱闘×0分
街道での襲撃情報だけ(10分)
少女との遭遇10分
 実際のプレイにおいては、色々なアクシデントのせいで展開が遅くなることはあって
も、早くなることはまずありません。シナリオのチェックは厳しく行い、最低でも30
分ほどの時間的な余裕ができるようにしましょう。


■5■ プレイ開始前

 最初にまずプレイヤーを募集します。この時のプレイヤー条件に「ルールを知ってい
る/キャラクターを自作できる」というのを設けるのも時間を短縮する一つの手法です。

 逆にその条件を一人でも満たしていない場合は、30分以上、場合によっては1時間
以上、プレイ開始前にかかると見て間違いありません。

 新作RPGの場合では、GMもプレイヤーも不慣れな事が多いでしょうから、さらに
時間がかかるものと考えます。

 よって、GMは事前準備の項目にも記述したように──
「シナリオに応じてキャラクターを作成しておく」
──ことを強くお勧めします。

 しかし、いくらプレイに時間をかけたいからといって、プレイ開始前の時間をほとん
どもたないのは、良くありません。(気心の知れたサークル内の仲間の場合を除く)
 RPGは遊ぶ人の感性に訴えるところの大きなゲームです。その人(GMも含めて)
がそのゲームに何を求めて参加しているのか、互いに腹蔵なく話しあう時間が必要です。
 ここで互いの意識統一を図っておかないと、残りの時間に不愉快な思いをする危険性
はかなり高いものと思われます。また、どうしても他の人と感性が合わないプレイヤー
に対しては、GMは断固として参加を拒否してください。
 それが、GMの責任というものです。


■6■ プレイ開始後

 GMは、10分おきぐらいに時計を見るぐらいのつもりで、常に時間の経過を意識し
ておきます。
 人間の集中力というものは、それほど持続しません。1時間に1回ぐらいの割合で、
必ず休憩を10分は取るようにしましょう。

 そして、最大のポイントである「時間内にセッションを終わらせる」目標ですが、こ
こまでの■2■〜■5■までの準備をしておいても、どうにも時間が足りそうにない、
という場合も考えられます。

 そういう場合には、どうするか。
 筆者なら、次の手法を取ります。

▼終了1時間前になったら、強制的にクライマックス(山場)へ
 まったくもって乱暴きわまりない方法ですが、クライマックスの場面が途中で終わる
事と比べたら、導入の場面が途中で終わる方がマシというものです。
 すべての謎は明かされ、すべての敵と味方がそろい、そしてクライマックスの大乱闘
(通常のRPGはおおむねそうなります)へとなだれこむのです。
 この切り札を有効に使うには「1時間前」という、時間に思い切り良く決断する必要
があります。これが「もうちょっと何とかしてみよう」などと考えていると、時間がズ
ルズル経過して、この切り札ですらどうしようもなくなってしまいます。

 とはいえ、この切り札以外にも、プレイ中に時間を短縮するテクニックは幾つかあり
ます。

▼まず判定を行い、しかる後に役割演技を決める
 ロールプレイ(役割演技)を熱心に行うのは、RPGというゲームのねらいからいっ
ても、正しい行為です。しかしながら、導入〜展開部分でこれを延々とやられては、G
Mの時間管理がピンチです。まず行動宣言と行為判定を行い、しかる後にその結果に合
わせたロールプレイをしてもらいましょう。

▼地図を用意し、行動範囲と可能行動に制限を設ける
 セッションの展開部分で情報収集などを行っている場合、プレイヤーがPCをどこに
行かせて何をさせるかで、延々と悩む事があります。
 はっきりいって、この時間はムダです。その挙句、GMが情報もNPCも用意してい
ない場所にいきなりPCが押しかけてきたりします。GMは慌ててアドリブで対応しな
くてはいけません。これまた労力のムダです。
 これを防ぐために、GMは積極的に地図を用意しましょう。地図といっても、シナリ
オに無関係な場所は地図の上には不要です。シナリオで用意されている場所だけを抜き
だし、位置関係を示すラフなスケッチを作るだけで十分です。

 例として、筆者がプレイしたシナリオ「髑髏仮面」の地図をリンクさせておきます。
  ・シナリオ「髑髏仮面(シナリオ作成講座内に記載)」
  ・地図「王国自由都市ケルバー(髑髏仮面用地図)」

▼シナリオに時間制限を設け、それを実時間のプレイにリンクさせる
 シナリオに時間制限を設け、PCの緊張感を高める。これは良いマスタリング手法で
す。せっかくですから、この時間制限に、実時間をリンクさせましょう。当たり前の話
ですが、シナリオの時間制限が成功しても、実時間の時間制限をオーバーしては何の意
味ももちません。

 上述の例としてあげたシナリオ「髑髏仮面」では、シーン単位での時間制限を設けま
した。これはシナリオの時間制限でありますが、同時に1シーンあたり10分という、
実時間の時間制限を組み合わせることでシナリオ展開時間が一定時間より長くならない
よう(最大で9シーン=90分)心がけています。


■7■プレイヤーの協力

 ここまでは、GMを対象とした時間管理の講座でしたが、時間管理の負担をGMだけ
に押し付けるのもあまり好ましくはありません。
 プレイヤーにも、相応の配慮を望みたいところです。

 具体的には、以下のような項目になります。
	◆プレイ時間をいたずらに長くするようなロールプレイはやめる
	◆時間配分を考え、プレイ終了1時間前にはクライマックスに入る準備をする
	◆行動宣言は明確に行い「なら〜」「ついでに〜」とかダラダラと続けない


■8■さいごに

 RPGは、壮大なストーリーを作るのには向いていません。少なくともプレイ時間4
時間程度の、1回のセッションでは困難です。
 時間管理に失敗して、タイムオーバーになるGMの多くは、最初のシナリオ作成の段
階で、複雑/緻密/壮大なストーリー展開を作りだそうとしてしまっているようです。
 つまり、本講座で言うなら■4■の『事前作業』の段階で、既に時間管理に失敗して
いるのです。これでは、いくらその後のところでカバーしようとしても無理というもの
です。
 RPGのシナリオは1つのアイディアで作る、短編小説のような物。映像で言うと、
2時間映画ではなく、50分物のTVドラマのようなものです。
 そのあたりに留意してシナリオの準備をすると、シナリオも簡単に作れ、かつ、プレ
イもスムーズに進むのではないかと思います。

				★ おしまい ★

 作成者:銅 大(アカガネ ダイ)
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