―著書「ネットと愛国」でネット右翼、市民右翼などと呼ばれる「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の実態を描いた。排外主義的な言動を繰り返す彼ら、彼女らはどんな人たちか。
「あなたたちの『敵』とは誰ですかと聞くと中国、韓国、北朝鮮、在日コリアンなどを彼らはまず挙げるが、それ以外ではマスコミ、公務員、教師などの答えが続くんです。何となく既得権益に
恵まれていて、発言する回路を持っている人たち。彼らはそう考えて敵とみなす。若者が中心だが、リーダー格は40代。若者だけの運動でもない。政治闘争の装いはしているが、自分を見つめて
ほしいという欲求、いら立ちのようなものも内実に感じます」
「日本の経済力が地盤沈下し、未来を想定できない抑圧された気分の中で『在日(コリアン)は特権を持っている』『日本経済を牛耳っている』といった妄想を吹き込まれている。実際は在日
特権などなく、歴史的に獲得してきた日本人と同等の権利があるだけなんですが、彼らはなぜか、自分たちには十分な権利がないように考え、生活保護の問題などでも他者を自分たちと同じ地平
まで『引きずり下ろす』ことに血道を上げる」
―現実的なビジョンを持っているのか。
「中国や韓国に対して『戦争をしろ』『国交を断絶せよ』と主張するだけで、現実的な外交政策など全く考えていません。既存の秩序を破壊しようとしているだけ。それも借り物の言葉しか
持っていないから、彼らと酒を飲んで話しても、具体的な日本の未来像や社会政策は浮かんでこない」
―特権を持つとすれば地位協定に守られた在日米軍の存在があるが、それは問題にしない。
「基地問題で抗議するのは左翼で、自分たちの敵という単純な思考からです。原発推進を主張するネット右翼が多いのも同じ理由。エネルギー政策を考えた結果じゃない。彼らにとっては記号
としての『右か左か』が重要で『左はむかつく』から逆のことを言えばいいと思っている」
―安倍晋三首相をネット右翼は強く支持しているとされる。
「昨年末の総選挙戦最終日に東京・秋葉原で安倍氏らの演説を聞いたが、多くの人が日の丸の旗を振って声援を送っていた。同時に報道陣には『帰れ』とのシュプレヒコールも起きた。彼らは
自分たちの敵であるマスコミが過去に安倍氏を退陣に追い込んだと思っているんです。安倍氏もそれに呼応してマスコミとの戦いを訴え、マスコミに黙殺されてきたとの思いがあるネット右翼を
うまく取り込んだ」
―これまでのところ首相は現実路線を外交では採用しているように見える。
「戦争しろ、核武装しろ、在日をたたき出せとネット右翼は訴えているわけで、それに従わないのは政治のリアリズムとしては当然ですが、首相が中国との『戦略的互恵関係』に言及した後、
ネット右翼からは『はあ?』という反応が出た。まだ、反安倍には至っていないけれど『裏切るなよ』と警戒する声はある。彼らは現実的なビジョンを持っていないとはいえ、既成の保守政党が
戦略的にすり寄る動きは今後、強まると思う」
http://www.47news.jp/47topics/e/240949.php